第二百四十九話:交渉事は苦手です。
精霊とは目が合わない、というか人間形態じゃないからコミュニケーション取れるというお話。
「【入城】」
ぼくは本体と分身体の位置を入れ替えた。おまけでフォルテもついてくるんだけど。
「話してみる」
「お、おう?」
と言っても精霊の言葉ってどう発音していいやら分からないんだけど。どうしようかなあ。
『なんだお前?』
『あ、こんにちは。ぼくの言葉分かりますか?』
『あ? まあな。それにしてもこんなとこに呼び出しといて何の用だよ』
『あー、呼び出したのはぼくじゃないんですけど』
『知らねえよ、オレに仕事させろ』
『仕事がしたいの?』
『そうだよ。じゃねえと意味がねえだろ?』
どうやら呼び出されたのに仕事させて貰えないのが嫌だったらしい。精霊って働き者なのかな?
『仕事って具体的には?』
『はあ? オレは爆発の精霊だぞ? 爆破する事に決まってんだろ』
つまり爆発する為だけに呼び出されたってこと? いや、確か冷蔵庫作るとか言ってたよね。となると間違えて呼び出された訳だ。
『いや、そのね、君を呼び出したのが手違いだったみたいなんだよね』
『はあ? 爆破するもんがねえってことかよ? それじゃあ呼び出され損じゃねえか!』
『いやいや、その相談なんだけど、本来呼び出すはずだった精霊を呼んできて貰うとか出来ない?』
『はあ? ならお前は「役に立たないから他の奴と代われ」って言われてはいそうですかって納得出来んのかよ!』
ぼくなら「そうですか、それじゃあ」って代わってもらうんだけどそういうこと言う雰囲気でもないよなあ。
「あの、この子に仕事、ない?」
「んあ? 爆発する様な仕事? いや、無いことは無いけど少し時間がかかるんだよね」
「どれくらい?」
「半年ぐらいかな。冷蔵庫の次くらいに作るつもりだった物が爆発使うと思うし」
何を作るのかまでは聞かなくていいかな。しかし半年後かあ。だいぶ先の話だな。
『あのさ、半年ぐらい後にあるらしいんだけど』
『なんだ、あるんじゃねえか。なら待たせてもらってもいいぜ』
『えっ、いいの? 半年後だよ?』
『人間の尺度で言う半年だろ? すぐじゃねえか』
どうやら精霊にとっての半年というのは大した待ち時間では無いらしい。悠久の時を生きてるのかな。
『で、それまでの時間で氷の精霊に用があるらしいんだけど、呼んでもらう訳には』
『いやなあ、相性悪ぃから呼んでも来ねえだろうし、何より来たらオレと喧嘩になるぜ?』
おおう、その可能性は考えてなかった。そうか。精霊の相性ってものがあるのか。それだと呼んでも仕方ないのかも。
「どうだった?」
「呼べない。喧嘩なる」
「そうかあ。それは仕方ないなあ。ところでなんでそんな喋り方になったんだい? それに目も合わせないようにしてるみたいだし」
「あ、あ、あ、えと、その」
ひい、見られてる、注目されてる! いやいやいやいや、こっち見ないで欲しい。大声を上げたりしないけど。頼む、誰か、誰か。
「ご主人様、呼吸を整える。ひっひっふー」
ラマーズ法かよ! 最近では別の方法もあるらしいけど妊婦になった事はないし、これからも縁がなさそうだから知らない。
「爆発の精霊、優先。それが丸い」
「丸い? 確かに爆発の精霊は丸いけど、どういう事だい?」
「丸い、というのはご主人様の言葉で角が立たない、安定しているという事。安定行動。推奨」
「なるほど、それは面白い表現だ。なるほど。確かに先に呼び出した彼を使うのが「丸い」んだろうな」
ミル博士はウンウンと頷きながら爆発の精霊を見た。何かを考えている様だ。
「よし、じゃあ冷蔵保管ボックスよりも先に爆発の精霊君を使った発明を考えようじゃないか」
どうやらやる気になった様である。
『ええと、氷の精霊よりも君の方を優先して仕事してもらうことにするってさ』
『そうかい? そりゃあ嬉しいね。まあのんびり待ってるがこれでも短気なんだよ。出来たら三年以内に頼むぜ』
三年以内というのは短気なんだろうか? いや、精霊の尺度なんだから考えるだけ無駄かな。
『じゃあこの部屋片付けるからその間大人しくしてて欲しい』
『おう、いいぜ。まあ浮かんでるだけだがな』
話は着いたので片付けに移る。と言っても研究室の片付けというのはかなり気を使う。触っていいものといけないものが分かりづらいのだ。だからミル博士の監督の元行われるんだが……
「あー、ダメダメ、それは触らないで」
「なんでだよ、どうみてもゴミだろ?」
「それはほら、いずれ使うかもしれないんだよ」
「さっきもこわれたガラクタにそんなこといってたろ?」
「あれは部品を取るんだ。だから捨てないで欲しいって言ったんじゃないか」
傍で聞いてると片付けられない人にありがちな「いずれ使う」病みたいな感じだな。これは片付かないよね。晶龍は荷物もってあっち行ったりこっち行ったり翻弄されてる。何とかしないとなあ。




