第三百六十一話:皇位継承問題
リオンの出番短かったなあ。いやまあ、これで終わりと思うなよ!(笑)
「おっ、お前! オレは帝国の皇子だぞ? 皇位継承者だぞ? そのオレに逆らうのかよ、お前、それでも帝国軍人か?!」
「ええ、帝国軍人ですよ。だからこそ、皇帝陛下の意を無視して好き勝手やるバカには付き合わないんですよ」
「このっ!? オレの事をバカだと言ったか?」
「ええ、言いましたとも。彼我の戦力差も知らないのに仕掛けるのはバカのやることです」
「戦力差だと? ならば圧倒的にこっちが上ではないか! こちらは騎士団を連れているのだぞ? そしてラージャとアヤ、お前が居る。どう考えてもそこの女三人より上だろうがよ!」
リオンは堪らず叫んだ。確かに騎士団とかいたらそうなるのも分からないでもない。
「はあ、ガチで分かってませんね。あの程度の騎士団だったら私が一人でも十分制圧出来ますよ。ラージャ一人の方が厄介です」
アヤさんが溜息を吐きながら答える。どうやらラージャはかなりな手練らしい。後でアヤさんに聞いたところによると、皇城の戦闘メイド部隊の一人なんだとか。メイドって強いものなの? アインも強くする?
「ご主人様、私に強さは不要でございます。それよりも家事をさせてくださいませ」
優雅にカーテシーをする。いや、メイド服のスカートを摘んで頭まで下げてるんだからカーテシーじゃないか。丁寧なカーテシー? いやどうでもいいか。
「ならお前が一人で片付ければいいではないか!」
「何言ってるんですか。私、自殺志願者じゃないんですから」
「は?」
帝国で「鬼哭」と呼ばれた伝説の軍人が明らかにおかしな事を言う、それがリオンが感じた気持ちだったのだろう。ぼくとしても鬼哭の名前はこの間聞いた。
「戦力差分かってないみたいなんで言いますけど、私が百人いてもアリスさんには敵わないですよ」
「本気のアヤなら百人は危ないけどね」
「うわっ、マジですか? 実はちょっと謙遜したんですよ」
アリスが戦力を訂正する。別にス〇ウターとかは着けてないんだけど何となくで戦闘力が分かるらしい。ぼく? 戦闘力たったの五か、ゴミめってなるかと思ったんだけど、五もなかったようなのでスルーしてくれた。
「てなワケなんで。申し訳ないですけど、リオン皇子は更迭決定、皇位継承権も剥奪ですね」
「バカな! そんな事が許されるはずが」
「その為の権限を皇帝陛下から与えられてますから」
ばばん、とアヤさんが取り出したのは印籠……ではなく、勅許状。アヤさんの皇位継承監督権を認めるとの内容だ。多分破いても皇帝陛下の名前で就任してるので無駄だろう。
「多分こうなると思いましたので、代わりの人間を手配しています。皇子は帝国にお戻りください」
「……」
リオンは項垂れたままだった。帰りの護衛はラージャに任せるとの事だった。帰るまではちゃんと守ってくれるだろう。他の騎士たちはどうか分からないが。
「いやあ、帝国の問題に関わらせちゃって申し訳ないです!」
アヤさんが頭を下げた。そんな事してもらう必要無いのに。そう、してもらう必要なんか無いのだ。
「それで許されるとでも? 主様は生命が危なかったんですけど?」
アリスがニコニコしながらアヤさんに詰め寄る。まあそうだよなあ。事前に聞かされてたならともかく、いきなりだったもんな。
「文句ならヒルダ先輩に言ってくださいよー、私悪くない、私コマだもん!」
まあヒルダさんならやってもおかしくないけど。つーか、政変で貴族処分したら、今度は皇族に処分対象が出てくるとかモグラ叩きの様相になってきたなあ。
「こ、交代要員は下山した街に呼んでますから、そこで待ちましょう」
「いつ呼んだの?」
「昨日山岳国に着いてからですね。帝国と同じ処遇をっていっておいたのに、外に出すんですから。直ぐに鳥を飛ばしましたよ」
まあぼくとしてもこの後もあのリオンとかいうバカと一緒に行きたくなかったから別の人が出て来てくれるならそれに越したことはないよね。
「そういやさっきの狼たちは?」
「恐らく山岳国の狼兵ですね。狼使いが居るので」
どうやら操られた狼らしい。まああの程度ならいくら来ても大丈夫だろう。まあロボーたちより怖くなかったけどね。
そのまま下山すると、森を抜けたところに街が見えた。街道の途中に現れた街は、長い街道の休憩点として重宝されているのだろう。
「ここがアイゼンガルド古王国の宿場町、オルサンクです」
眼下に広がる街は円形の壁に囲まれて、区間が整理されている感じだった。街の中心を縦断する様に川が流れていて、その川は山から麓の森にまで繋がっていた。
その川を挟んで東と西なのか北と南なのかは分からないけど、右と左にで区画分けが異なっていた。右の方は整然とした碁盤の目の様な区画で、左の方は円形の纏まりが幾つか点在している様だった。
「東と西で支配体制が違うんですよ。まあおいおい説明します」
アヤさんの先導で街までおりていく。えっ、馬車? 馬車自体は無事だったんで、ゴーレム呼んで牽いてもらってる。




