第十八話:オークという生き物
オークの設定はオリジナルです。
「あれは……殿下!」
リックが悲鳴のような声をあげる。オークの群れにびっくりしたんじゃなくて繋がれてるレオンに驚いたんだろうなあ。
「貴様、レオン殿下を放せ!」
リックは言うが早いか縦を構えて突進した。シールドバッシュ。数体のオークをなぎ倒しながらクイーンだかキングだかのところに駆け寄る。
そして、そんなリックさんに続く様に、トムたち3人も駆け寄ってきた。
「殿下、ご無事ですか!?」
「なんということだ……早く放せ!」
口々にオークに向かって大声で叫ぶ。オークの方も何か言ってるみたい。まあ何喋ってるかわかんないんだけど。
「なんだ騒がしい……なっ、なんだこれは!?」
その時、目に正気が戻ったレオンが目を覚ました。いや、目は覚めてたはずだからここは正気に戻ったというところか。
「今すぐお助けします!」
「大人しくしていてください」
「来るな、来るんじゃない!」
だが、次にレオンの口から出てきたのはそんな否定の言葉だった。私たちの頭の中でははてなマークが輪になって踊っていた。
「で、ででで殿下?」
「私は目覚めたのだ。この我が伴侶たるヂェーンが教えてくれたのだ。何をはばかることなく自由な生きていけばいいと」
いや、あんた割と何もはばかってなかったと思うよ? だってぼくの家奪い取ろうとしとったし。
「だいたい戻ったところで父上に怒られるだけじゃないか!」
怒られるだけならまだマシだとおもうなあ。
「大丈夫です。戻ってくるなら何も言わないと領主様……あなたのお父上から言付かっております!」
おいおい、許すのかよ。いやまあ勝手に来て勝手に騒いでだもんなあ。犯罪行為にはなってないのか。畑の作物を泥棒したのはこうなる直前だからなあ。
「そ、そうか……ありがとう、オークたち。俺は家に帰ろうと思う」
「ブヒッ!?」
「そうなのだ。俺は必ず迎えに来る。それまで待っていてくれるか?」
「ブヒーブヒー!」
「そうか歓迎しているくれるのか。ありがとう」
話通してんのかな? いや、そんな風にはみえない。翻訳機能とかどっかついてないのかな? あ、そうだ。ロボーは分かるかな?
「アリス、アリス」
「なんでしょうかご主人様?」
「ロボーに今のオークの会話がわかるか聞いてくれるか?」
「分かりました。ロボー」
「なんだ?」
「ご主人様があのオークの言葉が分かるか、と聞いている」
「あれか? まあ分かるが」
どうやら思った以上にロボーの能力は高いようだ。ていうか頭良いのか?
「何しろ縄張りを拡げるには交渉することもあったからな。まあだいたいは宣戦布告したのみだが」
話し合うという発想は無いのか。まあいいや訳して貰おう。
「さっきの「ブヒッ!?」は「種が逃げようとしてる!?」で「ブヒーブヒー!」は「オスを逃がすな!」だな」
なんだと? それじゃあまるであそこにいるオークが……
「なんだ? なんの不思議もなかろう。奴らはメスしか居らんのだから」
「あれ、全部メスなの!?」
「あれというかオークはみんなメスだぞ? 偶に一万匹に一匹くらいの割合でオスが産まれるが」
今明かされる衝撃の事実! いや、オークって言ったら女騎士を捉えてグへへなことをするもんだってウ=ス異本にも載ってたんだから!
「その希少なオスと交われるのがオーククイーンだな。こいつがいるとオークの群れが大きくなり災害に発展することもあるらしい」
「なんというゴブリンスタンピード……」
「ん? ゴブリンはスタンピードなんか起こさんぞ? あいつらは他種族と子どもは作れんし、子どもが生まれる確率も低いからのう」
どうやらこの世界のモンスターはぼくの知ってるのとだいぶ違う様だ。
「あ、じゃあスライムは? ザコ敵なんだろう?」
「は? あんなダンジョンの中しか出てこん、倒すのも焼くしかない武器が通じない生物の天敵がザコ敵なのか?」
あ、どうやら国民的RPGの方じゃないみたいです。それはそうとこのままだと戦闘になるなあ。
「このままだと戦闘になりそうだな!」
なんかロボーはワクワクしてるみたい。やはり血が騒ぐとかだろうか。
「ヤマイノシシほどでは無いが、オーク肉も美味いからな」
食欲でした。
「ブヒヒー!」
オーククイーンが一際高く鳴き声をあげるとそこに居たオークが一斉に嵐の運び手にかかっていった。その流れでこっちにも……
「アリス!」
「はい、ご主人様!」
アリスは持っていたバットをフルスイングしながらオーククイーンに近付く。ロボーも何体かのオークを牙で屠っていく。
「ブヒン!?」
「おお、アリス殿!?」
「ご主人様の命令です。その男は返してもらいます!」
バットが唸りをあげてオーククイーンに直撃する。オーククイーンは情けない悲鳴を上げて吹っ飛んでいった。あのバット、あんなに攻撃力高いの?




