第三百二十四話:チンピラがあらわれた! どうする?
なお、御茶の子さいさいの「さいさい」というのは長崎ののんのこさいさい節から来たらしいです。
「強いたァ思ってたがあれほどとはなあ」
「えへへー」
「オーバーキルだった気もするが、やらしい顔が気に入らなかったからいいんじゃね?」
「だよね! なんかヴィオレッタの方ばかり見てた気もするけど」
「そりゃあおめぇ……いや、やめとくか」
「え? なになに?」
下手に挑発してからかおうと思ってたのかもしれないが、すんでのところで先程の惨状を思い出したんだろう。いや、多分バストサイズの事を揶揄してもアリスは大丈夫だと思うよ。
それよりはむしろ太ももだよ。アリスのスラリとした足のラインに綺麗に繋がる太ももも良いけど、ヴィオレッタさんの鍛えられてる高密度のダイヤのような太もももいい。いや、膝枕されたらどっちも痛そうではあるけど。
「おいおい、ここから先はオレたちグルービーのシマだぜ?」
チンピラが通せんぼしてくる。ぼくよりも体格がいい。た、体重なら負けてないんだけど、多分。でも、最近はアインの料理のせいか、そこまで太ってないんだよね。なんなら分身体との差も小さいんだよ。まあこれは急な事で入れ替わった時に困るからってのもあるけど。
ん? 待てよ? もしかして太ったら「入れ替われない」って事で外に出なくて済む? いや、ぼくがどんだけ太っていようと出なきゃいけない時は出るしかない。つまり、出れないというのは選択肢を狭めるのだ。
しかし、外に出てないのにあまり贅肉ついてないよね。これはアミタに貰ったダイエットサプリが効いてるのかな? ……寝てる間にアンヌが脂肪除去手術やってるとかないよね? 脂肪吸引だとエコノミー症候群の恐れもあるって聞いたぞ? でもアンヌに聞いたら「そんな下手な事はしませんし、有り得ません」って言ってた。いや、よく考えたら「やってない」って言ってないな!?
「聞いてんのかよ。通行料払えよ、通行料!」
「い、いくらだね?」
ルドルマンさんがおずおずと聞く。そんなの答えは決まってるだろうに。
「有り金全部だよ。それから足りねえだろうからそこの女どもをオマケにつけてくれりゃいい。なぁに、おっさんどもよりは満足させてやれると思うぜ?」
これはルドルマンさんが借金返しに来ることを知ってて妨害してんだろうね。回り道して行く訳にもいかない。道はここしかないからね。いや、代理でもいいならアカネに金持たせて置いてこさせるんだけど。
「さて、まずはそこのお姉ちゃんだな。胸はねえが顔は整ってるからなあ。楽しめそうだぜ」
「そう? 私は楽しくなさそうなんだけど」
「最初はそうかもだけど、直に楽しくなるさ。なんなら楽しくなれるようなお薬を使ってやってもいいぜ?」
どうやらドラッグもやってるらしい。というかアッコギがドラッグでこいつらを手懐けてるのかもしれない。
「アニキ、オレに、オレにやらせてくれよ!」
ナイフを舐めながら男が出てくる。トカゲみたいな顔してるんだけど、ナイフの舐めすぎだろうか? 他人の血が着いたナイフを舐めると感染症になりやすいって言うし、脳みそまで達してるのかもね。
「お前か。良いだろう。だが、金貰うまで殺すんじゃねえぞ。あ、あと、そっちの貴族っぽいおっさんは殺すなよ」
「指を切り落とすのもナシか?」
「まあ生きてりゃそれでいいさ」
「ひぇっひぇっひぇっ」
もしかして男女問わず切るのが好きなんですかね? 断裁分離ですか? まああれはハサミだったけど。
「行くぜ、行くぜ行くぜ行くぜ!」
「ウダウダ言ってねぇでとっとと来いや」
ヴィオレッタさんが挑発する。いい加減しびれを切らしたんだろうか。まあ最初のはアリスが砕いちゃったから出番が欲しかったのかも。
「じゃあ、行くぜえええ!」
姿勢を低くしてこっちに走ってくる。そこまで速度は早くない。ヴィオレッタさんは剣を構えることも無く待ってる。これは拳で十分、って事ですかね?
「死ねぇ!」
下から突き上げるように繰り出されるナイフをヴィオレッタさんはスウェーバックでかわし、そのまま横から拳を叩きつける。
「をろっ!?」
横っ面に拳を食らってナイフなめ蔵(仮称)は吹っ飛んで倒れた。
「おいおい、この程度かい。次は誰だい?」
ヴィオレッタさんがニヤリと笑う。こんなものは御茶の子さいさいという感じらしい。さいさいってなんだろうね。さいさいしー?
「オレがやるぜ」
今度はアニキの後ろの方からナイフの男が出て来た。こっちはナイフ舐めたりしないみたいだ。その代わりにピタピタと刃の横を手のひらで弄んでる。
「死ねぇ!」
姿勢低くして突っ込んでくるのはさっきと変わらないんだけど。ええと、これってもしかして色違いだけど性能は変わらないってやつ?
ヴィオレッタさんはさっきと同じ様に下段から突きで向かってくる刃をスウェーでかわす。いや、ここまで同じなんかーい!




