表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/400

第百七十話:ダイエット再び

リバウンド……それは恐怖の言葉。

「ここに護様がいらっしゃると聞いて!」


 バァン、とドアを開けて入って来たのはこの国の王太子妃候補、ラケシスさんだった。その、ラケシスさん、だよね?


「そうですけど、何か?」

「あの、その、随分とふくよかになられましたね」

「え!? あ、あの、その、運動はしているつもりなのですが」

「もしかして毎朝ウォーキングとかじゃないですよね?」

「なんでわかったんですか?!」

「いや、それ運動っていうかこの店に並びに来てますよね? それに運動しても間髪入れずそれ以上のカロリーを摂っちゃったら意味無いじゃないですか!」

「え、でも、おしるこも羊羹も美味しくて」

「美味しいと言ってくださるのは嬉しいですが、さすがにこれは過剰摂取です。王妃様とか何も言わないんですか?」

「それが……王妃様も……」


 どうやらロイヤルファミリーの危機再びらしい。さすがにスマートになる痩身薬は渡したくないなあ。薬に頼るというのはある意味最終手段だもん。


「それで、ここには何をしに?」

「あ、ちょっと知り合いに街を案内しているところでして」

「そうですか。新しいスイーツとかないかとおもったんですが」

「ありますよ。いちご大福って言うんですけど、これがまた新しい食感で美味しくて」


 ポーリーがひょっこり顔を出して告げていく。あ、目に野獣が宿った。


「護様?」

「いや、今は食べない方がいいのでは?」

「スイーツとの邂逅は一期一会! 次にいつ会えるか分からないのです! いちご大福だけに!」

「誰が上手いこと言えと。はあ、とりあえず試供品というかテストで作ったものをお渡ししますよ」

「私も欲しいです!」


 また表から声が聞こえてきた。……なんで居るんですか、アヤさん?


「美味しい食べもののあるところ、私あり!」

「仕事しましょうよ」

「私の仕事は護さんのろ、う、ら、くっ」


 色気より食い気なアヤさんがぼくを落とせるわけもない。いや、好感は持てるよ。ほら、他の女性みたいな恐怖感はそんなになくて巫山戯てる感じだから。


「その前にスイーツに籠絡されてませんか? はあ、まあいいですけど」

「ところでそっちのイケメンさん方はどなたです?」


 やっぱりアヤさんもイケメンが良いんだな。その辺は分かってたからなんとも思わないけど。


「護殿のご友人か? 私は縁あってこの街を案内してもらっているアルタイルという。こいつらは私の部下でエイクス、ピーターだ」

「そうですか。よろしく」


 そう言うとアヤさんはぼくをこっそり呼んだ。


「なんですか、あの顔面偏差値高得点集団は! 護さん霞んでんじゃないですか! どこの誰なんです?」


 余計なお世話だよ! でもしかし、あのイケメン集団のやつらの素性はあんまり話したくないんだよなあ。歩美さんにも迷惑が掛かるだろうし。何より暴走したら止めるのに一苦労だ。


「まあ、積もる話は王城ででも」


 いつの間にやら公爵家の馬車にぼくらは乗せられていた。ついでにアヤさんも。ぼくがろくな抵抗もしなかったからみんなも着いてきたみたい。もうちょい危機感もて?


 馬車は王城への跳ね橋をスルーして中に入っていく。検問とかないのかと思ったけど、公爵家の馬車に検問とかするわけないわな。


 そうして向かった先は王妃様の部屋。あのお客さん用のスペースである。そこに王妃様は居た。いや、置かれていた、という方が確かなのかもしれない。かつてのふくよかさよりはマシだが、あからさまに表面積も体重もかさを増した王妃様は実に滑稽であった。笑っちゃため、笑っちゃだめだ!


「……ふう、危ない。責任者だから耐えられた。それにご主人様の顔に泥を塗る訳にもいくまい」


 どうやらアルタイルは特に自分たちの正体を隠しておく気の様だ。まあ騒ぎになったらそれはそれで面倒だし、仕方ないかなあ。


「それで護殿、この間の痩身薬をまたいただけたら」

「二度目はありません。頑張って運動してください」


 王妃様の泣きは入ったが、痩身薬なんぞに頼っちゃダメっていうわけ。また胸まで痩せたら国王陛下になんかされそうだし。アンヌ呼んでダイエットの監修させるか。


 そんなこんなで王城に案内されてついでにアルタイルたちを紹介。国のトップにはどういう奴らかは認識させとかないとね。


「なんと! あの森にそのような方がまだ居られたとは。一度お会いしてお話ししたいのだが」

「我々のご主人様は他人と会うのを警戒しております。申し訳無いが会わせる訳にはいきません」


 王国としては危険は把握しときたいけど、そんな事を許すはずもなく、とりあえず何らかの準備が出来たら報せるという事で話がついた。


「さて、それで王妃様とラケシス様のダイエットですけど……」

「やはり薬で」

「却下です! 地道に運動しましょう。暫くは甘味断ちです!」

「そ、そんなあ〜」


 いちご大福販売はスルーしてもらわないと健康上の被害が出るかもだしね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ