第十七話:森での邂逅(会いたくなかった)
豚の角煮は良いぞ!
「済まない、少し聞きたいことがあるのだが」
「お帰りください」
入り口のところでアインに門前払いさせる。もうお礼も貰ったんだしこれ以上関わるつもりもない。
「お願いします、手掛かりが欲しいんです」
「手掛かりですか?」
「はい……実はここに来ると言って領主の息子が騎士を連れて出たそうで」
「そうですか」
そうですか、などとアインは言っているがぼくは内心バクバクものである。パペットは表情変わらなくて良いね。
「それでしたら丁重にお帰り願いましたが」
おいコラ! せめて「辿り着いてません」とかならこっちも知らんとシラを切り通せたもんを……ああ、そう言っちゃったら事の顛末説明しないといけないじゃないか!
「そうですか……それで何があったのかをお聞かせ願えませんか?」
リックさんは丁寧だから断りづらい。だがぼくは断るけどな!
「分かりました。中へどうぞ」
っておい! なんで家の中にあげてんだ? しかもそれ、夕飯に作ってた豚の角煮だろうが! なんでお茶請けみたいな感覚で人数分出してんだ? まあ、あの量の角煮は消費し切るの難しいかもだが。
「これは?」
「ご主人様に出す夕飯のおかずです。感想を聞かせていただければ」
「いや、俺たちは忙しくてだな……」
「感想を聞かせていただければレオンという者の事について話しましょう」
「レオン……領主様の息子の名前かっ! 仕方ない、食べるとするか」
そしてリックさんが口に運ぶ前にエル、トム、リンの三人が既に食らいついて、「うんめー!」とハモっていた。
「なんだよこれ、ヤマイノシシの肉だろ? なんでこんなに柔らかいんだ?」
「しかも味がすごくしみてて濃い。こんなの食べたことない」
「凄くパンが食べたくなるわ」
仲間たちの大絶賛にリックさんも興味をそそられた様だ。一口食って……
「こりゃあ驚いた。ここまで柔らかい肉は初めてだ」
などと唸っていた。ぼくはパンよりもご飯派なので晩御飯には米を炊いといて欲しい。
「ふむ、味は良さそうですね。ありがとうございます」
アインは何やら持っていたメモ帳に書くとそのままドアから退散しようとしていたり。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! レオン様の 行方を教えてくれ!」
どうしますかってアインが言ってくる。いや、最初に追い返せば良かったんだよ! でもこうなったらそれなりに案内してやる必要があるよなあ。
「仕方ない、アリス、案内してやってくれ。場所はロボーが知ってんだろ」
「かしこまりました」
アリスは嵐の運び手を外に連れ出した。あー、家から離れると見えないんだよなあ。
「でしたらドローンを飛ばせば良いのです」
「ドローンねえ。まあまあ高いな。ん? あれ? なんかストレージに入ってたんだけど?」
「フォルトゥーナ様がどうせ使うだろうから最初から入れとく、だってさ」
そういう気遣いあるならレベル上がって〇ンバが貰えることも教えておいて欲しかったよ。
さてそれじゃあドローンでついて行こう。アリスの後をゆっくり飛ぶ。あ、アリスに撃墜されるといけないのでドローンの事は教えておこう。
アリスはロボーと合流。そのままロボーに連れられて森の奥へ。
「この辺りはオークのナワバリだからな。捕まって殺されてんじゃないか?」
「その可能性もあります」
「いやいやいや、困るよ……この辺りなら手分けして探そう」
嵐の運び手たちとアリス、ロボーは辺りに散らばった。しばらく探すとアリスが集落のようなものを見つけた。あれはどこの集落だろう?
ドローンで近づいてよく見ると豚の顔に人間のデブの胴体を持った魔物、オークと遭遇した。三匹程の集団でこっちを見つけると襲いかかってくる。
さすがにアリスに対戦車ライフルとかは持たせてなかったので普通のバットをつかってオークをボコり始めた。ドローンで攻撃したかったがそういうのは着いてないみたいだ。
やがてオークは三匹とも逃げていった。すると奥から一際大きいオークキング……いや、あれはおっぱいがあるからクイーンかな? でもデブには男でもおっぱいあるしなあ。
とか考えてたらそのクイーンの手にロープが握られている。クイーンの手のロープを辿った先にはボロボロになった見覚えのある人物が繋がれていた。
「あ、こないだのクソ貴族じゃん」
そうそう、そのクソ貴族を探しに来たんだっけ? よし、アリス。他のみんなに報せよう。
しかし、アリスが身をひるがえそうとするとオークの雑魚が飛びかかってくる。アリスの戦闘力ならオークの一匹や二匹は物の数では無いけど、数が多いよなあ。
「アリス殿、何か……あっ!」
そこに嵐の運び手が到着。彼らの実力はわからんけどヘルグリズリーに苦戦してたくらいだしなあ。ここからじゃぼくの支援も届かないし、どうすっかなあ。




