第二百九十九話:お白州終了。引っ立てい!
そろそろ別の話も書きたいですね。
「そんな、旦那様! それでは私はどうしたら……」
「さっき追放すると言ったはずだが?」
「旦那様のナイスジョークではなかったのですか?」
「審判の場でジョークを言うマヌケは居ない」
コントかな? いや裁判所でジョークはいただけない。逆転が待ってる訳でもないんだし。
「旦那様、オラはこんな田舎モンで」
「なぜお前は私と話す時だけ田舎っぽくなるのだ?」
「その方が純朴なオラを表現出来ると思ったんだす」
まあ今のセリフで台無しだけどな。
「お父様、それは私が指示したのです」
ここでセーラさんが割って入ってくる。
「セーラ、お前が? どうして?」
「ベスを辞めさせたくなかったからです。純朴な田舎娘ならお父様は同情して手元に置くだろうと」
「お前……」
これは呆れてるのだろうか、それともそこまで知恵が回るセーラさんに感心してるのだろうか。
「それに純朴そうな小娘なら何か企んでいてもたかが知れてると思わせる事が出来ますし」
セーラさんは十分に商会長としての素質を開花させているようだ。
「お嬢様……」
「ごめんなさい、ベス。もういいのよ」
「ですが、僕としてもお嬢様とだけの秘密がなくなってしまうようで残念です」
「まあこの子ったら」
「えへへ」
何を見せられているのだろうか。まあ百合が咲くのは一向に構わないんだけど審判の場でやることかなあ? ラルフさんに言わせるとこれもマヌケになってしまうのだろうか?
「無罪、無罪です! 百合は無罪!」
おい審判長、真面目にやれ。なんだよ、その百合無罪って。いや、その理論には全面的に賛成ではあるものの。
「まあ審判長もああ言っておる様だし、お前たちの仲については不問としよう。それで審判長、今やっているのはミンチナとアビニアの断罪なのだが」
「あなた、妻である私を捨てる気?」
この期に及んでまだ妻とか言ってんのか。どれだけ厚かましいのか。
「お前が不貞をしていなければそれも考えたのだがな」
「わ、私はエロジィ男爵と関係を持ったりは」
「まあエロジィ男爵とはそうなのだろうな」
ん? これはもしかしてエロジィ男爵じゃない人とはそういう関係だったという事かな?
「情報は握っていると言っただろう。お前とアビニアが頻繁に出かけて行った先の有様だ」
おおう、ミンチナだけじゃなくてアビニアもかよ。どこに行ってるのかと思ったら若い男を買える秘密倶楽部みたいなのがあるらしい。
いやまあぼくは男には娼館が堂々とあるのに女にはそういうの堂々とはないのはジェンダー平等に反すると思うんだよね。ただまあ、男性のソレを放っておくと犯罪に到りやすいってのはあると思うから納得はしてる。男はつっ込むだけだけど、女は勃たせないと出来ないからね。
まあそれはそれとして、個人的にはそういうお店や集まりは好きにすれば良いと思うんだけど、既婚者がそれをやっちゃあダメじゃないかな。これは男女問わずだと思うんだ。まあぼくはそういうの興味無いから人それぞれの事情があると思うけど。
でもさすがに娘と一緒にそういう場所に赴くというのはやり過ぎでは無いだろうか。もしかしてこの母娘はサキュバスとかなのだろうか? うーん、サキュバス。エロ本展開だととてもよくあるネタなんだけど出会わないよね。まあ寝てる間にそういうのしてくれるのは便利ではあるんだけど。
「主様、言ってくださればいつでも私が」
いや、アリスにそういうことするつもりは無いよ。さすがに性のはけ口にはしたくないからね。安心してくれ。命令が絶対でもそんな事は命令しないから。
「…………そうですか」
あれ? 最大限の配慮をしたつもりなのに何故かガックリされてる?
「違うのです、これは違うのです!」
「相手の男にも確認はとった。私としても残念だよ」
正直、NTRものってぼく的には嫌悪の対象でしかないんだけど、こんな風にその後に断罪イベントが待ってるなら大歓迎だ。
「判決。ミンチナは不義密通、商家乗っ取り、私的拷問の罪で処刑を申し付ける。その娘、アビニアについては処刑はせぬが受牢の後、然るべきところに送るとする!」
再び審判長がカンカンと木槌を打つ。仕事残ってて良かったね。ミンチナは崩れ落ち、アビニアは怒気を噴き出しながら暴れていたが取り抑えられて牢屋へと運ばれて行った。
「終わりましたな。色々とありがとうございます」
ラルフさんがぼくに深深と頭を下げた。いや、ぼくは蜃さんのに付き合っただけで何もしてはいないんだけど。いや、死にかけのラルフさんを救出して回復はさせたか。まあまだ回復させないといけないから暫くは安静だけどね。
「これにて閉廷と致します!」
審判長が安堵したように告げる。うん。殆ど仕事無かったよね。ごめんなさい。ラルフさん無双になっちゃった。




