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第二百八十九話:ベッドルームに女の子を連れ込むシチュエーション

なお、ベッドルームには一命を取り留めた父親が眠っている模様。

 テリヤキチキンバーガーを食べようとして何やらフォークとかナイフとかを探す絵が見られるのでは?とか期待していましたが、普通にかぶりついてました。あー、まあ、商人の娘だし、何よりさっきアスカが食べてたわな。


「すごく不思議な味……食べたことない。でも美味しいです」


 口の中いっぱいに頬張ったりしなかったのは育ちの良さから来るものだろうか。粗食のところにいきなり味の濃いやつを放り込んでも良かったものかと思うが、本人が満足そうなので問題ないだろう。


 とりあえず喉に詰まるとまずいのでぬるめの紅茶をあげる。熱い紅茶でもいいかなとは思うけど、喉に詰まった時に舌がやけどする様なのは良くないだろう。アイスティーでいいじゃないかってのはあるけど、多分驚きが勝っちゃうんだよね。


「ご主人様、お食事の用意が出来ました」

「そうかい。えっと、ここには無いの?」

「はい、家に戻ってからの方が良いかと思います。さすがに店先でテーブルやカトラリーを広げるのは」


 言われてみればそうだね。ぼくなんかは駄菓子屋でブタメンとか平気で食べてたから外で食べるのに抵抗はなかったんだけど。やっぱりとんこつだよね!


「アスカ、セーラさんを頼む」

「任された」

「え? それはどういう、きゃあ!」


 アスカが転移でセーラさんを運搬。ぼくらは普通に扉から帰るよ。誰にも見られてないよね? まあ実は扉に認識阻害みたいなのが働いてたりはするらしくて、街中で使っても問題はないそうな。でも、今までいた人が居なくなるのは間違いないので騒がれるのは避けられないだろう。


「おかえりなさいませ、ご主人様」


 家に帰るとアインが丁寧なお辞儀で迎えてくれた。セーラさんはソファーに座ってぼーっとしている。意識がはっきりしてないのかな?


「あ、あの、その、ここは、一体」

「まあまあ、とりあえずご飯にしましょう」


 ソファーに座ったままのセーラさんの目の前にアインが次々と料理を運んでくる。見た目がこの世界基準で奇妙に映るものは作らせてない。なのでパンとスープ、サラダ、肉料理というのが基本セット。


「あの、これ、本当にいただいても?」

「食べられなかったら残してもいいよ」

「あ、いえ、いただきます!」


 セーラさんはスープをスプーンで一口すすり、パンを咀嚼し、サラダに手を伸ばした。食べながらボロボロと泣き始めた。えっ、泣かした?


「おいひい、おいひいです……ほんなおいひいの、ほんとうに、よはったんへひょうか」


 感動のあまり口の中にものが入ってるのもお構い無しに喋る。良いんですよ。ぼく的にはそこまで食欲をそそられるようなものでもないし。いや、セーラさんの為の食事だから仕方ないんですけど。


「ご主人様は食べないんですか?」

「えー? いいよ。ぼくは後でカップ麺でも食べ……あ、でも、スープとかパンとかも食べといた方がいいよね。ぼくも食べようかな。いただきます」


 アインの目が光って体感温度が五度くらい下がった気がしたので大人しくご飯を食べます。うん、まあ不味くは無い。好みの味では無いけど。だいたいサラダにドレッシングすら掛かってないんだよね。塩はかかってるけど。


「ご馳走様でした。とても美味しかったです。ありがとうございました!」


 セーラさんは満足気にアインに向かって礼を言っていた。


「私はご主人様の言う通りにしたまでのこと。お礼でしたらご主人様に」

「そうですか、護さん、ありがとうございました」

「あ、いえ、大丈夫ですよ」

「あの、ところでミラージュさんはいらっしゃらないんですか?」


 ミラージュこと蜃さんも食事に誘ったんだけど、「晶龍お坊っちゃんの支度がありますので」と丁重にお断りされた。まあそうだよな。多少は成長したとはいえ、あの晶龍とセーラさんを会わせる気にはならないんだよなあ。


「彼はちょっと別用で出ていますので」

「そうですか。お礼言いたかったのですが」

「まぁ大丈夫ですよ」


 すすっとアンヌが寄ってきた。耳打ちされる。おばさんたちの縄は切ったよ、ではなく、ラルフ氏の意識が戻ったとの事。手術後なので体調はまだ戻ってないが話くらいなら出来るらしい。


「セーラさん、こちらへ」

「え? なんでしょうか? あの、その、そちらはベッドルームですか?」

「え? はい、そうですね。ベッドルームになります」

「そうですか。そうですよね。はい、分かってます。助けていただいて、食事までいただいたんですもの。ただというのはあまりにも都合が良すぎますよね」


 この子は何を言ってるんだろうか? ラルフ氏と会わせない訳にもいかないし。まあ騒がれても困るけど。メディカルマシーンみたいなポッドに入ってる訳でもないから騒がれないはず。


「分かってます! ですが、その、私も経験などありませんので、優しくしていただけると嬉しいのですが」


 経験がない? うーん、まあこんなところにいきなり連れてこられて食事詰め込まれて父親とご対面、なんてシチュエーションがそうそう経験出来るとは思わないけど。あ、もしかして、人に助けてもらうのが経験ないのかな?

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