第百四十九話:御使い? 使徒? 聞いてないよ!
まあ主神様から能力授けられてますからね。
【入城】:自宅にいる自分と外にいる分身体を入れ替える。自分が自宅に居ないと使えない。
フォルテはぼく付きの女神なので【入城】使ったら一緒に強制移動されるんだって。いや、これ後で知ったんだけど。そもそもこんな能力使う気なかったよ。
「主様だ!」
入れ替わりでぼくが来るとアリスが抱き着いてきた。あまり強く抱き締められると痛いんだけど。
「ようこそいらっしゃいました。フォルテ、ちゃんとしてますか?」
「も、ももももももちろんです! 本体たるフォルトゥーナ様にはなんのご心配もなく!」
「嘘ついても分かりますからね」
「ううっ、そんな」
本体と分身体が言い争いをしていた。いや、自分と喧嘩するってどうなんだろうね?
「それでは始めます。フォルテ、身体を借りますよ」
「はぁい」
フォルトゥーナさんがフォルテに吸い込まれるように入っていく。どうやらぼく以外の人には見えないようだ。これを利用したら露出癖も……
「そんな趣味はありませんからね」
いやまあ貧相な胸元を見てもドキドキしないというか。脚が良ければそれでいいんだけど。
「な、なんだ、この光は!」
縛られたワカープロが狼狽えている。まあ驚いてるのは彼だけじゃなくて、ぼく以外のほとんど全員なんだけと。
光の中にすっと立つ女性が一人。併設された教会にある立像で見慣れている姿だ。
「め、女神様!?」
「そうですよ、レナ」
「ああ、ああ!」
レナさんが涙を流して喜んでいる。そんなにか? この女神ってそんなにたいそうなもの?
「さて、司祭ワカープロ」
「嘘だ、フォルトゥーナ様が降臨なされるハズはない! 偽物め、正体をあらわせ!」
ワカープロが十字架を突きつける。なんで十字架なのかと聞いたら、「考えるのが面倒だったから借りてきた」だってさ。まあ深く考えずにその辺にあったのには間違いないだろう。
「まさか私が悪魔が何かとでも?」
「な、なんと!」
「では茶番はこの辺にしておきましょう。レナ?」
「は、はい、フォルトゥーナ様、なんなりと!」
「緊張せずとも良いのですよ。よく頑張りましたね」
その言葉を聞いてレナさんはわんわんと泣き出してしまった。
「ワカープロ」
「ぐぬぬ」
「そなたのやった事は全て把握しておりますよ。聖職者の身分にありながらこのような有様、恥を知りなさい!」
「くっ、騎士団よ、この頭のおかしな女を捕らえよ!」
ワカープロは周りの騎士たちに号令を飛ばす。困惑する騎士たち。ほら、司祭の言うことは絶対だけど、それ以上の絶対者たるフォルトゥーナさんが居るもの。
「騎士たちよ。そなたらの罪もまた深きもの。しかし、司祭の命令で逆らえなかったのも事実でしょう。今、ワカープロを捕えれば不問としましょう」
「まことに!? よし、司祭様、いや、大罪人ワカープロを捕縛せよ!」
騎士たちはワカープロを捕らえに向かう。そんな中でもワカープロに忠誠を誓っているのか、騎士団の同士討ちが始まった。
「アリス、ワカープロを捕まえておけ」
「わかった、主様!」
なるべく他の人の顔を見ないようにしていたが、どうやら現場が混乱状態になったと把握してアリスに指示を出した。
「護さん」
「フォルトゥーナさん、お疲れ様」
「全くです。疲れました。甘い物が食べたいです。ポテチでも可」
「そんな事したら太るよ」
「女神には余分な脂肪はつかないのです」
「ああ、だからまな板みたいな」
「何処がですが! 見てくださいよ、ほら、ちゃんとあるでしょう!」
「体型補正は大変ですね」
「ほっといて!」
フォルトゥーナさんが顔を真っ赤にして叫ぶ。それを見てレナさんがガタガタ震え出した。
「あの、もしかして、護様は御使い様なのですか?」
「え? あ? ち、ちちち違いま」
「そうよ」
は? いや、そんな話は聞いてないんですけど? ぼくはいつからフォルトゥーナさんの下僕になったの?
「下僕、ではなくて使徒です。だからフォルテもつけてるではありませんか」
「いや、ぼくやってるの引きこもりですよ?」
「その分エネルギーを使ってないですから」
どうやらぼくは行動力みたいなのを使ってないからそれが神力としてフォルテに蓄えられていくそうな。それがある程度溜まると奇跡とか降神とか出来るんだって。今回も溜まったポイントを使ったんだと。どこぞのスーパーの買い物かなんか?
「今回は私が勝手に使ってしまったので補填としてガチャを用意しました」
えーと、詫びガチャとかいうやつ? ぶっちゃけ、ガチャの排出渋すぎて回す気起きないんだけど。たとえタダでもさ。
「そ、その辺はほら、ちゃんと今後調整するから!」
「てことは今までは調整してなかったの?」
あ、目をあからさまに逸らしやがった!




