第百四十五話:神は言った。YESロリコン、NOタッチ
司祭様の趣味はまあそういうことで。
帰ってきたアリスが何かニマニマしている。何かいい事でもあったんだろうか。
「伴侶、うへへへ、伴侶かあ。いい言葉だなあ」
「アリス?」
「なんですか、あなた」
「あなた?」
「はっ!? あ、いえ、なんでしょうか主様!」
ううむ、どっか調子悪いのかな? これはメンテナンスをしないといけないかも。働かせ過ぎたか? でもアスカ使って時々サボってるみたいだし。
「うん、まあいいや。それでアカネ、調べたことを教えてくれ」
「こらーぼトカイウヤツハ、役人ヲくび二ナツテオリマシタ。ぼんどノ家ハ捜査ガ入ッテトリツブシ。残ルハぱっぷすダケデス。コチラハシズカ二シテオリマス」
アカネ一体だけでよくもこんなちゃんと調べられたものだ。かなり大変だったに違いない。早く肉付けしてあげよう。感度三千倍? そんなのはしません。
「闇ギルドでも大したこと無かったし、軍隊も全然だったからたかが商人なんて恐れる必要あるの?」
言う通りかもしれないが、窮鼠猫を噛むということわざもある事だし、追い詰められたら何をするか分からない。特にパップスの奴は商人としての基盤まで失った訳でも無いんだよな。
パップスは用心深い奴だった様で、悪事の証拠を自分の手代までしか辿れないようにしていた。だから「こいつが独断でやりました」という見え見えな言い訳に抗弁出来なかったんだ。
「本当にパップスは関与していたんだよな?」
「モチロンデス。ソレ二親玉ラシキ人物モ確認サレテイマス」
「親玉? そいつは誰だ?」
「真教司祭わかーぷろ」
真教というのはこの国の国教ではないが民の間に広く広まってる宗教である。孤児院のシスターとかもこの宗教に属している。まあつまるところ現実世界でのキリスト教みたいなものだ。なお、祀っているのはフォルトゥーナ様だと。まあちょっとバストサイズに虚偽があるのできっと違う神様だろう。多分。
「そんな司祭居たのか?」
「聖国カラ慰問シニ来テイマス」
「なんでそいつが怪しいと?」
「マズぱっぷすノ店二行キ、子供ノ引渡シヲ求メテマシタ」
おいおい、という事は子供は献上品ってことか? そうなると孤児院って安全でもなんでもないんじゃ? さすがにレナさんが子どもたちをどうこうするとは思わないけど。
「孤児院の様子やったら見れんで」
「アミタ、なんか細工でもしたのか?」
「こんなこともあろうかと、姉やんたちに持ってってもろうとったんや」
いつの間にかリビングのデカいテレビに映像が映し出された。画面に映ったのは優しそうな顔をしているおじさん。悪人には見えない。聖職者ってのはこうなのかも。イメージ的にはデブでぶよぶよしてる感じだったんだけど。以前のぼくみたいに。
「やあ、レナさん。聞いたよ災難だったみたいだね」
「ワカープロ司祭! ようこそいらっしゃいました!」
「良いのですよ。あなたは子どもたちに寄り添っておあげなさい。良ければ私も寄り添わせて貰えますか?」
「もちろんです。司祭様なら子どもたちも喜ぶと思います」
いそいそと中に招き入れる。いやまあ自分の宗教のお偉いさんが来たらそういう対応になるよね。
「これはあれだな。アリスだと問題が起こりそう。アスカ、頼む」
「了解」
「私だと問題が起こりそうってなんでですか!」
いやだって、普通に殴って解決するタイプの問題じゃないんだもん。というか下手すると罪人として断罪されかねないよ。相手は他国の重鎮、かどうかは分からないけど、とにかく一定の位がある人で、宗教指導者だ。
それからしばらく観察したけど孤児院は何事も無く日が暮れた。それで宿に行くとか貴族の邸宅に泊まるのかと思いきや孤児院で一夜を明かすそうな。聖堂騎士なる護衛まで連れている。
「アスカ、眠いかもしれないが見張りを頼む」
「ご主人様、私たち眠くならない」
そうだった。パペットには睡眠が不要なんだった。それなら見張っててもらおう。一応アリスも待機しといて。
深夜。草木も眠る丑三つ時とはよく言ったもので、特にコンビニの明かりやファミレスや自販機などもないと夜というのは静まり返るものだ。
そんな闇の中に動くものがあった。外から孤児院に入ろうとしているやつらは中に入ろうとしているが、やがて中にも内通者が居たのかすんなりと招き入れられる。黒装束に黒マスク。明らかに怪しい。
「食事に薬は盛ったな?」
「はい、ガキもオンナもぐっすり寝込んでます」
「さっさと運び出すぞ。こうなった以上、帝国ではしばらく活動出来ん。こいつらが最後の出荷だな」
「ガキはいいですが、このシスターの女は俺らにくれませんか?」
「ふん、成人した女に興味は無い。良いだろう」
ある程度言質が取れたのでそろそろ救出しますか。ぼくはアスカに明かりを灯す様に指示した。




