第百八十七話:役者が違うってのはこういう事だ。
護君、まだ生身。
「分かりましたフォルトゥーナ様、直ちにムラーキーを糾します!」
あ、そんなにストレートに問い詰めても否定されるだけでは? 曲がりなりにも黒幕としてバレずに人身売買やってた人なんでしょう?
「では、頼みましたよ」
「ははー!」
フォルトゥーナさんはそういうと消えていっ……
「護さん、護さん、レベルアップの内容決まったらお報せしますから、ちょっと待っててくださいね。キリのいい所まで……そう、主人公が六大将軍になるぐらいまで読んでからで」
「最新話でもそこまで描かれてないでしょう! ぼくも雑誌で読んでるから知ってますからね!」
「酷い! ネタバレするなんて! 私は単行本派なんですよ!」
「仕事サボって読んでるんじゃねえって話ですよ!」
「ううっ、分かりました。来週ぐらいには内容提案しますね」
今度こそ消えた。ふう、毎週木曜日にウェブ上で読んでなければ危ないところだった。ちゃんと課金してるよ。最近は値上がりしたからちょっともやーんとするけど。
「誰か、誰かいませんか?!」
「はっ、教皇猊下、どうされましたか? この者が何か御無礼を?」
「違います。使徒様に失礼な事は言ってはいけません! それよりもムラーキーを呼びなさい!」
「枢機卿台下を? 何か神託でも御座いましたか?」
「そうです。他の枢機卿も合わせて呼ぶのです」
「はっ、はい!」
ドタバタと神官が駆けて行った。聖堂内は走っちゃダメとかそういうのは無いのかな?
「教皇猊下、お呼びと聞きましたが?」
「ムラーキー!」
「ど、どうされたのですか、教皇猊下?」
「貴様が、貴様がとんでもない事をしたお陰でフォルトゥーナ様が、お怒りなのだ!」
えー、特にお怒りってほどでもなかったと思うのだけど。
「落ち着いてください。一体何があったのですか?」
「ムラーキー、貴様、人身売買に手を染めているというのは本当か?」
あ、ムラーキーの顔がピクンと動いた。いや、それしか動かなかったと褒めてやった方がいいかもしれない。ぼくは顔色伺って生きてきたから顔色見るのは得意なんだ。
「教皇猊下、何をその様な……証拠でもあるのですかな?」
「しょ、証拠だと? フォルトゥーナ様が仰ったのだ。神の言う事に証拠を求めようというのか?」
いやまあ、時々噓吐くしなあ、あの馬鹿女神様。
「私もそのフォルトゥーナ様が直接仰る事ならば納得もしましょう。ですが! 今この場にはあなたとそこの使徒様だけ。それならばいくらでもでっち上げることは出来ましょう」
「貴様! 使徒様まで疑うというのか!」
「残念ながら私はそこの者が本当に使徒様なのかすら分かりませんからね」
「何という不信心な……」
あー、こりゃダメだ。多分教皇猊下は「神気が見える能力」とやらで教皇に押し上げられたんだろう。そしてムラーキーは政治力で枢機卿まで上がったんじゃないかな。敬虔な信者であり続けている教皇猊下と百戦錬磨の枢機卿。趨勢は火を見るより明らかだな。
「教皇猊下はお疲れの様だ。神官たちよ、猊下を寝室にお連れしなさい!」
神官たちが教皇猊下を捕まえて運んでいく。引き摺ってる感じなので恐らく、この枢機卿と同じ穴の狢というか子飼いの部下とかなんだろう。
「さて、うるさいのは行ったな」
「ぼ、ぼくは?」
「貴様の様な小僧一人、後でいくらでも何ともなる。しかし……売るには魅力に乏しいな。美形か力自慢なら買い手もついたろうに」
「なっ!?」
どうやらぼくの前では隠す気はないらしい。まずい。ぼくとこいつ二人きり、いや、正確には他の奴らも居るんだけど、対峙しても勝てる気しないんだが。というかまともに話せないよ!
「御館様、ご心配召されるな」
ん? 誰だ?
「先日、ちゃんとした声帯をいただいたアカネでござる」
なんか喋り方がハット〇君っぽくなってる。いや、忍者だからか? まあ「ハイクヲヨメ」とか言われるよりはマシなんだけど。
「拙者なら御館様一人ならばいくらでも救い出せまする」
「あ、うん、それは助かるんだけど、それやると後で指名手配とかされそうだし、あと教皇猊下の事も気になるんだけど」
「先ずは御館様がこの窮地を脱する事こそ重要かと存じます」
「あ、いや、なんならぼくは捕まっておくから証拠を見つけ出して欲しいんだけど」
「でも、捕まったら即処刑されるかもしれぬのですが」
うっ、確かに。その可能性も無きにしも非ず。というかさっきぼくの事を「売れない」とか言ってたから利用価値なければ即処刑でも不思議じゃないのか。
「それならば一旦逃げて指名手配されながら行方不明になり、その隙に証拠を探した方が良いかと」
「うん、そうだね」
「それに御館様が捕まったとなればアリス姉上が都市ごと半壊させかねないかと」
容易に想像出来るのが悲しい。




