第三百六話:集団面接です。圧迫の予定はありません。
ユーリの心象風景が効かないのはパペットだからです。アリスたちにも効きません。だから気安いです。
「それなら奴隷を買っちゃえば?」
「いや、ユーリ、ぼくはそういうのは嫌いなんだよ」
本当に嫌いなんだよ。奴隷を使うのが、じゃなくて人と接するのが。
「あれ? でも帝国では奴隷使ってるでしょ?」
あー、そういえばユーリには説明してたよなあ。で、でも、唐揚げ屋では使ってないんだし。
「それ、帝国の奴隷屋さんで何かしらやらかして買えなくなったのかと思ってた」
いや、そんな事はありません。なんならどうですか?って奴隷商人が売り込みに来ます。確かに店員は必要ですけど、丁重にお断りしています。
「ま、まあ、それで奴隷は嫌なんだけど、店員は増やさなくちゃいけなくて困ってるところなんだ」
「なんで困ってるの?」
ぼくはユーリに前回の面接の時のことを説明した。
「え? 十歳児採用したの?」
いや、重要なのはそこじゃなくてだね。
「へー、ふーん、そうかあ、十歳児が良いのかあ………………ボクもチャンスあるかな?」
「違うからね? ん? 今なんて」
「なんでもない! それよりも信用できるかどうか問題ならボクが一緒に面接しようか?」
え? ユーリが一緒に面接?
「そうそう、ボクの能力でその人の悪意を読み取って教えてあげる。どう、どう?」
いやまあそれはそれでありがたかったりするんだが、それだとその分ユーリが嫌な感情に襲われてしまうって事だからあまり宜しくない気がする。
「そうは言ってもやっぱり」
「お願い! ボク護さんの役に立ちたいんだ!」
必死な目でぼくの方を見てくる。これは仕方ないかな。
「うーん、まあそういうなら分かったよ。ユーリに手伝って貰うかな」
「! ありがとう! ボク頑張るからね」
ユーリが感極まったのか抱き着いてくる。まあこのボディは分身体だからいくら抱き着いても構わないとも。心象風景効かないしね。
「あー、またユーリが主様とくっついてる! はーなーれーろー」
「もう、いい所だったのにまたアリス? しつこいなあ。いーやーだー」
やめなさい、服がのびる。しかし何とか目処が立ちそうだ。
「それではこれより面接を始めます」
「始めます」
……用意が出来たとの事で大規模面接をするために商業ギルドに赴くと、そこには何故かラケシス様とアヤさんが居た。
「なんでお二人が?」
「もう、護様。言っていただけないなんて水臭いです」
「そうですよ、私と護さんの仲じゃないですか」
どんな仲だよ。いや、一方的に集られる仲だろうか。ほら、ちょっとその場で跳んでみろよ。チャリンチャリン。ほら、持ってんじゃねえか、さっさと寄越せ! ううっ、記憶が走馬灯のように蘇る。まあぼくの場合は跳ばされることも無く、普通に財布取られて札を奪われてたんだけどね。
アヤさんの場合はご飯を集って来るだけだからまだマシなんだけど。で、なんでこんなところに居るのかと言うと、お店に朝行った時に世間話でおしゃべりな店員が「今日新しい人の面接らしいんですよ(中略)楽しみですよね」って言ってたらしい。中略の内容は特に中身もなく喋ってたのでお察し。
「だから是非店員の見極めの一助になるかと思いまして、こうして駆け付けました」
「ました!」
いや、ラケシス様、公務はいいんですか? というか朝聞いたんなら今日やる公務投げ出して来たんですよね? そんなんでいいんですか? あとアヤさんはちょっとは仕事してください。ぼくが言うことじゃないと思うんだけど皇帝陛下はともかくヒルダさんが可哀想です。
「はい、二人ともハウスで」
「え? ちょっと、私はこの国の公爵令嬢なのよ。この扱いは失礼ではないの?」
「呼んでもないのに押し掛けるのは迷惑と言うんですよ。王妃様に報告しましょうか?」
「うっ、ごめんなさい。口は出さないからここに居させてください」
「ください」
まあ来てしまったものは仕方ないのでせめて公爵令嬢とバレない格好に着替えてください。ほら、アスカに運んでもらって。あと、アヤさんはそのまま家でなんか食べてて良いですよ。
「本当に? あー、私しばらく食べてなかったから唐揚げカレーが食べたいなあ」
アヤさんの排除には成功したようだ。後で森の中にでも放り投げとこうかな。でもそれやったら一晩中うるさくなる気がする。
という訳でラケシス様、ギルドマスターのゲーツさん、ぼく、ユーリの四人で面接をする事になった。ユーリを同席させることについてはゲーツさんが難色を示したんだけど、ユーリが「夫の事業を手伝うのは妻の勤めですから」って言ったら何も言わなくなった。ラケシス様は「護様、あなたって人は……」って感じの顔してたので誤解だとは言っておいた。
面接に来た人は百人以上。正直こんなに集まるとは思ってはなかったんだけど、条件がいいのと店が有名だからってことらしい。いい人が見つかるといいなあ。




