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第二話:とりあえずチートを付与しよう

異世界に行くところまで。

「で? つかわなかったんだろ? ぼくは死んじゃったんだし、今更言われてもどうしようもないじゃないか」

「それがその、この幸運の量というのは多少の誤差なら構わないんですが、二桁となるとですね、その、報告書と始末書を書く上に下手すると罰則までついてくるアンハッピーセットな感じになってまして」

「つまり、バレるとヤバいから隠蔽したい、と?」

「ちょっとその言い方は……」

「間違ってる?」

「……あっております」


 なんというかこいつ神様として大丈夫なのか? いや、でも、ぼくも始末書は大分書かされたなあ。なんなら反省文も。目標未達ですいませんって。


「わかるよ、その気持ち」


 ぼくは彼女の肩にポンと手を置いて言った。


「じゃあ!」

「でもどうしようもなくない? ぼく死んでるんだし」

「ですから、これからは相談なんですが……異世界に興味はありませんか?」

「いや、ないけど」

「そうでしょうそうでしょう。やっぱり異世界に興味が……ないんですか!?」


 なんでそんなに驚いてるんだろうか? 異世界に興味……確かに最近は異世界ものの漫画や小説が増えてていくつも読んだりしてたけど、そこまで好きってほどでもないんだよね。だってエアコンもウォシュレットもネットスーパーだって予め与えられるか、自分で作らなきゃ無いんだよ?


「ほら、魔法使ったり、モンスター倒したり、ダンジョン経営したり、ハーレムでウハウハしたりしたいとか……」

「魔法はなんか原理がわからんと怖いし、モンスターとか見たくもないし、ダンジョンはなんかジメジメしてそうだし、ハーレムは気になるけど三次元(リアル)の女怖いんだよね」

「私とは普通に話してるのに……」

「そりゃ負い目があるのはそっちだから」

「そんなあ……」


 フォルトゥーナは涙目になっている。神様も泣くんだなとか思って改めて見てるとどうにも可哀想になって来た。ここでこいつを見捨てたらぼくを助けてくれなかった会社のクズどもと同じになってしまう気がした。


「でもまあ、どうしてもって言うなら行ってもいいよ、異世界」

「ほ、本当ですか!?」


 涙でぐちゃぐちゃの顔を上げてフォルトゥーナは喜んだ。鼻水は出ないんだろうか。


「ああ、でも異世界に行っても大したことは出来ないと思うけど」

「いいんですいいんです。異世界ものの転移して能力を付与するだけですから」

「能力の付与?」


 なるほど。いわゆるチート能力というやつだろう。異世界を生き抜くのに必須だ。


「じゃあまずは戦闘系技能ですね。剣聖と大賢者とどちらに……」

「戦闘したくないからどっちも要らない」

「ええー……で、では、ものづくりですかね? 錬金術とアイテムクラフトと……」

「いや、作るのもめんどくさいから要らない」

「あ、あれですか? 精霊使いとかパペットマスターとかビーストテイマーとかの使役系……」

「他人と関わりたくないから要らない」


 沈黙が辺りを支配した。


「じゃあ、じゃあ、異世界でどうやって生きていくつもりなんですか!?」

「生まれ変わった直後に死んでもいいよ? 痛くないなら」

「そんな事したら監査が入って一発アウトで神としての座から引きずり下ろされちゃうじゃないですか!」

「なんだよ、めんどくさいなあ。あー、なら、異世界で動かなくていいスキルが欲しいなあ」

「動かなくていい? それはどういう……」

「名付けて「引きこもり」スキルってのはどうかな?」


 またも沈黙。


「……意味がわからないんですけど」

「だからね、異世界に行っても生きていける気しないからセーフティハウスみたいなのが欲しいなと」

「二桁ありますから割と無茶な能力でも出来ますけど……」

「じゃあどっかの人が来そうにないところにそういうの作りたいんだけど」

「人が来そうにないって……」

「人間は信用ならないから」

「……分かりました。じゃあ能力を自作という事で。私じゃ分からないのでどういう能力にするかはポイント消費しながら決めてください」


 それからぼくはしばらく能力と格闘した。それでも少し余ったのでストレージと言語理解を手に入れた。


「えーと、それではあなたの能力はストレージ、言語理解、引きこもりという事で……本当にこれでいいんですか?」

「ええ、お世話になりました」

「あの、教会とかで私の名を呼んで祈れば交信出来ると思いますので」

「教会なんて人里にあるじゃないですか。行きませんよ」

「デスヨネー」


 それからフォルトゥーナさんに別れを告げて目の前に現れた扉をくぐった。その先には辺り一面のジャングルがあった。確かにこれは異世界かもしれない。そして、そのジャングルの中に佇むぼくの自宅。異世界生活の始まりである。


「さて、これだけジャングルの中なら人が来ることも無いよね?」


 ぼくは独り言を言いながら家の中に入ったのだった。

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