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第三百十八話:エラリス男爵家の事情

聞くも涙、語るも涙の物語。では無いけど、まあこういう話。

 ちなみに雇った初心者と思しき冒険者たちはガタガタ震えているだけで向かって行きもしない。いやまあ、そりゃあ居るだけで良いみたいな事は言ったけども。


 黒狼はすっと男に近付くとそのまま男が崩れ落ちた。何事!?って思って見てたらなんとアリスが説明してくれた。


「恐ろしく速い手刀ですね。私じゃなければ見逃してましたね」


 そのセリフは後で魚に食べられそうだからやめろ。でもまあ黒狼の強さ的にはその団長さんクラスはありそうな気がする。追っ手は処理したとか言ってたし。


 まあ、その場にはぼくはおろかアリスも居なかったのでそのまま黒狼は前に出る。


「くっ、役立たずが! お、お前ら、ワシを守れ!」


 喚くデブに黒狼が手を伸ばした時、秘書っぽい男が前に出た。


「邪魔だ」

「退きません。今日のところは退散しますのでまた日を改めると店主にお伝え下さい」

「……ふむ、この店に手を出さないなら構わん」

「ありがとうございます。さあ、帰りましょう、アッコギ様」

「う、うむ、そうだな。今日のところは帰ってやる。だが居場所は突き止めた。ルナ、首を洗って待っていろよ。いや、首だけじゃなく身体全部だな」


 ぶひひひひひみたいな音が聞こえてきそうな笑いを残してデブどもは帰って行った。


「以上が顛末にござる」


 映像を撮影してくれたアカネが言った。お前、忍びだからってゴザルはどうよ? 最近ハマってるのか? 最近のニンジャは忍殺語を話すんだぞ?


「忍殺語の使用は奥ゆかしさを欠くのみならず、何も知らぬ一般モータルに深刻なニンジャリアリティショックを生じさせる実際危険な行為でござ……る」


 言葉の意味はよく分からんがどうやらダメらしい。ま、まあ、今の問題はそこじゃなくてルナの事情だな。本人に話を聞いてみるか。


「御意にございま……ござる」


 言い直さんでいい! というか本人にも定着してねえじゃねえか。いや個人の口調には特にとやかく言うつもりもないけど。


 改めて二号店に出向いてルナを呼ぶ。その間はアインとアリスに店の事は頼んだ。アリスはこっちについて来たがったが、店を頼む、頼りにしているって言ったら店に行ってくれた。実際、あんなバカが来て、初心者マークの奴らがかかって行かないなら、アリスに居てもらうしかない。


「あの、オーナー、私に用ですか?」

「うん、まあ座ってくれ」

「は、はい」

「それで、その、昨日の事なんだけど」

「! や、やっぱりダメですよね。ごめんなさいごめんなさい。私が居なくなればきっともう来ませんので」


 急にペコペコ頭を下げ始めた。いや、別に追い出そうとか思ってないよ? 厄介な事になりそうだからちょっと詳しく話を聞いて対策をだね。


「ごめんなさいごめんなさい」


 いや、だからね、別に被害もそんなに無かったし。


「すいませんすいません」


 うーん、このままだと頭下げ過ぎて頭に血が上りそうだね。ほら、平和主義過ぎてガンジーが核ミサイル撃つみたいな。


「ええと、とりあえず落ち着いて事情を話してくれないか?」

「はい、全てをお話しします」


 ルナはポツリポツリと話してくれた。それによると、ルナの実家のエラリス男爵家は商才を見込まれて授爵した法衣貴族。男爵なので貴族としての手当も最小限。オマケにルナの祖父も父も商才が無く店は傾くばかり。うん、そこまでは知ってる。


 ところがルナの父がどこからともなく金を手に入れて来たのだという。聞けば商売仲間が口を利いてくれて新しい商売に誘われたらしい。その商売というのが「絶対安全で儲かる」やつなのだそうだ。


 ぼくにでも分かる。詐欺師の常套句じゃん。世の中に絶対儲かる商売なんて無いし、仮にあったとしてもそのパイは非常に小さく、とてもじゃないが他人に紹介なんてしない。独り占めするはずだ。


 で、例に漏れずその商売の資本金を出資する為に例のデブ、アッコギに金を借りたんだそうな。アッコギの貸す金は利率が高い事で有名だが、実は利子を無くす方法がある。それは「娘を担保に入れる」こと。


 まあ言ってしまえば人身売買なんだけど、父には必ず稼げるとの勝算があった。だから利子はあるより無い方がいい。絶対儲かるのだからとその話に乗ったそうだ。


 ところが相手が資本金をガメて逃走。行方が分からなくなってしまった。借金の返済期限まではまだあるものの、どこから嗅ぎつけたのかアッコギは相手が逃げた事を知っていた。


「返す当てはあるのか? なければお前はワシのものだ」


 いやらしい笑みを浮かべて二チャァと笑うアッコギに怖気おぞけが走り、家を逃げ出す様に飛び出してここに来たとの事だった。今の住まいは宿を借りてるそう。いや、金がいるのにそんなの借りてる場合じゃ。でも宿に避難しなきゃ家にやつが来るのか。


「よし、話はわかった。で、ルナはどうしたい?」

「え? クビ、では無いのですか?」


 ルナはキョトンとした顔で問い掛けて来た。

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