第三百二十九話:悪魔は人懐っこい笑みを浮かべて近付いてくる
ルナちゃんそろそろ出したい。
真面目にアカネにも妹必要なのかなと思う次第。でも役目がなあ。隠密二号なんかいいかなと思うんだけど、ダメだってアカネ本人が言うしなあ。となると物理アタッカーのアリス、身の回りのハウスメイドのアイン、魔法運用のアスカ、ものづくりのアミタ、医療全般のアンヌ、偵察、情報収集のアカネの今いる六体とは別のを考えなくちゃな。
普通に考えたら運転……いや、この世界だと馬車しかないよ。それともアミタに巨大ロボとか車とか作ってもらう? いや、車なら買ってもいいんだけど、ガソリンも調達しないといけないのがなあ。
となるとやはり戦闘系か? 役割分担でいくとどこになるかなあ? ウィザー〇リィで考えてみよう。戦士、盗賊、僧侶、魔法使いだ。戦士はアリス、盗賊はアカネ、僧侶はまあアンヌか。魔法使いはアスカだな。ん? もしかして戦闘職も間に合ってる?
という事は愛玩用か? おい、なんでフォルテがわたしわたしみたいに主張してんだ? わたしわたし詐欺ですか? 安心しろ、お前に愛玩用の愛らしさなんぞ求めてないから。さて、愛玩用だと人間女性サイズに作らなくてもいいんだよな。むしろそれは愛玩用にしたくない。愛玩用なら猫かな。犬もいいね。世話は面倒だけど、パペットなら大丈夫か。
「チーフ、終わりました」
色々考えてたらアンヌが処置を終えてくれた。詐欺師君はどうなつたんだろう。とりあえず森のハウスを出した場所まで行ってみる。今回はアカネの転移で移動だ。
扉の前でアンヌが出迎えてくれた。
「容態は?」
「私が処理したので大丈夫にきまってるじゃないですか」
ベッドに横になってる詐欺師を見ると、そこには確かに詐欺師は居た。両足は切断されたまま。アンヌ曰く、命に別状はないし、治して逃げられるのも手間だから、だそうな。
「俺は一体……こ、ここは?」
「ここは王都の近くにある森の近くですよ」
「なっ、死の森の?」
「まあ死の森かとうかはともかくとして倒れていたんで助けたんですよ。なにがあったんですか?」
そうして上手く聞き出した内容は次の通り。商売をしていたものの、ギャンブルて首が回らなくなった男。最初は店を担保に金を借りていたそうな。そのうち、担保にするものもなくなり、万事休すというところでアッコギに話をもちかけられたらしい。
ギャンブルで身を持ち崩すなんて信じられない話もあったものだ。ぼくなんかはギャンブルやらない健全な生活してましたからね。
嘘です、すいません。ギャンブルしなかったんじゃなくて出来なかったんです。稼いでいた頃はギャンブルやってみようかと思った事はあるけど、直ぐに結果出ないから宝くじとか競馬系はダメ。カジノは近くになかったし、後はパチンコだけど、店に入った途端にタバコの煙と騒音にやられて二度とゴメンってなった。
稼ぎがなくなってからは引きこもってたから外に出るのも嫌になるし、結局人と話さなくちゃいけなくなるのでダメだった。ま、まあ、ギャンブルなんてやらないに越したことはないなよね。
「で、いざやってみて、次の街でこれを元手にまた商売を、なんて思ってたんだが、あの執事によくわからん方法で足を切断されてな、トドメをさしたかったらしいけど、万一証拠が残っては、と思ってかわからんが、森の魔獣に食われるがいいなんて言われて残されたよ。だが、魔獣よりも先に助けが来るなんて俺の運もまだ尽きちゃいないなあ」
どうやらルドルマンさんを詐欺に合わせた事については反省というかそういうのは全くないみたい。
「で、あんたらは? 命の恩人なんだ。あの街は詳しいから案内するぜ? こう見えても顔が利くんだよ、あの街じゃあな」
「先程の話だとその執事さんに出会ったら一溜りも無いのでは?」
「こんなに人がいるんだから大丈夫に決まってんだろ?」
いい笑顔で親指を立てる詐欺師。さて、ここで特別ゲストを紹介しましょう。というかアスカと一緒にワープアウトしてきたんだけど。ユーリの能力は心象風景。他人の考えてる事なんかお見通しだ。
「この人、もし執事が襲って来ても護を囮に使えば逃げられるって考えてるよ」
「なっ、そ、そんな訳ないだろう? 俺が恩人を売るような下衆に見えるかい?」
「うるせえガキだな。黙ってろ、なんならこいつから先に囮に使ってやろうか!、だってさ」
どうやら恩知らずな外道なのは間違いないらしい。うん、アンヌ、こいつの足を治さなくて正解だったな。ちなみにユーリは撫でて欲しそうにこっちを見てたから撫でてやった。
「チーフ、証言取れたらもう用済みですよね? ほら、私のモルモットにしてもいいですか?」
「良いわけあるか。こいつはちゃんとルドルマンさんに会わせて謝罪させる。まあ謝罪しなかったらその時は実験動物ていいぞ」
という訳でルドルマンさんを召喚……したらこのカプセルの家に驚かれるだろうなあ。




