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第百八十八話:主様、拷問の時間です。

実際の拷問はまだ始まりませんが。

「何をブツブツ言っておる。そろそろ他の枢機卿が来るかもしれぬからな。貴様を牢に一先ず入れておけばいいか。なんなら獄中死、なんて事もあるかもしれんしな」


 やる気満々じゃないか! だが、他の枢機卿ってのが何人いるか分からないけど、こいつの仲間では無いようだ。


「神官共、こいつは使徒様の名を騙るニセモノ! 裁判にて極刑に処するまで牢に入れる。連れて行け!」

「はっ!」


 ぼくの身体を両側から持ち上げる。なんでかって言うとぼくの腰が抜けてるからだ。歩きたくとも歩けないんだよなあ。


「主様!」


 ちょうどその時にアリスが飛び込んできた。そして捕らえられてるぼくを見て……


「お前ら、主様に何をやっている!」


 見てわかるような怒気を噴出させた。あ、これは死人が出るかも。今の段階だとどれくらいの司教、司祭、神官が加担してるかとか分からないから犠牲者出したくないんだよなあ。


「アカネ、アリスを止めてくれるか?」

「御意。ですが、姉上はそう簡単には止められぬかと」

「ぼくの命令って言えば良いから。頼むな」

「はっ!」


 そしてアカネがアリスに向かっていった。ぼくは後ろでそれを見ている。というか腰も抜けてりゃ声も出ない。いや、声が出たとしてもどうにもならんだろうけど。


「アカネ! 邪魔するなら妹でも!」

「落ち着いて下され、姉上。御館様のご命令ですぞ」

「誤魔化すな! 主様はそこに居る! 声は掛けられるじゃないか!」

「御館様はここで声を出せば黒幕に気づかれると」

「で、でも、それなら念話で」


 あ、そうか。念話があったか。


「アリス、聞こえる? ぼくだよ」

「主様!」

「今ここで暴れると教会全部敵に回っちゃうから」

「主様と私の二人だけの愛の逃避行だね!」

「姉上、我ら姉妹もおりますが」

「ダメだよ、みんなは家を守って。私は主様とお腹の中の子どもの生命を守るから!」


 いつの間に妊娠したんだお前は。いや、そういう行為はしてないからきっと想像妊娠というか単なる妄想なんだろう。


「ぼくは家でのんびり暮らしたい。だから問題は起こしたくない。下手すると帝国やゴンドール王国まで聖国と事を構えてしまうかもしれない」

「でも、それじゃあ主様が」

「ぼく一人なら大丈夫。なんならアスカに迎えに来てもらってもいいし、扉を使えば帰れる」

「で、でも、それだと主様との逃避行が」


 アリスの主目的は逃避行なの? いや、ぼくは逃げるのは好きじゃないんだよね。引きこもりで社会から逃げてたろって? いやまあそれはそうなんだけど、だからこそこの世界ではあまり逃げたくない。


「アリス、とりあえず静観してくれ。みんなと一緒に脱出するんだ」

「うん、わかった。主様、いなくなっちゃやだよ?」


 アリスがそのまま反転してドアから飛び出していく。


「御館様。直ぐに脱出の準備を」

「アカネ、お前はムラーキーの屋敷なりなんなり探して奴が人身売買の黒幕だと突き止めてくれ」

「御意にございます」


 そしてアカネの気配も消えた。いや、気配とか分からないんだけど、多分消えてる。


「ふう、どうやら諦めた様だな。ならば貴様は牢で十分に痛めつけてやろう」


 ぎゃー! そ、そんな。捕虜の拷問はジュネーヴ条約によって禁止されてるんじゃ……そうだよ、異世界だよ、ちくしょう!


「ここに入ってろ!」


 放り込まれたのは鉄格子とベッドしかないシンプルな牢。トイレは? トイレはどこどすか? ぼくは誰もが目を奪われてく完璧で究極のアイドルじゃないからトイレには行くんですよ。あ、ゲッターでもないよ。ゲッターだったらオープンゲットして鉄格子の間をすり抜け……いや、それ以前にゲッター線で何とかなるか。


「今からメシだから帰ってきたらたっぷり可愛がってやるぜ。お前はどんな声で哭いてくれるのか楽しみだ」


 この刑吏、サドかよ! いや、まあぼくもマゾなところは無きにしも非ず。ほら、人間にはサドッケとマゾッケが少なからず存在するってね。嘘です。痛いのは嫌なので勘弁してください。


 そして牢の中には誰もいなくなった。どうやら教皇猊下は牢には入れられてないらしい。そりゃそうか。さすがにそこまでやればほかの枢機卿が黙っちゃいないんだろう。


 しかし、誰も居なくなったんならちょうどいい。ぼくは扉を出して自分の部屋に戻った。


「ただいま」


 家にはアミタしか居ない。アミタのところに行こう。


「あれ? 旦那はん、なんで家に居るん?」

「いやまあ色々あってちょっとな。それよりも分身体の強度というか見せかけで殴られたら傷付く様に血が流れる様に設定できる?」

「なんやなんや、そないな性能落とすような真似をウチにやらそうって?」

「性能を落とすんじゃない、人間に近づけるんだ」


 アミタがニヤリと笑った。


「人間に近付けるんか。なるほどなあ。もちろんできるで。ちゃちゃっとやってまうから四十秒だけ待っとって」


 早いな!

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