第十九話:平和的な解決方法
干からびたら水をかければ良いのかな?
オーククイーンがホームランされて……一緒にレオンも飛んで行った。まあ首に縄つけられて引っ張られてんだからそりゃそうだよね。
「しまった! すいませんご主人様!」
「あー、うん。終わったことは仕方ないら。レオンとかいうのが居ないと困るみたいだから追いかけようか」
「残ったオークはどうされますか?」
「うーん、ほっといていいんじゃないかな? うちの近くに来るなら排除するけど、今のところそんな事も無さそうだし」
アリスに後を追いかけさせる。嵐の運び手も一緒だ。ロボーが犬みたいに臭いを嗅いでくれたりしないかな?
そんな事もする必要無く直ぐに見つかった。そりゃバットだもん。そんなに飛ばないよね。
「ブヒヒンブヒヒン!」
アリスを見るなりオーククイーンは土下座をしてきた。これなら分かるぞ、命ばかりはお助けよ、だな?
「降参しますから一晩だけこの人間の男の子種をくださいだそうですがどうしますか?」
ううん、ちょっとした齟齬はあったけど、だいたい合ってるな。
「じゃあ明日また迎えに来るからって伝えて貰って」
「分かりました。ロボー、お願いします」
「心得た」
そらから交渉のようなものが始まった。嵐の運び手としては早く帰りたいんだろうな。
「ブヒヒヒ、ブヒ、ブヒ」
「即日帰る方法もあると?」
「マジかよ!? それはどんな? 俺たちに出来ることなら協力す……」
「そっちにいる男二人も手伝ってくれるなら直ぐに終わるだろうと」
場が凍った。
「そ、そそそそそれはつまりトムとアリスがあの奴らと?」
「残念ながら私は女ですので」
「うそぉ!?」
さりげなく自分を除外するリック。でもうん。マッチョだし、胸もないけどフレームタイプが雌型だから厳密にはアリスは女なんだよね。
「つまりはリックとトムという事だな」
「「どうぞどうぞ」」
「「お前ら!?」」
嵐の運び手の男性陣と女性陣がそれぞれハモった。
「大丈夫です。先っちょだけですよ、きっと」
「嘘だ! 絶対嘘だ!」
「じゃあ根元まででいいじゃない」
「妥協してない!?」
女性陣は完全に面白半分だ。こういうのはNTRとは言わないんだろうか?
「明日、明日また、ちゃんと来ますから!」
リックが涙目になりながら懇願した。ロボーは仕方なしに伝え、そこで一晩明かすことになった。ロボーとアリスは帰って来れるけど嵐の運び手が心配だから野営に付き合うそうな。
オークの集落方面からは悲鳴のような叫び声が一晩中響いていたそうな。
翌朝。ぼくは朝ごはんをアインと話していた。オーククイーンの事だ。
「ご主人様はあのオーククイーンみたいなグラマーな肉体が好きなんですか?」
朝っぱらから詰め寄ってくるアイン。今日は朝から昨日のオーククイーンが気になっていたのだ。もちろん気になってた理由はちゃんとレオンを五体満足で渡してくれるかなんだが、とか考えてたらアインに先程のような事を言われたのだ。
「なんでそうなる?」
「だってオークを生かしておくし、あのオークご主人様の体型に似てるし」
ほっとけ! 部屋から出ないで引きこもってたらこうなるだろうがよ! あ、いや、出ないと決めたのはぼくだけど。
「いいからアリスと繋ぐぞ。おはようアリス。そっちはどうだ?」
アリスに繋がなくてもドローンを飛ばせばって話もあるけど、充電のために戻ってたからまた飛ばさないといけないんだよな。ドローン用の武器も欲しい。ええと、軍用ドローンが三百万……あっても良いけどそれは三体目のパペットの後かなあ。
「さあ、それではレオン様を返してくれ」
「ブヒヒンヒン」
パチン、とオーククイーンが指を鳴らす……というか鳴らせるんだって思ったが、とボロ雑巾の様になったレオンが転がされた。もしかして死んでるのか?
「死んではおらん。酷く衰弱はしているがな。随分と搾り取られたと見える」
同じ男としていっそ哀れになってきたよ。嵐の運び手の男性陣がレオンに近づいて何かを飲ませている。レオンの意識が戻り、辺りを見回した。
「ここは……はっ、な、なんだ、貴様ら!」
どうやらレオン様は混乱されているらしい。面倒だから昏倒させて連れて行こう。アリスがレオンの首の後ろをチョップするとそのままガクンと意識を失った。
「それではアリス殿、ロボー殿、世話になった。我らはここから街に戻る」
「運ぶの手伝いましょうか?」
「あ、いえ、リックが頑張りますので」
「俺!?」
渋々としながらも、レオンを担ぐリック。体格的には全然問題なさそうだけど。
「ではアイン殿にもよろしく伝えてください」
「また寄らせて貰います」
いや、もう来なくていいよ? 面倒なだけだからね? あー、でも今回の報酬貰わないといけないのか。よし、一回だけなら来ていいぞ?




