第百九十九話:ダイエット計画、始動!
ぼくもダイエットした方が良いんですけどね……
「私がやりました」
アリスが神妙そうに土下座をした。やらかしたのは分かるが何をやらかしたんだ?
「主様の背中をこそげ落としました!」
え? つ、つまり、ぼくの背中の肉をタオルで力いっぱい擦ったら皮膚どころか肉まで剥けて血がドバドバ出たんだってことか?
「出血に関してはこの家のエマージェンシーモードが発動してすぐさま補給されましたし、私のところにも連絡きたのですぐさま応急処置は致しました」
応急処置というのはぼくの身体を運んで培養器にぶち込んだことだろうか。まあアンヌが居たのならそれなりの事はしてくれたんだろう。それにしては……お腹まわりとか全然変わってない様な。
「チーフの肉体はその血のひとしずくですらこぼしておりません。削げた肉も戻りました」
あー、うん、でもお肉というか脂肪は別に戻さなくて良かったのよ?
家に帰って一週間くらいのんびりしていると、アヤさんが戻ってきたらしい。とりあえず皇帝陛下に報告してお休みを貰ったとか何とかなんだろう。
「それで、アヤさん?」
「お腹空いたんでなんかください」
いや、図々しいな! 最近はアインが献立考えて作ってくれるからそこまで暴飲暴食してないなあ。だからメニューも一汁三菜みたいなバランス取れたやつ。ぼくもカップ麺食べたいのに。どうだ、アヤさんには物足りないだろう?
「この焼きジャケって塩気がよく効いてて美味しいですね!」
既に食われていた。というか満足してる様だ。いやあ、なんというか喜んで食べるもんだな。さて、ぼくの分のご飯はあげちゃったから仕方なくぼくは泣く泣くカップ麺を食べよう。
「ご主人様、きちんとご主人様の分は別にしてありますので後で部屋までお運びします」
「突然来客したのにアヤさんの分があったの?」
「アヤさんはいつでも突然ですから」
どうやらそういうものと思われてるらしい。
「うーん、やっぱりアインさんに頼むのが一番手っ取り早いですね」
ん? なんかきな臭そうな感じですね。分かります。厄介事ですね。これは厄介事のスメルだ!
「実は一ヶ月後に世界会議があるんですよ。その時に料理人としてアインさんに同行してもらえないかと」
「お断りします」
「そうですか、お断りですか……えっ、お断り!?」
「はい、何か問題でも?」
「いや、だって、皇帝陛下の為に料理作るなんて光栄なこと……あ、あんまり光栄でもないですね」
アヤさんの頭の中には皇帝陛下のビール飲んで笑唐揚げ食ってる様子が浮かんでるに違いない。
「うちの皇帝陛下がその会議で護さんの所を国として認めてもらうって」
「ご主人様、行きましょう」
さっきとは違う見事な手のひら返し。俺でなきゃ見落としちゃうね。なんかこういう時はぼくって使っちゃダメらしい。古代の流儀に則ってみた。
「私らのところと、あと歩美さんのところも含めて国にしてもらった方が面倒が無いと思います」
「正直、隣接してる帝国とゴンドール王国が納得してるからいいんじゃないかな?」
「国として認められてないという事は帝国や王国の風下に立つということです。それはあまりよくありません」
ぼくは名より実だと思ってるから周りからどう思われててもあまり嫌とは思わないんだけど、アインたちは違うのかもしれない。
「今後、ブランド展開していって、帝国とゴンドール王国以外に出店する時に地盤がしっかりしてるかどうかというのは大事な事ですから」
なるほど。ってまだ店舗出すつもりなの? いや、さすがに店をやるには手が足らなすぎ……まあ、奴隷買ったり従業員雇えば出来るけど。
「わかったよ。そこまで言うなら皇帝陛下に行く時に伝えてくれ。こっちも行くメンバーを選抜するから」
「分かりました。という事はアインさんも?」
「もちろん同行させる」
「よっしゃあ! 向こうでも美味しいご飯が食べられる!」
アヤさんが小躍りしながら喜んだ。あれ? もしかしてそのためだけに誘われた?
「そそそそそんなことはなななないですじょ?」
いやいいや。それよりも歩美さんのところに聞きに行かないとな。そしてぼくもダイエットしないといけないらしいから頑張りますか。
翌日。何故かうちに泊まったアヤさんも一緒に歩美さんのダンジョンに移動。現地に着くと結構な数の人が来ている様だった。
しかもその大半が女性! なんということでしょう! 王国の男性は太っていることが裕福の証みたいな感覚の人が多いらしく、積極的に痩せようとはしないのだとか。王家の人々はスマートだったのにね。
「ほ、本日はっ、よ、よろ、よろ、よろしくっ、おね、お願い、しますっ!」
ぼくの前に居るのは歩美さん。何故かぼくのトレーナーらしい。解せぬ。




