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第二百二十九話:よにはしゃはひとり

まあ野球拳のくだりは要らなかったかもしれませんが、二人の親睦を深めるためってことで。

「という訳で晶龍君です」

「話が全く見えませんが?」


 ヒルダさんは頭を抱えていた。確かに仕事を持って帰ってしまったけど、それは不可抗力であって、ぼくらのせいじゃない。


「よい、皆まで言わずとも分かっておる!」


 おお、さすが皇帝陛下!予め予測していたか何かで準備してたのか? それはさすがに用意周到過ぎるというものだが。


「これは何番目の隠し子だ? アリス殿に許可は取ったのか?」


 何番目も何もぼくには息子なんて居ない。比喩的な意味でのムスコならあるけど。で、アリス殿の許可は?って聞いたのは教えないと殺されそうになったりするかもだそうだ。


 まあこのまままたまたーとか言われておざなりになるのも嫌なのでちゃんと説明する。ビーチでのつまみ食いからの青龍討伐まで。


「青龍……確かあの辺の海の守護者だと聞いたが」

「そうですね。漁に行く者たちの間で崇められておりますね」


 帝国の国教としては真教だけど、土着の信仰もあるのでその辺は地域に任せているということなそうな。弾圧とかじゃなくて良かったね。あ、その際に生贄を捧げるような野蛮なやつは殲滅したそう。本当に殲滅出来てるのかは知らんが。


 あれからぼくらはそのままダイエットキャンプを続ける訳にもいかず、一時的に帝都まで戻ってきたという訳。当然本体はお家にステイ。このままダイエットはまた今度で。え? 今度は山登りにしよう? いや、登山とかもっと無理だから。


「どうだ、ちちうえはえらいんだ。あがめよ!」

「ここは我が帝国なるぞ。帝国では皇帝こそが至上。貴様の方こそ崇めるがよい!」

「むむむむむむむ」

「ぐぬぬぬぬぬぬ」


 青龍の一人息子と帝国の最高権力者が喧嘩してるんですが。しかもどっちも自分を崇めろって。崇めるのはそこまで難しくないとは思うけど、それはぼくが宗教意識の低い日本人だからだろう。頭だけ下げときゃいいやみたいな事にはならないのだ、絶対。


「では、我々はこちらで具体的な事をお話ししましょう。よろしいですか、蜃さん、でしたか」

「理性的な方がいらっしゃると助かりますなあ。ではこの老体で良ければ」


 ヒルダさんが蜃さんを引き連れて隣の部屋に行った。会談をする為の部屋だそうだ。謁見の間の隣にあるんですね。今は玉座に座るのはどっちかをジャンケンしている。どっちも負けるともう一回!が出るのでいつ終わるのかは分からない。きっと先に音を上げた方が負けだって民明書房の本に書いてあるはず。


 ぼくらはと言うと暇なのだ。ここにはぼく以外にはアカネしか連れて来て居ない。皇城内が安全そうというのもあるけど、パペットを連れて行くと騒がしくなりそうだから。アカネは隠れることが出来るからね。


 あ、歩美さんたちはダンジョンの経営があるから戻ってるんだそうな。新しい階層をどうするのか考え中らしい。いっそ街でも作っちゃう? それだと帝国と王国のどっちにつくかで揉めるか。


 しばらくして、ヒルダさんと蜃さんが戻ってきた。部屋から出て固く握手を交わしてる。あれは周りに見せつけるためだな。だいたい、皇帝陛下と晶龍はまだジャンケンしてるからね。どうせなら野球拳とかすればいいのに。


「ほほう、我が息子マモォールよ、野球拳とはなんだ?」


 ぼくは説明する。まあ元々の野球拳って脱ぐ様なお遊びではなかったらしいんだけど、一般的には脱がすのが広まってるからね。


「なるほど、脱がしていくのだな?」

「面白そうじゃねえか!」


 二人ともやる気だね。あ、ヒルダさん、そんな恨みがみしそうな目でこっち見ないでください。ヒルダさんは脱がなくてよさそうじゃないですか!


「皇帝陛下の裸を見せられるのは苦痛以外の何物でもありません」


 正直すまんかった。さて、それでも皇帝陛下も晶龍も止まらない。ジャンケンを野球拳にした。


「野球、すーるなら、こーゆーぐあいにしやしゃんせ」

「マモォールよ」

「え?」

「野球とはなんだ?」


 ここで野球を教えると面倒な事になるやつだ。知ってる知ってる。どこぞの村みたいに魔王とかがチーム作ったりするんだよな。


「……それは今関係ないです。掛け声みたいなものと思ってください」

「ふむう、なかなかに楽しそうな雰囲気がしたんだがなあ」


 陽キャの人には楽しめるスポーツなのかもしれないけど、陰キャにとっては選手がクラスで幅をきかせるし、応援に炎天下の中駆り出されるし、ボールぶつけられると痛いしで、ろくな思い出がない。


「では、続きを。アウト、セーフ」

「マモォールよ」

「今度はなんですか?」

「アウトやセーフとはなんだ?」

「それも掛け声みたいなものです」


 なかなか進まない。その後、野球拳は一進一退で気付けば皇帝陛下も晶龍もパンイチになってたので白熱した戦いだったと二人を称えておこう。


「よし、ではヒルダもやってみるのだ」

「お断りします。早く服を着て書類の決裁してください」

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