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第二百五十一話:幽霊屋敷にようこそ

パペットなので霊的なものを感じられません。まあそういうこと。

「まあまあ博士、ええと、こちらの物件は内見は出来ますか?」


 不動産なら実際に物件を見学する内見が出来るはずだと思って聞いてみた。


「なんですかな、それは? この家はきちんと売りに出した貴族様のお墨付きですぞ」

「いや、貴族街じゃなくて郊外にあるってのがちょっと引っかかるんだよね。どういう建物なの?」

「その貴族様の趣味に使われた建物ですな」


 趣味ねえ。郊外でないと出来ない趣味というのもなんか怪しい。ともかく案内してもらおう。


「ちっ、わかりましたよ。あーあ、高く売りつけられると思ったんだがなあ」


 態度を豹変させる不動産屋。先程までのにこやかだった彼はどこに行ったのやら。悪態をつく様など小悪党のそれだ。


「こっちだよ」


 不動産屋は歩き出した。ぼくらもそれについて行く。郊外までそこそこ歩くのだが、馬車を使う程の距離でもない。


「ここだ」


 案内された先にあったのは確かに貴族の邸宅という感じの建物だった。ただ、ミル博士の様子がおかしかった。


「な、なんだか寒気がするんだけど?」


 寒気? ぼくは全く感じない。ええと、もしかしてこれはぼくが本体じゃないから?


「私も何も感じません、ご主人様」


 どうやらパペットたちも感じないらしい。


「うひゃあ、こりゃあやっかいなのがすみついてんなあ」


 どうやら晶龍は感じるというか何が居るのか分かるらしい。


「あん? こんだけしょうきふりまいてんのになんもかんじねえの? あんなあ、これ、いわゆるあくりょうってやつだぜ。よっぽどこのいえにうらみがあんだろうな」


 瘴気ときたか。ううん、お化けねえ。正直あまり得意では無いんだけど。いや、赤と白の傘な企業のゾンビとは何度も戦ったけど。


「いやあ、面白そうだ。この家買うなら安くしてくれるんだろう?」

「そりゃあまあな。正直持ってるだけで持て余してんだ。引き取ってくれるなら安くしとくぜ」

「タダにはしてくれないのか?」

「馬鹿言え、仕入れた時の値段だってあんだよ。ある程度の損は覚悟してるがまるっきりってのはダメだ。それなら放置すれば良い話だからな」


 どこまでも商売人ということなんだろうか。


「よし、わかった。じゃあこの館を私が買い取ろう。このくらいでどうかね?」

「は? いやいやさすがに安すぎねえか? この線からは譲れねえよ」

「むむう、ならばそれでいいよ」


 案外あっさりとカタはついたみたいだ。まあ不動産屋はまだふっかけてるような気もするんだが、ミル博士の方に値切ろうという気が無さそうなので何も言わない。ぼくらは部外者だからね。


「じゃあこれがここの館の鍵だ。あとは自由にやってくれ」

「そうかい? じゃあ好きにやらせてもらうとするよ」


 そういうと不動産屋はそのまま帰って行った。お金は商業ギルドで払ってもらうような書き付けで払ったらしい。そんなもんがあるんだ。小切手みたいなものかな?


「さて、じゃあ除霊といこうか」

「ぼくらも付き合わされるんですかね?」

「乗りかかった船というやつだろう。旅は道連れともいうじゃないか」


 まあそのままにしておくのも気持ち悪いし、何より晶龍の依頼だからね。晶龍がやるかどうかなんだけど。


「おれはかまわねえぞ。こんなやつにまけるわけねえしな!」


 どうやら晶龍はやる気みたいだ。まあ掃除するより悪霊退治の方が性にあってるんだろう。


「いざいかん、悪霊の館へ!」


 ミル博士が鍵を玄関のドアに差し込み扉を開こうとする。バタン、と音がして扉が全開になったかと思うと全員を中に引き入れて扉が閉まる。


「なんだ? じどうてきにしまったぞ?」


 まさか自動ドア? なんてそんな事は無いだろう。いや、ボス部屋みたいな感じ? ほら、中のやつを倒さないと外に出れないとかそういう奴。


「うわっ、なんか聞こえるぞ」

「なんだよこりゃあ?」


 ミル博士と晶龍には何かが聞こえてるらしい。ぼくらには何も聞こえてない。これは困った。このボディだと霊的なものには対処出来ないのかもしれない。生身に戻る? いや、悪霊とかいるんだろ? それなりに危ないところだし、パペットたちが役に立ちそうにないんだけど。


「ぐっ、うううううううう」

「ちょっと、これは、キツいねえ」


 晶龍が苦しそうに呻いている。ミル博士も割と苦しそうだ。ぼくらはなんともない。これは悪霊が何かやってるのか?


「こんな、もん、きかねえ!」


 晶龍が弾けるように手を広げた。きっと何かに抵抗したんだろう。拘束からの解放みたいな。


「そこをうごくなよ!」


 晶龍の拳が光って唸る!いや、唸ってはいないんだけど光ってる。そのまま何も無い空間に殴り掛かる。いや、何も無いんじゃなくてぼくらが認識出来ないだけなんだろうけど。このままだと見えなくてあまり面白くないなあ。

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