第百六十六話:今後の事業展開について考えよう
色んな試行錯誤、大事です。
「まず挑発に弱い」
淡々とセイバートゥースが言う。まあ見るからに弱いよね、煽り耐性無さそうだもん。
「攻撃手段が近接打撃しかない」
それはアリスも同じでは? あ、まあアリスと近接の土俵で戦っても勝てないけど搦手がないってことか? アリスはサブミッションや投げも出来る子だもんな。
「動きが鈍くていくらでもかき回せる」
「魔法攻撃への耐性ない」
これはアルタイルとうちのアスカの意見。アスカはなんでわかったのかと言えば、その辺は見通せるんだと。それでこっそりやったらレッドメット以外は弾かれたらしい。中でもアルタイルには全く無効化されたとのこと。なるほど、それで「ワシが入ると勝てない」か。相性の問題なんだな。
「お前ら……ちくしょう!」
まあ多分パワー的なものは動物ランドの中で一番あるんだろうけど、アリスほどじゃない。レッドメットの全力パンチはアリスが受け止められるけど、アリスのパンチは受け止められずに吹っ飛ばされるだろう。あ、これはアリスの戦力分析だから間違ってるかもしれない。もしかしたら火事場の馬鹿力とかあるかもだし。
「ふう、人心地、つきました。ありがとう、ございました」
どうやらおなかいっぱいになったらしい。いやまだ大分残ってるけど、少食なのかな? いや、女の子の食べる量ってこんなものなのかも。
「もう要らないんですか?」
「あの、久しぶり、に食べた、から、その、ちょっと胸が、ムカムカ、してきて」
絶食状態の人にいきなりパーティ料理はなかったか! ええと、それだと、あれだ、たまご雑炊だ。ヒガシ○だ!
「アイン、ちょっと胃に優しいたまご雑炊を頼む」
「……桃缶要りますか?」
「風邪じゃないんだが、まあ頼む」
という事でストレージ経由でたまご雑炊とお皿に出した桃缶を差し出す。
「これ、食べて、いい、ですか?」
「ええ、どうぞ。配慮出来なくてすいません」
「すいません、いただきます。美味しい……」
ほっこりした表情を見せてくれた。しかし、今後どうするんだろうね。
「あの、元気、出てきたので、その、後は、自分で、何とか、します。ありがとう、ございました」
どうやら頼らずに頑張る道を選んだみたい。いや、そりゃあ本人の自由だけど、この森の獲物が減ったのはぼくらのせいでもあるし、多少は協力しないといけないかもしれない。
「ええと、今後どうするのか、ちゃんと考えた方がいいと思うよ」
「え? で、でも、ご迷惑、では? ご迷惑、ですよね?」
「いや、大丈夫。ちょっと興味あるし。どうやるか教えてくれれば」
「わかり、ました。その、ご飯、貰ったし、その、お礼って事で」
歩美さんはパッと両手を広げた。そこにディスプレイの様なものが空中に現れる。
「これが、DPシステム、です」
画面には左上にDPの残量、今は残り十しかないけど、が。スクロール出来る感じでカタログの様に写真入りでDPの使い途が出ている。お金は出すことは出来ないが、ぼくのネットスーパーに似た様な事が出来るみたい。
「このダンジョンに、入って、すごしたり、ダンジョンの中で、亡くなったり、したら、その、DPになる、みたいで」
うん。つまり、侵入者が居ないとたまらないわけですね。
「あ、ぼくらはどうなの?」
「その、魂がない、ので全然、溜まってない、です」
あー、なるほど。ぼくも本体じゃないし、みんなパペットだからなあ。だからあんなに驚いたのか。その辺がわかるようになってたんだな。仕様?
「あ、じゃあ、これはどう?」
ぼくはストレージの中から唐揚げ用のロックバードを取り出した。
「あの、このダンジョンで、死んだ訳じゃ、ないので、その、魂の、力とか、なくて。ごめんなさい」
やはり死体を持ってくる訳にはいかないようだ。となると生きた生物を取り込まないといけないんだよなあ。
「心配すんなよ、ご主人様。俺らが狩って来るからよ!」
「レッドメット、話を聞いていたか? その狩って来ても魂の力がないから意味が無いということなんだが」
「そうだっけか? いやでもまあ狩って来ればそのうち沢山入ってるのが転がってんだろ?」
「レッドメット、死体からは魂の力は獲得出来んぞ」
セイバートゥースが優しく諭す。いや、優しいのかどうかは知らんが、怒鳴りつけてないから優しいのだろう。
「ならどうすんだよ、このままじゃご主人様が干からびちまう!」
「だから森の中の獣とかを呼び寄せたり、そうだなあ、冒険者とか入れても」
「あの、冒険者は、怖い、です。その、下手したら、攻略部隊とか、組まれちゃって、その、討伐されるかも、だし」
あー、まあ、ダンジョン攻略が仕事だもんな。攻略されちゃうか。ん? 攻略されちゃうというか攻略されるダンジョンにすればいいのでは?




