第三百六十二話:街へと行こう
カ〇ーラⅡには乗りません。
街の門が見えるくらいで馬車をおりる。ゴーレムに引かせているのを見られたらかなり問題になると思うんだよなあ。余ったゴーレムたちは畑仕事に戻したよ。今度はこういう時のためにゴーレム馬車とか作っておくべき?
という訳で徒歩で街に入る。徒歩なので貴族門とかは使えないらしい。歩いて街に入る貴族が居ないのだ。そりゃあそうか。大体、貴族の判別って馬車につけてる紋章でするっていうもんな。
「なんなんだ、貴様は。怪しいヤツめ」
門番に呼び止められた。こっちのメンバーはぼく、アリス、アイン、アンヌ、そしてアヤさん。ぼく以外は全員女性っていうハーレムパーティだ。
「いえ、決して怪しいものでは」
「そう言って怪しくなかったやつの方が少ない わ」
「ですよねー」
このままだと身体検査をされてしまう。そんな時にアヤさんがずずい、と前に出た。
「あー、申し訳ないけど、こっちをみてもらえます?」
見せたのは何かの文書の様だ。半笑いになりながら見ていた門番のリーダーが青くなっていく。と思ったら赤くなって、部下たちに怒鳴って整列させていた。
「大変申し訳ありませんでした! ごゆっくりおくつろぎください!」
何を見せたんだか。アヤさんが悠々と歩き始める。ぼくらもそれに続く。止められる事は無さそうだな。
「ええと、とりあえず宿屋に行きましょ。ほら、あの辺の宿が高級宿ですよ」
アヤさんが指さした先には高級そうな作りの宿屋があった。いや、もうホテルだよ、これは。
「すいません、泊まれますか?」
「お客様、うちは連れ込み宿ではない、由緒正しい富裕層のための宿なんですよ。馬車も乗れない貧乏人が来るような場所じゃあないんだよ。どうせ金も払えねえんだろ?」
バカにした様にホテルのスタッフが見下してくる。格好的にはぼくはちゃんとした服を着ていたんだけど、それも襲われた時のドタバタで乱れている。アリスは動きやすい格好だし、アインはメイド服、アンヌは白衣だ。一応アヤさんは軍服なんだけどなあ。
「アヤさん、ここの宿はダメだ。もっと安宿でいいよ。無理に金を使わなくていい」
「でも…」
「というか払うのぼくだよね?」
「その通りでございます」
どうやらアヤさんはお金の入った袋を落としたらしい。まああまり持ち歩かない習慣だったみたいで被害額は少ないんだけども。
次に来たのは高位冒険者の御用達の宿。そこそこの商人なども泊まるらしい。店内に入ると受付のカウンターに老爺が座っていた。そこから上に行く階段と奥にある食堂にそのまま続いているところがあり、受付を通らなくても食堂には行ける。
「いらっしゃい」
なんかぷるぷるしながら言葉を紡いだ老爺、出てきたのはあまりにも在り来りな言葉だった。というか死なないよね?
「食事かの? 泊まりかの?」
「あ、えーと、泊まりで」
「そうかそうか。で、部屋割りはどうするね?」
「あ、私一人であと全員まとめてで!」
「私と主様、残り全員の二部屋で!」
「ご主人様、私をお求めですか? いけません、姉様というものがありながら!」
「チーフの容態がわかるように私は隣室で待機させてもらいたい」
みんなが口々に好き勝手言ってる。収拾つかないな。
「で、どうするね?」
「ぼくが一人部屋、あと四人で二部屋でお願いします」
「えー!?」
批難されても変えません。というか身体が休まらんし、部屋入ったら動作停止するだけやぞ?
鍵を貰って部屋に荷物を置き、全員でぼくの部屋に集まる。ベッドが一つない分、ぼくの部屋の方が広いのだ。
「無事宿に着けましたね」
「で、アヤさん、帝国の代わりの使者ってのはいつ頃来るんですか?」
「そうですね、ここですと急いで明後日の夜には」
となると明後日の夜まではこの街で自由時間という訳だ。ならば明日はどこかに出掛けてみてもいいかもしれない。いや、本体のぼくからしたらのんびり昼寝していたいよ?
「ともかく腹ごしらえしてからにしましょう。私、もうお腹ぺこぺこで」
「ここは朝御飯と晩御飯付きでしたね」
「エールはついてないんで、飲みたかったら下で頼んでください」
それから夕食まで一眠り。というかぼくがもたないからね。目を閉じてコントロールを手放せば、ぼくの意識は自室の中だけである。ぼくは軽くため息を吐くと、ベッドに行き、本体で睡眠を摂ることにした。いや、だってもう眠くて眠くて。
しばらくの午睡から覚めると、眠い目をこすりながら分身体を起動する。そんなに知らない天井だ。い、宿屋の一室だったなと再認識する。
隣室をノックするとアンヌが出て来た。同室はアインである。ぼくに何かあった時のサポート要員だから隣なんだと。ということは残った部屋に居るのはアヤさんとアリスかあ。部屋壊れないよね?




