第百四十七話:泣く子と地頭には勝てぬ勝てぬ。美幼女にはもっと勝てぬ。
主人公はロリコンでは無いです。念の為。
「そのガキだ、そのガキを取り抑えろ!」
騎士の人が血相を変えて叫ぶ。その合図に素早く反応して黒ずくめが飛びかかる。
「へぶぅ!?」
そしてアスカの張った障壁に阻まれて顔面を強打した様だ。
「何をやっている、貴様ら!」
「しかし騎士様、あいつに近付けないんですよ」
「なんだと? 人を拒むような結界などそう簡単に……あるぅ!?」
ベタベタとアスカの障壁に触りまくる。確かに見えないけどそこに確かにある。金子みすゞじゃないけど。ちゃんと物理的にあるからね。いや、魔法的?
「えっ、なんなの!?」
ミラちゃんがとても驚いている。アスカの魔法がそんなに凄かったのか。
「あんなに大きなのに動いてもおっぱいが揺れないの! びっくりなの!」
「お目が高い。これは魔法で固定してある」
「すごいの! 私も将来ないすばでぃになる予定だから魔法を覚えたいの!」
「終わったら教える」
「ありがとうなの!」
お前らは何を言ってるんだ? いやまあ、恐怖で震えられるよりは良いのかもしれないが。別な意味で震えそうだ。ぽよよんぽよよん。
「あいつだ! あの胸のデカい女だ! あいつが障壁を張っている。捕まえろ!」
普通に考えたらそんな障壁張れるやつが無防備なんてあるはずがないと思うんだけど、奴らは考えるのを放棄しているようだ。そりゃあイレギュラーな事ばかりだもんね。
「その胸、揉みしだいてくれるわ!」
「それは無理」
やはりというか予想通りというか、アスカの所に辿り着く事すら出来ない。何がしたいのだろうか?
そうこうしているとドアが開いてワカープロ司祭が姿を現した。なんだ? なんでこいつがここにいる? 戻って来る必要なんてなかったはず。
「主様、捕まえて来たよ」
よく見たらアリスが上から吊り下げていた。あ、追い付いたのか。
「孤児院の外に逃げようとしてたから先回りして捕まえて来た、気絶はさせちゃったけど別に良いよね?」
「そうだな。死んでなければ大丈夫だ」
アリスを撫でてやろうとしたが背が届かせにくい。まあいいかと思って手を引っ込めたら泣きそうな顔になった。あー、もう、仕方ない。
ぼくは手を伸ばすとアリスをしゃがませて頭を撫でてやった。
「よくやったな」
「えへへへ」
とても嬉しそうだ。
「アスカも撫でてやろうか?」
「不要」
にべもなく断られた。ならアカネは……身体が出来てからにしてやろう。というかハリガネ姿を見られたくないのかいつの間にか隠れてしまっている。さすが隠密特化。隠れるとわからんな。
「ミラちゃんも撫でようか?」
「仕方ないの。撫でさせてあげるの!」
とても偉そうだ。普通の雇用主と従業員なら解雇になっても不思議でない態度だが、ぼくの威厳の無さにその辺はゆるゆるである。というか締め付けるのとか体育会系のノリは嫌いなんよ。
お陰で孤児院の子どもたちからは舐められてると思う時もある。まあそれも親しさの裏返しと思うと怒る気にもなれない。
……嘘ですごめんなさい。距離感とか程度とか分からないから怒れないだけです。というか本体だと子ども相手でもあまり喋れないからね。大人よりは怖くないんだけど。
おっと、それよりも騎士と黒ずくめたちだ。襲撃が失敗してワカープロも捕まったから逃げ出そうとしている。いや、騎士は逃げちゃダメだろ!
「逃がさない」
アスカが風の牢獄で孤児院の外への出入りできなくしているから出られないんだけとね。孤児院内部には移動出来るんだけど、そっちにはアリスが回り込んでいる。
「くっ、こうなったら貴様を殺すだけでも!」
いや、ぼくを殺してもなんの意味もありませんよ。やけになってます?
「主様に手を出すな!」
アリスがやけくそで襲って来た騎士たちをぶん殴っておしまい。いや、その、力込めすぎなんじゃない?
「酷いの! 床板が壊れちゃったの!」
「え? あの、その、ごめんなさい」
「ちゃんと直すか弁償するかして欲しいの! 小さい子が引っかかったら怪我しちゃうのよ!」
「はい」
小さいのにしっかりしてる。うん、確かに小さい子には危ないよね。
「ふあ、なんの騒ぎで……何の騒ぎですか!?」
眠そうに目を擦りながらレナさんも起きてきた。そして寝ぼけ眼で部屋の様子を見てびっくりしたのだろう。
どこから現れたのか分からない黒ずくめと、司祭様とその騎士たちが転がっているのだ。いや転がってない奴らも居るけど。今更レナさんに飛びかかろうとはしない。
「司祭様!? 護様、これは一体……なぜ司祭様が倒れて……はっ、分かりました。この人たちは司祭様をさらおうとしたのですね!」
いいえ、誘拐犯の方です。さらわれそうだったのは子どもたちと貴女です。




