第二百五十話:お引越ししましょう
片付かないからもっと広いところに住んでってのは余程物が溢れてる場合だと思うのです。
と言ってもぼく本体だからコミュニケーション取れないからアスカ頼む。
「むう。博士、このままだと片付かない。捨てていいものをいけないものをまず分けるべき」
「捨てていいものなんて私の研究にあるものか!」
「それだと片付かない。それならこれで依頼は終わり」
「いやいや、待ってくれ。研究室を片付けてもらわないと研究に取り掛かれ無いんだよ」
「なら捨てて片付ける」
「いや、片付けるのはお願いだけど捨てないで!」
しかしどう見てもものが過剰に置かれてるんだよなあ。これは片付けるの一苦労だぞ。一時的にどこかに保管したいところなんだが。
粉末、書類、液体、なんかよくわかない塊などなど、保管方法も取り扱い方法も分からないものなんて手の出しようがないんだよね。
そしてここには浮遊する爆発物である爆発の精霊ボムがいる。一触即発というのはまさにこの事だ。だいたいポカして爆発オチというのがパターンだろう。そうはいくか!
「晶龍は爆発の精霊を監視する。そして私たちでこの研究室の物をストレージに仕舞う」
「はい、わかりました!」
こいつ、アスカの言う事にもちゃんと従うんだな。強さで平伏してんのかな? そういう面で言えばぼくなんて底辺なんだけど。ぼくがストレージに仕舞うのを見てミル博士が慌てる。
「うわー、やめてくれ! それは大事な研究資料なんだよ」
「保管してます」
「なんだって!? でもそんなことしてものがまざったりとかは」
「大丈夫、分けてる」
「なんだか随分と便利なアイテムボックスじゃないか。一度研究させてくれないか?」
ミル博士の目がキランと光ったと思うとジリジリとこっちに詰めてきた。いやいや、怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
「むう。博士は休んでて欲しい。そして邪魔をしないで」
「邪魔とまで言われてしまうとね。この場は大人しく引き下がるとしよう」
やれやれアスカのお陰で助かった。サムズアップしてるな。なんかを要求してる様だがあまりホイホイ与えるのもなあ。まあ晩御飯の時にマヨネーズを多めに用意してやるか。
あらかた綺麗に片付いた。というか物が無くなれば綺麗にはなる。あとは掃き掃除、拭き掃除だ。これは晶龍に任せた。アイン仕込みのワザマエを見せてもらうとしよう。
待ってるとアインも上がって来た。ここに来るまでの間の掃除も終わらせたそうだ。いや、早いな。というかこのままだとぼくがストレージに仕舞った物の行き場が無いんだよね。どこかに保管したいところなんだけど。
片付かないのはスペースに対して物が圧倒的に多いからなんだよね。という事は空間を広げればいいんだよなあ。でもどうやって? ここがぼくの家ならなんとでもなったかもしれないけど。
「あの、博士、家、必要」
「え? なんだい? 家はここにあるけど?」
どうしよう、上手く伝わらない。どこかに倉庫でも借りないと収納スペースが無いと伝えたいんだけど。ぼくが分身体ならまだ何とか説明出来たかもしれないのに。
「ここは私に任せてください。ミル博士、現在あるものを収納するにはスペースが足りないのでどこか別の場所に倉庫なり借りる必要があります」
「なんだって? うーん、そんな事言われても余分な金も無いしね。広くてスペースがあってなんも無い空間なんてそうそうある訳が」
それって街中だからなのでは? 街中でなければ、いっその事森にでも住めば良いのでは無いだろうか? いや、でもあの森はそんなに簡単に住める場所でもないか。森でなくても郊外とかに引っ越せばどうだろうか。
「では引っ越しを考えられては?」
「引っ越しねえ。それなら何か物件を見つけるところからかな。何かいい物件があれば引っ越したいところだよ」
どうやら引っ越すのに躊躇いはないらしい。となればあとは物件を見つけるだけなんだが。こういうのは不動産屋? まあとにかくぼくらが居た方が引っ越しも楽だろうし。乗りかかった船だと思って引っ越しまで面倒見よう。
ところでそろそろぼくは家に帰りたいんだけどいいよね? もう精霊とも話さないだろうし。ぼくはこっそりと扉を開いて元に戻って分身体と入れ替わった。
あとはものを並べるだけになったのでミル博士と一緒に不動産屋に向かう。ここまでしてやる必要は無いんだろうけど、片付かないのは仕方ないよね。
「いらっしゃいませ、ようこそ」
不動産屋さんはなんだかにこやかなな人だった。
「どの様な物件をお探しで?」
「街中でなくて良いので大きめの物件を頼むよ」
「大きめですか? それでしたら貴族様の別荘に建てられたこちらでもよろしいですか?」
「おお。こりゃあ良い」
「よろしいようですので早速お引渡しを」
ん? なんか契約を急いでる様な気がする。もしかしてこの物件って訳ありだったりするのか?




