第三話:異世界のお供にナビ妖精
やっぱり必要かなと。
家の中に入ってみると、水道、電気、ガスというライフラインはちゃんと来ていた。まあ無いと引き込もれないからなあ。
改めて二階の自分の部屋だったところまで移動してみる。そこはまごうかたなき自分の部屋だった。散らかってるお菓子の袋と読み掛けのマンガ。脱ぎ散らかした服、そういえば洗濯は自分でやらないといけないんだよな。まあ、溜まってからでいいか。
何より鎮座してるぼくの愛機。数々のネトゲを共にくぐり抜けて来た戦友。言うほど数々でもないか。むしろ巡回作業にこそその価値もあれば意味もある。
ぼくはいつものようにパソコンの前に座ると電源を入れてインターネットに繋がら……ない!? なんで? 電気もガスも水道もあると言うのに回線だけダメだなんて、なんだよそれ!
「説明しましょう」
どこからともなく声が聞こえて来たので驚いてそっちを見てみるとそこには全長十五センチくらいの光る妖精の様なモノがあった。
「なんだ、お前は?」
「私ですか? 私はこの世界のナビゲーター役であるフォルトゥーナ様の分体、フォルテと言います」
フォルトゥーナ、あの女神が。そうだな、クレームは入れなくちゃいかん。
「あの女神の手先か? だったら話が違うと言ってくれ」
「話が違うとは? ご希望のものは全て揃ってますよ?」
「ネットに繋がってないじゃないか!」
「そりゃあまあ異世界ですから。電気、ガス、水道などは周りの魔力を変換してますから問題ないですよ」
「いやいや、ネットに繋がってなくてどうやって生活していくんだよ!」
「あ、なるほど。確かネットスーパーの能力がどうこう……ちょっと待ってくださいね」
そういうと妖精はぼくの愛機の前で何やら怪しい踊りを踊った。いや、MPは吸い取られてないよな?
「出来ました! ネットスーパーです!」
言われてパソコンを覗き込むとネットスーパーの画面、密林でもないけど品揃えは抜群のようだ。なんか飛行機とか戦車とかミサイルとかあるんだけどこれは……
「ネットスーパーです!」
「いや、それはわかったけど、これ、ネットスーパー以外のサイトにアクセス出来ないんだけど」
「ええ、そりゃあネットスーパーの為のものですから」
ふざけるな。という事はぼくからネット環境を取り上げようってのか? 返せ、戻せ、責任取れ! 責任者出てこい! いや、叫んでもなんも出てこないんだけど。
「まあまあ落ち着いてください。思い通りにならない事なんか世の中にたくさん……」
「分かってるよ! だから引きこもってたんだろうが!」
いや、この妖精に八つ当たりしても仕方ないのかもしれない。
「お前、フォルトゥーナと繋がってたりしないの?」
「無理ですね。この世界に来る時に女神との繋がりは切除されて切り離されてます。あ、でも何とかするための知識は授けられてますから大丈夫ですよ」
何とかするための知識ねえ。ぼくが送りたいのは引きこもるだけの生活。外に出ようとか全然思わない。
「ダメだ、考えがまとまらない。とりあえずなんか食ってから考えよう」
部屋の中には菓子がいくつかと積み上げたカップ麺がある。とりあえず食うにはそこまで困らなそうだ。でもなんというか出前とか欲しくなるよなあ。ネットスーパーで……いや、さすがに出前はないのか。
カップ麺にポットの中のお湯を入れる。ポットの中にはいつもと同じようにお湯が入っていた。しかも使ってもなくならない。補充しなくても済むのだ。カップ焼きそばなら湯切りしに階下へ行かないといけないけどそんな心配も無いしな。
「そんでネットが繋がらねえのはどうすればいいんだ?」
「ええと、いくつかアプリがあるのでその説明をと」
「へえ、アプリねえ」
「はい、まずはパペットマスターっていうゲームアプリです。このアプリはパペットというキャラを使って遺跡の探索をして、トレジャーを持ち帰るってゲームです」
「へえ、そんなのが。まあ嫌いじゃないよ、そういうの」
「これでネットスーパー用のお金を稼ぎます」
「え?」
「お金を稼ぎます」
言われて気づいた。ネットスーパーがあっても利用する料金がないんだと。その為のお金を稼ぐ? ゲームで? いやまあ働けって言われるよりはいいけど。
「それはわかった。確かに稼がなくちゃいけないよな。どういう仕組みかはわからんけどお金を稼げるならそれでいい」
「あ、別にやらなくても本とか売れば金にはなりますよ?」
「売るってどこに……」
「アイテムボックスに買取欄があるのでそこにアイテムを入れたら査定額が出て、それで良ければ売却されます」
どうやら買取のシステムもあるらしい。試しに本を入れてみる。中古の漫画本が五十円と表示された。
「安いな」
「古本なんてそんなものじゃないですか?」
一度読んだ本はもう読まないので売っぱらってもいいのかもしれない。パペットマスターとやらでどれだけ稼げるか分からないからなあ。