第二百五十九話:下水の子どもたち
名前はイノセントのダークマテリアルズから取ってます。私はロード・ディアーチェが好き。
壁の様に見えたのはカモフラージュだったらしい。そこはホログラムの様になってて普通に通り抜けが出来た。という事はこの子の魔法とかで通路が作られてるわけでは無いということ。
「ご主人様、魔法の反応はない」
どうやらアスカは魔法を感知できなかった様子。という事はこれは魔法では無いということだ。一体どういう仕組みだろうか。
「着いたぜ」
連れられて行った場所は少し開けたスペース。確かに下水の中なのだが、広場の様になっていた。こんな場所、下水には必要無いよね?
「ここは?」
「知らねえ。元からあった場所だ」
どうやらたまたま見つけたらしい。斜めにではあるが上から陽が差している。という事は外と繋がってるという事だ。雨とかどうすんのかと思ったらなんか入り込まないらしい。そういう作りになってるのかも。
「キリエ、なんだよそいつら」
「毛布くれたやつらだ」
「あー、あの暖かいやつ」
「すっげーじゃん。あんなの初めてだろ。孤児院居た時も無かったし」
「あ、バカ!」
おや、どうやら孤児院に居た子達らしい。キリエを入れて全部で五人。でも思ってもみなかった所から情報出て来た。どうやらキリエ程には用心深くないらしい。
「まだ敵じゃないかもわかんねえんだから口滑らすなよ」
「でもキリエが連れて来たって事は敵じゃないんでしょ?」
「そりゃあまあ、そうなんだろうけど」
どうやらキリエの敵愾心はかなり薄れてる様子。これはアリスが捕まえようとしたのを晶龍が躊躇ったからかな?
「ええと、とりあえずぼくから自己紹介しようか。ぼくは護。しがない一般人だよ」
「私はアリス。主様の伴侶でボディガード」
「アインと申します。ご主人様の身の回りの世話をさせていただいてます」
「アスカだ。ご主人様のボディガード」
「しょうりゅうだ。ええと、ぼうけんしゃだ」
どうやら五龍の一柱たる青龍の一子みたいなのは名乗らないらしい。まあ言っても通じないんだろうけど。
「さっき言ったけどキリエだ。こいつらの代表みたいな事やってる。一応一番年上だからな」
「シュティンです」
「レヴィア」
「ディーです」
「ユーリだ」
名前だけは教えて貰えた。キリエよりも背が高く目付きの鋭い男の子がシュティン。でもキリエより年下なのか。無口っぽいおかっぱ頭の少女がレヴィア。クールな雰囲気はある。口を滑らせた男の子がディー。チビなお調子者という感じだ。こっちを警戒してるのか毛布の後ろに隠れてる男の子がユーリ。男の子三人、女の子二人という割とバランスのいい組み合わせ。
「それで君たちはここで何をしてるの?」
「それ、答える必要あんのか?」
「ええと、答えてくれたら食べ物を出すよ」
「マジか!?」
「おい、ディー!」
一番釣れそうなのはディーだろう。それを分かってるのかキリエたちも注意する。だから個別に狙うなら一番ガードの硬そうなユーリなんじゃないだろうか。
「ユーリだったかな?」
「な、なんだよ?」
「その毛布は気持ちいいかい?」
「は? え? あ、ああ。びっくりするくらい気持ちいい。どっかの貴族が使ってるみたいなやつだと思ったよ。貴族の屋敷とか行ったことないから知らないけど」
どうやら質問があまりにも見当違いの方向から来たから思わず答えてしまったようだ。まあ毛布の感想なんて求められないだろうからなあ。孤児院で育ったともなれば与えられたものに贅沢は言えなかっただろう。
「孤児院にいた時はそんな毛布無かったのか?」
「ある訳ねえじゃん。こんなのよりもっと薄い毛布も一人一枚なかったんだ。みんなで身を寄せあって過ごしたよ」
「今もその時と同じ様に過ごしてるのかい?」
「そりゃあまあここも寒くなったらみんなで身を寄せ合うしかねえだろ。まだ本格的に寒くなってねえからわかんねえけど」
なるほど。という事はここに来てまだ日が浅いということか。少なくとも一年は経ってないらしい。寒くなるのはこれからだからね。
「寒くなってもまだここに居るつもりかい?」
「わかんねえよ。追っ手が居なくなるまでは隠れといた方がいいってキリエが」
「ユーリ!」
「あ、しまった! ちくしょう」
どうやら口を滑らした事を後悔したようだ。追っ手が居なくなるまで。という事はやはりこの子達は孤児院をある事情で抜け出して逃げたんだろう。その事情が分かれば解決出来るかもしれない。
「君たちがどんな事情を抱えてるのかは分からない。でもまあとりあえずはなんか食べてからにしようか。アイン、頼むよ」
「かしこまりました。ではテーブルをお出ししますね」
ダイニングルームに置かれてる様な縦長のテーブルが置かれて、テーブルクロスが設置され、その上に料理が置かれた。フォークとかは武器になるから手掴みで食べられるサンドイッチだ。




