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第二百八十六話:キャサリンさん、こわーい

お腹出てないマッチョだよ!

 ぼくは恐怖におののいていた。かつてこれほどの恐怖を感じた事があったろうか。何故かおしりの辺りが熱く燃えている様な感覚さえした。


「はじめましてぇん、わ、た、し、がっ、このお店の店長、キャサリンよぉ。仲良くしてねぇ」


 キャサリンかあ。ぼくはホラーゲームとかあまり得意じゃないんですよ。存在自体がホラーな人とかやめて欲しいんですけど。


「店長、セーラさんと話をしたいので場所を借りたいと言ったはずですが」

「あらぁ、ミラージュちゃんも、キャサリンって愛情込めて言ってくれたら良いのよ?」

「いえ、その、セーラさんの家の事情もありますから席を外していただけると」

「そぉなのぉ? 残念ねぇ。でもまぁお得意様のためだものねぇ」


 ヒラヒラ手を振りながらキャサリンは裏口から出て行った。


「ミラージュさん、彼女……でいいのか分かりませんが、アレをそのままにしていいんですか?」

「問題ありません。堂々と街中歩いたりしても絡まれることはありませんし」


 いやまあそりゃあわざわざ絡みに行く人はいないだろうけど。ううん、もしかして王国の方じゃなくてこっちに甘味処作ってたら遭遇ももっと早かった? いや、あの巨体で甘いもの好きとかそういうこともあるまい。


「それよりもセーラさん、お父君の事ですが」

「そうでした! 父は、父は今どこに?」

「こちらの方が預かっているそうで。現在は静養中なのです」

「そうですね。まだ今は安静にしておいた方がいいと思います」

「あの、父の顔を一目でも見る事は出来ませんか?」


 見る事が出来るかどうかで言うとすぐにでも見せてあげることはできる。まあ、問題はどこで見せるかだ。


 ぼくの家に連れて行く? 確かに秘密を知ってる人間はそれなりにいるし、今更一人増えてもとは思うけど、それでも人数は減らしたい。父親の方はぼくらに恩があるから喋らないだろうって希望的観測が出来るんだが。


 どこか別の場所に移送する? まあそれならそれで良いけど、そこからセーラさんが連れ帰るみたいな事を言い出した時に、下手すると父娘ともども処分されてしまうかもしれない。


 いっその事会わせない。これが一番平和だと思うけど、そうなるとセーラさんからの信頼度は下がってしまう。ぼくは別にそれでもいいけど、一緒にミラージュの信頼度も下がるんだよなあ。


「動かすのは良くないので映像だけなら」


 結果的にそういうことにした。映像技術がありえないとかそういうのはあるけど、些末な事だ。


「では、映し出します」


 店の中にホログラムの様にラルフ氏の身体が浮かんでくる。ラルフ氏は基本回復のために寝せているので起きる事はあるまい。


「ああ、お父様!」


 ホログラムが現れるとセーラさんはベッドに飛びつく。まあ幻だから触れないんだけど。


「触れないの?」

「ええ、単なる映像ですから」

「そうですか……」


 あからさまに残念な顔をするセーラさん。確かに触れなかったら残念だけど、全身包帯だらけとか傷だらけとか猫の毛だらけとかではないから。


「これはいつの映像ですか?」

「今ですね」


 どうやら過去に録画したものだと思われたようだ。記録用の道具はあるのだろう。


「そうですか。あの、いつ頃回復するかとかは分かりますか?」


 今度は少し切羽詰まった様子で聞いてきた。


「早く父が戻らないとお店が大変な事に……」


 よっぽど番頭とクソ母娘が好き勝手やってるらしい。でもそれも復帰して変わるものなのか?


「お店のダニ退治はお任せ下さい。私が動きましょう」


 おおっと、ミラージュが動いた! 父親の安全が確認出来たら元々殴り込みに行く予定だったらしい。蜃さんってもしかして武闘派? というか脳筋派? 青龍の下僕だから少しは理知的かと思っていた。


「では、護さんも手伝ってくださいね」


 ぼくは荒事苦手だから遠慮しておくよ!


 その日の喫茶店営業が終わって、セーラさんは家路についた。家の前には豪奢な馬車が停っている。


「あら、遅かったわね。もっと早く帰りなさいって言ってるでしょ」

「本当に使えないわね。あら、こちらの殿方はだあれ?」

「……私の友人でミラージュさんです」


 二人が二チャリと笑った。いや、本当に二チャリという擬音がピッタリ来るんだよ。


「ねぇあなた? そんな女捨ててこっちにいらして?」

「そうよ。お金持ってるのはこっちなんだから」


 なんかブヒブヒ鳴いてるのが聞こえるけどとりあえず無視だろう。第一、ぼくには何も言ってこないし。どうせイケメンじゃないよ!


「お断りさせていただこう。私は友人たるセーラ嬢の為に来たのです」

「あなた一人が来たところでどうにかなるとでも?」

「少なくともあなたの悪事を解決するくらいは」


 母親のミンチナは顔を真っ赤にして叫んだ。


「お前たち! そっちの色男を痛めつけて終わり! ブサイクの方は殺しても構わないからね!」


 ブサイクってぼくのことですね。分かります。

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