第二十一話:帝国の使者(雑談、帰郷)
森が大き過ぎるので各国が領土主張してますが魔物と動物が多過ぎて開拓できてないです罠。
帝国兵が部屋に入ると先に入ってた嵐の運び手の人たちがそちらを警戒しているのがわかった。なんでわかったかって? みんな武器に手をかけていたからだよ!
「皆様、武器をお納めください。ここはそういう場ではありません。もし、従っていただけなければ実力で排除致します」
「なんだと!? この帝国陸軍第三師団ゴンドール王国方面軍、第四大隊所属、第三十二小隊隊長たる、このメンドール・V・エンシュラウドをどこまで舐めれば!」
小隊長ってかなり下っ端ですよね? あ、でもVって事は貴族なのかな? 面倒ではあるがどうにもならんと言うほどでもない。
「アリス」
「わかった」
アインがアリスに合図をするとアリスはバットを素振りし始めた。いや、部屋の中でフルスイングすんなと言いたいが今は仕方あるまい。
「ひっ!?」
「隊長殿、ダメっすよ。ご飯恵んで貰わないといけないっすのに」
「スレッグ!」
「いや、やんないっすよ? そこの巨漢の相手だけでも精一杯っすのにそこの冒険者らしき奴ら加わったら確実に不利っすから」
「ぐぬぬ、貴様、帝国に戻ったら覚えておけよ!」
内輪揉めは帰ってからやってくんないかなあ? いやでも帝国の情報は取らないとなんだっけ。面倒だからアヤさんだっけ? 彼女だけで良いじゃん。
「出来ました。運びますので座ってください」
ここのテーブルは何故か人が沢山来ても良いような作りをしていた。引きこもりは客を呼ばないから要らないって言ったんだけど。そしたらアインが勝手に作って置いてた。メイド、そんな事も出来るんやなあ。
「特製ビーフシチューです。召し上がれ」
「いただきます」
「うわっ、何これ!? 味が濃厚でこの世のものとは思えない!」
「こ、こんなの食べた事ない.......」
「ヤバいっす、ウマいっす、止まらないっす!」
「相変わらず美味い」
「カレーも美味しかったけどこれも美味しい!」
みんなが夢中で食べている。そしたらドアがノックされた。
「ご主人様、ビーフシチューをお持ちしました」
「みんな美味しそうに食べてるから楽しみだよ」
「ご主人様の為に作りましたから!」
「ありがとね。帝国の情報は欲しいけど無理して聞き出さなくても良いよ?」
あった方がいいと思うけど、どの道引きこもるだけだしなあ。別に無けりゃ無いで関わらなければ済む。
「分かりました。では」
そう言ってアインが階下に降りていった。
「どこ行ってたんですか?」
「ご主人様のところに食事を届けに」
「何!? この邸宅の主人は私が来てやっているのに顔を出して挨拶も出来んのか!?」
憤慨するメンドール。いや、そんな事言われても人前に出たくないし、特にこいつのような傍若無人なバカとは交流しても何の得もない。アヤさんも女性だから無理だし、強いて言うならスレッグさんだっけ?
「かくなる上は俺が直々に引っ張り出してやる!」
「ご主人様に危害を加えるというのであれば私どもは容赦致しません。森の中に放置します」
「.......ま、まあ、ご主人にも都合はあろう」
どうやら治まってくれた様だ。全く冗談じゃない。
「それでオークの話なのですが」
「それなら俺たちから説明しよう」
リックさんが自己紹介をしながらオークの件の顛末を帝国兵に説明していた。
「ふむ、それなら大規模侵攻はなさそう.......でもないですよ!? それって王国方面には行かないって話じゃないですか! 帝国方面に来ないって保証は」
「いや、だからな? オークの侵攻は子種を求めてのものだからしばらくは侵攻の必要がねえんだ。むしろこれから子を産むために魔物を狩って餌を蓄えるだろうよ」
「そう言われたら.......確かに」
アヤさんが一頻り騒いだ後で落ち着いた。スレッグさんは全く騒いでない。わかってたのか何も思ってないのか。
「ふう。世話になった。そういう事ならそれを帝国に報告せねばならん。一応あなた方の名前を聞いておこうか」
「冒険者パーティ、嵐の運び手の
リーダー、リックだ」
「同じくトム」
「エルと言います」
「リンよ」
それぞれの自己紹介が今更ながらにされてそのまま解散となった。
「そらからさすがにここの事も帝国に報告させていただきます。ここはあまりにも不可解過ぎる。帝国の領土内にこの様なものがあるのは見過ごせません」
おい、フォルテ。こいつらもここが自分たちのものの様に言っとるぞ?
「この森は周りの国が全部自分の領土だと自称してるんですよ」
面倒過ぎる! てことは帝国の使者とかまた来たりするんだろうか?
「まあ、確実に。軍隊送ってくるまでは無いと思いますけど」
「どう考えても厄介事にしかならねえんだよなあ!」
帰っていく帝国兵達を見て途方に暮れていた。




