第二百五話:この世を統べる(自称)龍の一角
そもそも統べてるのは女神様なので勝手に言ってるだけなんですよね。
『何用だ、人の子よ』
わっ、喋った!
『貴様ら人間如きの言葉を操るなぞ造作もない。まあ思念を飛ばしているのだから言語など関係ないのだがな』
なかなかおちゃめさんの様である。
『おちゃめとはどういう意味だ? 別にユーモラスに言った訳ではないぞ?』
おお、なんかぼくの思った事が自動的に理解されてる? もしかして、このデカいトカゲの特殊能力?
『誰がデカいトカゲだ! 我は赤龍。この世を統べる五龍の一角よ』
赤龍……足に七十二個のホクロでもあるの? よく考えるとそんなにホクロあったら気持ち悪いよね。あ、どうでもいいか。
『ホクロがあるかどうかは知らん。して、貴様らは我が住処に何の用なのだ?』
いえいえ、別にその、単に散歩してたら来ただけで。
『ここに来るまでに様々な魔獣が点在していたはずなのだが』
散歩の邪魔なので排除してもらいました。
『ほほう? それはなかなかに強者なのだな。どれ、この我が貴様らの実力を見てやろう』
いえいえそんな。暴力はよくありません。話し合いで物事は解決できると思うんですよ。
『力無き者の言葉にどれほどの価値がある? 己が意見を通したければ力を示すが良い!』
赤龍は野太い咆哮をあげる。うわっ、これ、動けない。麻痺咆哮ってやつか?
『馬鹿め。その様な小細工では無い。単なる恐怖で身がすくんでいるだけであろう。やれやれ期待した分落胆してしまうな。せめて味だけはマシであるといいのだが』
は? いや、もしかしてパクパクですか? オマエオレサママルカジリですか? やばい、このまま逃げたい。でも身体が動かない。
『そっちの柔らかそうな女も直ぐに食ってやるから心配するでない』
「っざけんじゃねえぞ、ゴルァ!」
「ぶほぉ!?」
レッドメットが赤龍の横面をひっぱたいた。あ、動ける様になった。
「てめぇ、ご主人様を食うだと? もういっぺん言ってみろや!」
あれ? レッドメットも念話聞こえてたの? もしかしたら全員に話し掛けてた? それにしてはうちのパペットたちは何にも反応してない……ん? もしかしてパペットだと生き物には分類されないから? 脳じゃなくて回路だから接続が上手くいってない?
「主様、あのクソ熊が言った事って本当? あのトカゲ、主様を食べようとしたの?」
アリスの声のトーンがいつもより低くなってる。まあ答えはイエスなんだけど。
「おい、そこのトカゲ。主様に何しようとしてるんだ、この野郎!」
「ぶべらっ!?」
アリスが飛び上がって上から赤龍に拳を叩きつけた。跳んだだけではあの威力は……あ、重力操作か。
「アリス、お前だけでやるのはズルいと思わんか? 俺らにもやらせてくれ」
アリスの後ろからセイバートゥースが。その後ろには順番待ちの様にエイクスとアルタイルが居る。
『ぐっ、な、なんなのだ、今の衝撃は!? 尋常の威力ではなかったぞ!? 我で無ければ死んでいたでは無いか!』
赤龍は翼を広げた。逃げるつもりなのだろうか。
「逃がさない。〈牢獄空間〉」
アスカが魔法で飛び上がれなくする。
『なっ!?』
「重ねて唱う。天蓋の守り、雷鳴の縛り、間隙を縫い、縛り、留めて、一切を封じろ! 光輝雷獄!」
続いて詠唱が終わると共に、無数の稲光が槍の様に次々と赤龍に突き刺さる。これは、六杖光……それ以上はいけない。
「まあまあご主人様も歩美様も安心してご覧になっていてください。ちょうどティーパーティの準備が整いましたので」
「アイン、ぼくらダイエット中なんだけど」
「紅茶はノンシュガーですし、お菓子などありませんので。あ、おせんべいはありますよ」
せんべいがあるなら緑茶の方がいいんだけど。
「ご主人様、早く早くぅ」
「ピーター、待って、待って」
どうやら歩美さんとピーター君はお茶会に賛成らしい。アンヌは赤龍を観察中。アミタは剥げ落ちた赤龍の鱗らしきものを解析してるみたい。なんか興奮してる。アカネは赤龍に時々攻撃しているみたい。
まあ、ぼくがやることも無いので座ってお茶にする。うん、砂糖なしでも紅茶はなかなか美味しいものだ。ぼくが淹れるとティーバッグの紅茶でも渋くなっちゃうからなあ。まあぼくが淹れるのは名○のレモンティーのやつなんだけど。粉入れてお湯注ぐやつ。たまにアップルティーも飲むよ。ストレートティーは午○の紅茶。
ゆっくりお茶を楽しんでる向こうで赤龍は凄惨なことになっているかわりばんこに赤龍を殴ったり蹴ったりしながら何とか逃れようとしている赤龍はアスカの魔法で拘束中。引きちぎろうと、魔法を解除しようと思ってるのかもしれないが、みんなが殴るので集中出来てないみたい。
そんなこんなが二時間くらい続いて、赤龍は身動きひとつ取れなくなっていた。
『もう、もう、やめてくれ、我が、我が悪かった、だから、もう、やめてくれぇ!』
悲痛な叫びが届いたのでぼくは歩美さんと顔を見合せて制止命令を出した。やれやれ、戦後処理か。




