第二百三十八話:ギルドとのお話し合い
暴れて終わりではなくて、責任が伴うのです。
「た、頼む、オレが悪かった。もう、もう許してぐべぁ!?」
足元で縋りついてくる今までの対戦相手のボロ雑巾を蹴飛ばして、こっちに向き直った。どうやらそこまで時間かからずに終わったらしい。まあそれはそれでいい事か。
「オラ、かかってこいよ!」
禍々しいというか猛猛しい気を吐いて晶龍が吠える。本当にブチ切れてんだな。ぼくらが分からないか。
「おいおいぼくらが分からないか?」
「しるかよ、ぼけぇ!」
バッと黒い影が宙を舞った。黒い影はそのまま人の形を形作り、晶龍をねじ伏せた。えーと、とりあえずアリスが晶龍を取りおさえたって事でいいのかな?
「てめぇ」
「主様に仇なすのはゆるしません! それにミラちゃんは無事ですよ」
それを聞いた途端に膨れ上がっていた気が弾けるように消えた。晶龍はすやすや眠っている。こうして見たら無邪気なもんだよ。
「何の騒ぎだ?」
二階からずんぐりした男がおりてきた。冒険者ギルドのお偉いさんだろうか。
「キミ、何があったのか教えてくれんかね?」
「は、はい、あの、ガンズさんがデリバリーカレーの子に絡み始めて、女の子を突き飛ばしたのですが、その、付き添いできたその子が暴れ始めてしまってこの通り」
「何!? またガンズか。やつは何度問題起こせば気が済むんだ。わかった。ガンズには冒険者資格停止して三ヶ月間の鉱山労働だ」
どうやらガンズという男らしい。こいつはかなりな問題児だった様だ。まあ「児」と言っていい年齢かというと思うところはあるが。
「で、そちらさんは? 見たところこの子どもの関係者のようだが」
「あ、初めまして。デリバリーカレーを営んでおります、護と申します」
「変わった名前だな。なるほど。この度は当ギルドメンバーがご迷惑をおかけした。私はこのギルドの監査をしているコラソンという」
ギルドの監査、とはちょっと聞いた事ない。よくよく聞いてみるとギルドマスターによる犯罪がこのところ増えてきたそうな。それで内規を質す為にギルド本部から監査が送られてきたらしい。
「まあギルドマスターの件だけでなく不埒な真似をする冒険者は多いからな。そいつらの粛清という一面もあるのだがね。だからこの度の事件は渡りに船、なのだが」
なのだが? このまま普通に終わらせてくれてもいいのよ?
「そこの小僧が暴れまくってくれたおかげで色々壊れしまってね。修繕が必要なのだよ」
それを言ってしまえば喧嘩両成敗なんだからガンズにも請求しろと言いたいところなんだが、鉱山労働で賄うしかないらしい。全く、金も持ってなかったのか。いや、金を持ってないからカレーを奪おうとしたのだろう。貧すれば鈍するとはこの事だ。元から鈍していたのかは分からないけど。
「だからそこの小僧にも払ってもらわなきゃいかんのだが、代わりに払ってくれるかね?」
こういう場合、使用者責任としてぼくが払うのがスジなのかもしれない。というかミラちゃんたち店の従業員がやった事なら間違いなくはらうだろう。
でも、晶龍は修行で来た身だ。ここでぼくが払うことにしてしまうと本人のためにもならない。ちなみに街の商人は使用者責任を通す人もいるし、従業員の自己負担にする人もいるという。ケースバイケースだ。
「お断りします。責任はこの子が取るべきです」
「なっ!?」
「えっ?」
「ご、ご主人様、それは……」
晶龍、ミラちゃん、トーマスがびっくりしている。ぼくなら庇って払うとでも思っていたのだろうか。あれ、ミラちゃんが不安そうにしてる。
「私のせいなの! 私が払わなくちゃいけないの! でも、でも、お金なんて……」
今にも泣きそうになるミラちゃん。あー、誤解は解いておかなきゃな。
「あ、もちろんミラちゃんが悪いならその分はこっちが負担するよ。それはトーマスでも他の人でも同じ」
「えっ、じゃあなんで晶龍君は違うの!?」
「うーん、晶龍君のお父さんに頼まれてるから、かな」
「そうなのね。わかったの! ご主人様に見捨てられてなくて安心したの。ちゃんとお嫁さんになってあげるの!」
ニコニコしながらミラちゃんが言う。なんかコラソン氏の視線がちょっと痛い。ギルドの職員さんたちの視線も痛い。なんでだよ!
「おほん。個人の性愛に関してはあまり踏みこない方が良いと思うのだが、倫理に悖る行為はやめておいた方が良いと思うのだが」
「違います!」
「まあいい。それよりもこの子が暴れたのはどうされるおつもりで?」
「それは……この子が目覚めてからにして貰えますか。一応気を失っているので」
「そうだな。まあ外傷も無さそうだし、明日には回復しているだろう。明日の午後なら居るからその時に頼めるかね。ああ、せっかくだからあなたのところのデリバリーカレーとやらを食べてみたいな」
どうやら注文までしてくれるようだ。意外といい人かも。




