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第三百十九話:仕掛〇・アンヌ?

必殺シリーズは好きなんですよね。あ、三味線屋がイチオシです。そういえば翻筋斗もんどりって漢字、翻も筋斗も宙返りって意味らしいですね。

 ルナ(眼鏡っ娘)をクビに? そんな罰当たりなことしたら眼鏡っ娘教団の皆様に粛清されてしまう。いや、異世界まで来るのかは分からないけど。


「ルナを雇うと決めたのはぼくだ。ややこしい事情があったとしてもそれは仕事を辞めさせる理由にはならないよ」

「ありがとうございます!」


 そのまま目を両手で覆い、泣き崩れてしまった。えーと、こういう時って感激のあまり抱き着いて来るとかそういうパターンじゃないの? ああ、いや、眼鏡っ娘だからその辺の奥ゆかしさもあるのか。急に激しい動きしたらメガネがズレたりオチたりしちゃうもんね!


「よし、じゃあ詳しい話を聞きたいからお父さんに会わせて貰えるかな?」

「え? そ、そんな。助ける代わりにオーナーの嫁になれとでも言うのでしょうか?」

「いや、言わないから。詳細を聞かないと状況把握出来ないし」

「そ、そうですよね。し、失礼しました!」


 あからさまにホッとされたのをぼくは見逃していないぞ? うーん、このボディ、痩せてるからそこまで醜くはないと思うんだけど。え? 優れた造形でもないって? いや、まあ素体がぼくなんだからその辺はね。


 で、ルナはその日は早退という事で、あ、仕事の一環って事でこの時間も給料出すからと言ったら安心してくれた。まあ借金返済の為だから働かないといけないよね。


 エラリス商会は骨董品や宝石などの価値のある物を扱う貴族御用達の商会である。昔は宝石の加工、新しいアクセサリーの開発なんかもやってたんだそうだが、代が替わるとその辺の開発費用を「経費削減」の名のもとにどんどんスリム化していったんだと。


 で、給与を下げられた職人たちがどんどん離れていき、アクセサリー開発が出来なくなったので、原石を取ってきて売るみたいな山師な事をしていたそうな。いや、そりゃあジリ貧になるわ。


「お父さん、ただいま!」

「ルナ! 無事だったか。いや、こんな時間に帰ってきたという事は店をクビになったのだな。すまんな、私のせいで」

「違うのよ、お父さん。あのね、お父さんに紹介したい人が居るの」

「なんだと! 店だけならともかく、私の可愛い娘まで私から奪っていくつもりか! 貴様、覚悟は出来ているんだろうな。確かに私はこの通り、ただの商人だが、娘を守ること自体は出来るはずだ! どこからでも掛かってこい!」

「お、お父さん!?」


 あ、まあ娘から「紹介したい人」って男性連れてこられたらそういう反応にも……いや、冷静に話を聞いてくれれば問題無かったんだが。


 ちなみにアリスは来てない。バトルするために行く訳じゃなかったからね。護衛はアカネだけ。やはりもう一体隠密系のパペットを作るべきか?


「御館様、拙者一人で十分でござる」


 思考を読むな。いやまあある意味情報収集担当としては優秀なのかな。まあ、ぼくの脳波と繋がってるからある程度の感情は読み取れるらしいが。


「掛かって来ぬのならこちらから行くぞ、うおおおおおおおお!」


 エラリス男爵は身長も体重も普通の中年男性。いや、体重は少しやせ細ってる感じだ。というかやつれてる? ここのところきっと精神的プレッシャーで睡眠時間とかガリガリ削れてたんだろう。


 当然、ぼくに掴みかかって来るのも割と覚束ない足取りだ。フラフラな足取り、ぼくじゃなきゃ避けられてたね! いや、その、捕まるつもりは毛頭なかったんだけど、ほら、日頃動いてないからどう避ければいいのか分からなくなることってあるよね。今のぼくがまさにそれ!


 つまりは避けられなくて、つっこまれて翻筋斗もんどりうって倒れた。抑え付けるのも、抑え付けられるのも慣れてない同士だとゴロゴロ転がっちゃうんだね。痛い痛い。いや、心情的にね。ほら、一応分身体だから痛覚無いし。


「この野郎、この野郎、ルナをお前なんかに、渡すものか!」


 とか言いながらポカポカ殴ってくる。痛くないけど。というか殴ってる手の方が痛いんじゃないかな?


「アカネ?」

「なるほど、これが騎乗位。勉強になります!」

「そういう勉強はしなくていいから引き剥がしてくれる?」

「せっかく歩美殿にご教授いただいたというのに」


 おい、ちょっと待て。いや、歩美さんにはノータッチだ。でも一言ぐらいは変なこと教えないでって言っとかなきゃな。


 アカネに引き剥がされても空を切りながらも拳を突き出している。その手は血に塗れている。もちろん拳から出血した血だ。


「アンヌ、こっち来て手当してやってくれ」

「分かりました」


 なおも泣きながら殴り掛かろうとする男爵をアンヌが近寄って首筋に小さな針を刺した。あっという間にかくん、と首から力が抜けた。


「アンヌ?」

「ご心配なく、峰打ちです」

「針に峰も刃もあるか!」

「まあ、針麻酔です。下手に薬を入れるよりはマシでしょう」


 でもビジュアル的には針を刺したら動かなくなったんだよね。なんという必殺仕〇人。


「うわぁーん、お父さん!?」


 あ、ルナさんが父親が死んだと思って一生懸命揺すってる。おい、アンヌ、どうするんだよ、これ?


「トドメさします?」


 しねえよ!

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