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第二百八十話:商会主に紹介しなさい

そろそろ肌寒くなってきましたね。

「いらっしゃいませ!」


 店頭で接客してくれたのは少年の店員だった。見習いか何かだろうか。クール商店は生活雑貨などを売る商店。割と雑多なものが置いてあるみたいで買いに来る客層も様々だ。


 蜃さんはぼくにも協力をお願いしてきた。自分は主人としての役割が上手く出来ないんだそうな。使用人気質とでも言うのだろうか。なのでぼくに幻影を掛けて、太めのおじさんで店に行くことに。まあぼくが最大太って居た時よりかはマシくらいの太さだったよ。


「そうだな。この辺りのものを二、三見繕って貰おうか」

「ありがとうございます。お持ち帰りはどうされますか?」

「大丈夫だ。セバスチャン」

「はっ、かしこまりました」


 セバスチャンという名前の蜃さんに店員の相手をさせてから、ぼくは適当に店内をうろつく。そして適当に偉そうなやつに声を掛ける。


「あー、キミキミ、店主はご在宅かね?」

「いえ、あいにくですが店主はちょっと出ておりまして」

「いつ頃帰ってこられるのかな?」

「ええ、その、なんと言いますか」

「言葉を濁すような事かね? 人には言えないことでもしておるのか?」

「あの、何か父に御用でしょうか?」


 ぼくの剣幕が凄かったからか奥からセーラさんが出て来た。


「あなたは?」

「私はこの商会の娘でセーラと申します。お話でしたら私が伺いますが」

「ふむ。私はギメイという商人なのだが、なかなかの品揃えなのでもっと深くお取引をさせてもらいたいと思ったのだが」

「そ、それでしたら私が!」

「お前風情が商会長同士の話が出来るのかね?」

「わ、私はこの店の番頭を任されております。不足がおありですか?」


 番頭だったのか。それでなんか偉そうな。というかセーラさんが出て来たよね? なんでお前がお嬢様を蔑ろにして喋ってる訳? ハナからお嬢様にそういう資格が無いのならもっと丁寧に引っ込んで貰うのが筋じゃない?


「不足があるかだと? この店は私は店主が出るまでもなく番頭で十分とでも言いたいのかね?」

「あなたがどのような商人かは分かりませんからな」

「ほほう? 隣の王国で王家相手に商売をし、この国でも皇帝陛下にお目通りを許されたこの私を何処の馬の骨とも知れぬというのですか?」

「ひっ!?」


 番頭の悲鳴が聞こえた気がした。セーラさんは慌ててぼくの前に出る。


「番頭の御無礼をお許しください。どうぞ、こちらへ。当商会の事情をお話しします」


 奥の商談スペースらしきところに通された。この分だと本当に当主は居ないみたいだな。


「先程は番頭が申し訳ありません。ですが、これには理由がありまして」

「商会主、いえ、あなたのお父君に何かあったのですか?」

「その、二ヶ月ほど前に学術都市に仕入れに行くと言ったきり。未だに音信不通なのです。ひと月あれば往復出来ますのに」


 という事は行方が分からなくなってから一ヶ月という事か。しかしなんで番頭がしゃしゃり出たんだ?


「父が居ない間に母……その、義母になるんですが、義母が番頭を仮の商会主として認めてしまって、その」

「あなたの義母さんはそんなにも偉いのですか?」

「いえ、その、父が一年前に結婚した時は商家の事に口は出さないと言っていたのですが」


 どうやら義母が何かをして父親が帰れなくなったのだろう。もしかしたらもう生命が。で、恐らく義母は番頭辺りと出来てる。出来てなくても利害の一致なんかあるのかもしれない。そこは分からない。


「私は昔から父の商会を手伝っておりましたので店のことは分かるのですが、義母はそれが気に入らないらしく、貴族に嫁ぐようにと。父さえ帰ってきてくれれば」


 なんかちゅるちゅる喋ってるけど大丈夫なのかね? いやまあ私はある意味部外者の商会主だろうから商業ギルドにでも今の話が広まれば良いとかそういうのかもしれない。


「なるほどですなあ。私も学術都市には知り合いもおりますからな。あなたのお父君がいらっしゃらないか調べて貰うとしましょう」

「本当ですか、ありがとうございます!」


 セーラさんは深く頭を下げた。ええ、学術都市に知り合いなんか居ませんよ? でも、情報調べるならアカネに動いてもらえば大丈夫でしょう。


「というわけで頼むな、アカネ」

「はっ、御館様」


 アカネを学術都市につかわせた。何かしら情報を得てくるだろう。


「商売の話は商会主とさせてもらいたい。そうさな。また一週間とかあとにまた訪れるとしよう」


 ぼくは出来るだけ偉そうに上から目線で伝えた。セーラさんはほっと胸を撫でて安心した様子。ぼくらは蜃さんに声をかけて店から出た。商品は晶龍の家に送って貰う事にした。まあ暮らしで必要になるものだし、余ったらもって帰るかな。


 ぼくらが店を出るとちょうど例の義母が帰ってきた様だった。しまった、アカネに学術都市に行かせたら店の中を忍び込んで探れないじゃないか!

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