第三百十二話:面接、面接そのろく〜
ドロテア、愛称はドリーとかドーラとかドロシーとからしい。ロリータが愛称になるのはドロレスですね。
まあ元々男性店員志望は余りいなかったからね。警備の仕事はそこそこあったけど、商業ギルドだけでなく冒険者ギルドでもやってくれって事でまた日を改めてやる事になってる。だから警備員は保留なんだよね。
まあ、現段階でもヴィオレッタさんとかも臨時とかでやってくれるって言うし、そうそう必要になる事は無いかな。本当はゴーレムをもっと配備出来ればいいんだけど、街中にゴーレム置くのは程々にしたいし、何よりスペースとるからね。
「じゃあ次の人を呼んで」
「はぁい」
入って来たのは露出過多の女性。なんだかぼくの方を見てニヤニヤしてる。まあ乳はデカいと言っておこう。飽くまで一般論だけど。
「こんにちわぁ、あたしぃ、ドロテアっていいまぁす。ヨ、ロ、シ、ク」
投げキッスまでこっちに投げて来た。よく見るとユーリが「早く落として!」って囁いてくるし、アリスが念話で「何このアバズレ。主様、ぶっ殺してもいい?」などと物騒な事を言ってくる。
「その下品なものをおしまいなさい」
ラケシス様がこめかみをピキピキさせながら言うし、ヴィオレッタさんは「あたしの方がデカいな」などと不敵な笑みを浮かべている。うん、まあその辺の競うのはここじゃなくて外でやって欲しい。
え? ぼく? ちょっと色情狂って言うか、露出がすごいとは思うけど、上手くいけば男性客の呼び込みに役立つかもしれないからね。いや、女性客が不快になるんならそれはそれで引っ込めるけど。
「ええと、面接を続けます」
「ええっ!?」
ぼく以外のその部屋の全員が素っ頓狂な声を上げた。いや、別にぼくのお妾さんを募集してるんじゃないんだし、純粋な気分で面接しないとね。まあさっきの男性たちみたいな邪な考え持ってたらアレだけど。
「お名前と背景を」
「はぁい。あのぉ、あたしぃ、しょーかんで働いてたんですけどぉ、色々あってクビになっちゃってぇ」
しょーかん? 召喚? 呼び出されたの? それとも将官? 軍属? はたまた商館……商売経験者かな?
「クビになった経緯を伺っても?」
「えっとぉ、お客さんにぃ、しつこく言い寄られちゃってぇ、その人がぁ、奥さん捨てるから一緒になろうってぇ。あは、商売で相手しただけなのにねぇ」
接客だけで言い寄られる? いや、大手の商館なんだからそういう事もあるのかな? もしかして接客の達人?
「あの、ちょっと良いかしら?」
「なんですかぁ?」
「そういうところを辞めるには身請けとかで多額の金銭が必要になるって聞きますが、それは払ったんですか?」
身請け? うーん、奉公に来た人が買われて働かされるとか奴隷みたいな扱いで儲けてんのかな?
「御館様、商館ではなくて娼館、色街にございます」
アカネがこっそり教えてくれる。もももも勿論知ってたさ! ぼくがそういう店を好まないから行ったことないだけでそういうのがあるのは分かってるさ。ほら娼婦って世界で一番古い職業って言うし。まあ医者とか傭兵とかって話もあるけど。
「ええとねぇ、実はぁ、お店から逃げてきたんだよねぇ」
はあ? 店から逃げてきたって脱走?
「だってぇ、そこの人にぃ、貴族の妾になれってぇ、言われちゃったんだよねぇ。でさぁ、困って逃げて仕事探してたらぁ、他のところより割が良くてぇ、守ってくれそうっておもったんだよねぇ」
守ってくれそう? ぼくにそんな力は……あっ、そうか。この店をラケシス様のものだと思ってる人が居るって話があったな。でも、明らかにぼくを誘惑してたよね?
「そこの人を誘惑したのはぁ、男性がその人しかいなかったんだものぉ。私としてはぁハンサムじゃないけどぉ、そんなに嫌いなタイプでもなかったしねぇ」
「し、し、失格、失格です! こんな人、失格にしましょう! ボクは護の事をどうでもいいみたいに思ってる人を許せません!」
「そうだよ、主様はとても優しくてかっこよくて素敵な人なんだから!」
ユーリとアリスは激昂していたが、ヴィオレッタさんは「あー」みたいな顔で、ラケシス様は「順当ですわね」みたいな顔をしていた。
「あー、ぼくから聞きたいのはちゃんと仕事するつもりがあるかってところ。出来たら男性客とかに色目を使って欲しくないんだよね」
「雇ってくれるのぉ? 嬉しぃ!」
ドロテアは感極まったのか、ぼくに胸を押し付けるように抱き着いてきた。ちょっと、息が出来ない……いや、分身体だから息する必要ないんだけど。
「……まあ面接官は護さんだから構いませんが、娼館とことを構えるおつもりですか?」
「まあ、いざとなったら帝国の方のお店で働いてもらうよ。ほら、娼館出身って事は客のあしらいも上手いかなって」
風俗店に行く奴は気が大きくなって命令口調とか自分が偉いんだみたいな奴も多いと聞くし、そういう人を捌いてたんなら接客技術もそこそこあると思うんだ。まあダメだったらダメだった時の事でしょ。




