第百七十二話:スポーツジムは運動の宝石箱や
私はスポーツジム、行く暇がある時は殆ど休まず行ってました。
食事メニューの改善を王城のコックさんに提案。予め王妃様とラケシス様が話をしてくれていたらしく、そんなに反発は見られなかった。普通は料理人でもないやつからの改善提案なんて受け容れられないよね。
「ええと、夕食の時に油分が多いと太りやすくなりますから油をあまり使わない料理に」
「つまり、スープ類やサラダを多めに、という事か?」
「そうですね。あ、お肉の脂身も除けてください」
「いや、そりゃあ味が出ないから」
「ダメです。味はさっぱり系で。なんなら出汁の取り方も教えますから」
という事でアインが出汁の作り方を伝授。と言っても昆布みたいな海藻を使ったり、鰹節みたいなのは無いので、しいたけを干したり、いりこみたいな小魚を乾燥させたりするのを教えた。まあ、今は作ってる時間が無いので、完成品の出汁を幾つか買って渡している。
料理はキノコの炒め物とかおでんやら根菜類の煮物やらカロリーの少なそうな野菜中心のメニューを。肉は油で揚げたりとかはしないで、水炊き。夏には暑いけど、汗をかくのもダイエットの内だから。
「はふはふ、熱ひへほ、ほいひい、へふね!」
ラケシス様、何言ってんのか分かりません。
「これは新しい味ですね。食が進みます」
王妃様、進んじゃダメなんですよ、食?
「おかわり!」
なんであなたまでここで食べてるんですか、アヤさん!
翌日、歩美さんのダンジョン。昨日まではなかったスポーツジムがそこにあった。もちろん別区切りでプールも。
早速使用するということで、ラケシス様がレッグプレスに。ほら、なんか逆さまに寝て足を上に突き上げるみたいな運動するやつ。なお、トレーニングウェアとか無いので水着でやってもらいました。うん、その、おっぱい大きいと膝を畳んだ時に、ねえ。ぐにゅんってなるんですよ、ぐにゅんって。
あまり見るのも失礼なんで王妃様を探すと自転車に。リカンベントバイクっていうらしい。リカンベントは背もたれ付きのサドルの事らしい。うん、疲れて倒れられても困るし、第一、この世界には自転車がないからね。
あとこのリカンベントバイクにはちょっと仕掛けがあって、サイクリングコースが周りに映し出される。つまり、実際に自転車を漕いでるみたいな気分で運動が出来るのだ。いや、この世界の人にとってどうだか分からないけど。
「これ、すごいわ。自分で移動してるみたいね」
さすがに王妃様に外で自転車乗れとは言えないのでノーコメントで。王宮の庭くらいならいいのかもしれない。
アヤさんは……なんとベンチプレスに挑戦。重さは……百二十!? ええと、さすがに世界記録まではいかないけど、女性の平均値、アヤさんの体重が何キロか分からないけど五十前後としたらアスリートの平均が八十キロくらいだったはず。これはさすがに鍛え上げられたというところか。
ちなみにぼくは重りをつけないバー(二十キロくらい)で上手く上がらないくらいなのでできる人はすごいと思う。アリス? いや、あいつは三百だろうと四百だろうと平気で上げるから。
筋トレが一通り終わったらプールに。泳ぐと筋トレの後だから疲労で溺れるかもしれないので飽くまでウォーキング主体。泳げるなら泳いでもいいけど、って言ったらアヤさんが泳いでいた。元気いっぱいだな!
ただ、アヤさんの泳ぎ方が犬かきみたいだったので不思議に思うと、「いや、周りを警戒しながら渡河しないといけないですから」って。確かにそりゃそうか。なのでクロールを教えてあげた。あ、ぼくが教えたんじゃないよ。ぼくなら平泳ぎ教えるからね。平泳ぎ、下から見るか後ろから見るか。
あっという間にアヤさんはクロールを習得。さすがの運動神経というか。まあ軍事行動中にはあまり使えないですねって言ってたけど。そりゃあスピード重視の泳法だもんね。
さて、運動を終えたら今度は入浴。これは歩美さんのところに連れて行くわけにもいかず、かと言ってスパリゾートはまだ完成するだけのDPが稼げてないのでお城のお風呂場を使用。アヤさんは入れなかったって泣きついて来たから家に送った。
筋肉の疲労がキツそうな気がしたので入浴剤を提供。ほら、あのしゅわしゅわするやつ。終わったあとの掃除が大変かもしれないけど、気持ちよかったみたいでほわほわしていた。
「ならお風呂上がりに体重測定やな!」
アミタがいつの間にか体脂肪計を作っていたらしい。なんでもぼくに使うのが目的だったそうな。いや、ぼくはいいよ。一時よりはマシとは言え、そんな体重直視したくない。
「これは……運動前を量ってないから分かりません」
確かにそうだ。まあせっかくなので量るだけ量ってもらって、体重をノートに記入する。トレーニングノートだ。これで変化を客観的に見られるね! こんな生活が一週間、二週間と続いた。




