第二百六十三話:子どもたちの身の振り方
歩美さんのところに着陸。
「その膨張ってのはどんな能力なんだ?」
正直全く見当もつかない。膨張っていうからには何かを膨らませる能力なんだろうけど、それがどうやって狩猟に結びつくのか。
「物がないとやりにくいんだよ。ええと、そうだ、これでいいか」
そう言って手に取ったのは小さな木の実。そこに膨張の能力を使うと……おっ、木の実が膨らんだ。
「こんな感じ」
だけどこれが狩猟に何の関係があるのか分からない。役に立つの?
「これで膨らませたのを下水に置いたらワニが飲み込んで沈まなくなったんだよ」
なるほど。下水に潜られるとやるのは厄介だから浮かせたままにするのか。
「そこをオレが熱光学迷彩で近寄って仕留めるんだ。どうだ?」
まあ連携としては悪くないんじゃないかと思うけど、皮膚がそんなに硬くなくて良かったねとでも言うべきだろうか。そうじゃなきゃ刃が立たない可能性もあった訳だし。
なお、膨張の能力は生きた動物には使えないらしい。人間に使えなかったから多分無理なんだって。
さて、それじゃあ改めて身の振り方を考えてみよう。別に能力を全部が全部活かす必要は無い。普通に生活出来るならその方がいい。能力がバレると暮らしづらくなるだろうし。かと言って子どもたちだけで生活費が賄えるかとなれば冒険者にでもなるしかないだろう。
しかし、冒険者となっても駆け出しだとこの子たちでは日々の生活にも困るという風にもなりかねない。それに定住先だ。駆け出しの冒険者なら安宿が拠点になるがこの子たちはその先立つものすらない。つまりは野宿。
そうなるとどこか住み込みで働けるところが良いんだが、そんな都合のいいところなんてない。下手するとみんながバラバラになってしまうだろう。いずれは独立して巣立っていかなきゃいけないんだろうけど、今はまだ一緒の方がいいだろう。
帝都に三軒目の店を出す? いやいや、これ以上拡げてもやる頭がついてこない。やるなら経理とかその辺がちゃんと出来る人材が必要になる。そもそもなんの商売をやるかすら決めてない。スタートが違うんだよなあ。
「ならうちのお風呂屋で働く?」
歩美さんが子どもたちに声を掛けた。歩美さんのお風呂屋はダンジョンの機能の一部で作ったやつだから基本的に管理とかしなくても清掃とかは自動で行える。ほら、いつの間にかモンスターの死骸が無くなってたり、採取した植物が生えてたりするやつ。
つまり人手はほとんど必要ないのだ。現に今でも十分回ってる。時々アニマルズが様子を見る程度だ。
「それでも、最低限の、人数は、居ない、といけな、いので」
どうやら客が増えてきて、いわゆるフロント業務が大変なのだという。それにゆくゆくはホテル業務にまで手を出したいとの事。それは確かに人数要るけど。
「どうかな? 君たちがご飯食べるのは問題ないし、それにそれ以上にお給料も出すよ。それからお金貯まって独立してもいいんじゃない?」
まあ歩美さんもぼくら以外のこの世界の人間と普通に会話出来ればその方がいいのかもしれない。子どもなら話せるみたいだし。それに何か問題あってもアニマルズなら対処出来るんだと信じたい。レッドメットだけは心配なんだが。
「それじゃあ歩美さんにお願いしようかな。みんなはそれでいい?」
「なんかオレたちの知らねえところで決まってた気もするけど、まあ下水に居るよかマシだと思うし良いよ」
キリエの言葉にみんなも賛同した様でこれから頑張るようだ。晶龍も嬉しそうにしてるからたまには風呂に入りに連れて来ても良いのかもしれない。
下水の掃除が終わったので冒険者ギルドに完了報告に行く。スライムが入口を塞いでいる事を言ったら頭を抱えていたが、それはまあぼくらが関与するところではないだろう。新しいスライム送り込むとか?
犬の散歩、家の掃除、下水の掃除と不人気依頼をやってきたが次の不人気依頼はなんだろうね。
「次は討伐依頼なんだが」
「やった、あばれていいのか?」
「いや待て待て、一応村からの依頼で、ゴブリン退治なんだが、どうもあやふやでなあ」
「あやふや?」
「出てくるやつがゴブリンなのかすらわからん。村長はゴブリンだと言い張っていたが」
ギルドマスターの話によれば、村人が依頼金を低くするためにゴブリンと言い張ってるんじゃないかとの事だ。つまり、行ってみるまで何があるのかわからない。それなのに安い仕事だからみんなやりたがらないって事だ。
「かと言って放置しておく訳にもいかん。ゴブリンだったら群れを作ってしまうかもしれん。そうなればゴブリンキングやエンペラーなんかが出てきて手がつけられなくなる」
まあ増えすぎたゴブリンがスタンピード起こすところなんて容易に想像出来るもんな。となれば晶龍も暴れ足りないみたいだし、そういうストレス発散系の依頼も悪くないかもしれない。




