第百四十一話:I'll chisel your grave-stone. Sleep well.
持ちキャラはチン・シンザンでした。はたーほー。
「調子に乗るなよ、このアマ!」
次に出てきたのは全身黒づくめの男。あれはラバースーツなのだろうか。という事はこいつが恐らくさっきの電流の主だろう。
「雷電の魔道士と言われたこのオレが相手してやる!」
やる気満々だ。後ろの男はまだ動かない。
「そうだ、アクセル。貴様の電撃を見せてやれ」
「わかったぜ、まああんたはそこで見てなクラウザー」
どうやら後ろの男はクラウザーと言うらしい。SATSUGAIはしないよね? いや、闇ギルドだからするかも。
「オレの電撃は死ぬほどシビれるぜ! 間違ってもあこがれるんじゃねえぞ!」
そりゃ電気なんだから痺れるのは当たり前だと思う。まあ、パペットの二体には効かないんだけど。電気を大切にねってでんこちゃんも言ってるし。
「喰らえ、十万ボルト!」
この世界でも単位はボルトなのか、とか、黄色いピカピカ言うネズミみたいだなとかは個人的な感想だからおいておこう。ともかく、電流がアリスを包み込んだ。
「どうだ!」
いやだからね、相手の状態を確かめる前にそんなセリフを吐いて実際に有効だった試しは殆ど無いんですよ。
「あー、びっくりした」
来ると分かっててもびっくりしたらしい。いや、アリスの事だから来るとか考えてなかったのかもしれない。
「な、なぜ無傷なんだ!?」
いや、さっきのドアの時も無傷だったじゃないですか。それより多少……いや大分?威力が高まったとはいえ、そもそも電流自体が通じないんだって。
「電流ならこう。〈轟雷〉」
アリスの後ろの方でアスカが魔法を唱えた。凄まじいまでの雷がそこに顕現した。しかし、ラバースーツを着ているアクセルにはそんなに痛手になってないようだ。
「はっはっは、このオレに雷撃とは舐めた真似を! このスーツがあれば電撃は一切通用せんのだ!」
しかしアスカは構うことなく電撃を注いでいく。
「いくら強めても無駄、無駄、無駄なのだ!」
高笑いするアクセル。それでもアスカはやめない。そして呪文を維持しながら言う。
「そろそろ」
何がそろそろなのだろうか? よく見るとアクセルのラバースーツの表面が溶けている感じがする。確かにラバースーツは電撃は通さないが、熱は別だろう。コーティングされているのかもしれないが、長時間に渡って電撃を浴びせられるような事態は想定してないだろう。
「何がそろそろ……ん? なんか熱くなって、な、なんだこりゃあ!?」
どうやらアクセルも気付いたようだ。しかし、時は既に遅し。ラバースーツが溶けて地肌が露出した瞬間
「あぎゃあ!」
感電してそのまま倒れてしまった。ゴムの焼ける臭いがその辺に充満してるはず。いや、嗅覚オンにすれば感じ取れるけどそれだとアカネにも嗅がせる事になっちゃうしね。
「さあ、あとはあなただけだよ」
「そうだねえ。こりゃあ参った。私の負けのようだ。すんなり見逃してくれると助かるよ」
クラウザーさんは穏やかな口調で仰った。そうだ、この方に危害を加えてはいけない。丁重にしないと。
「アリス、アスカ、戦闘をやめろ」
「えっ、主様!?」
アリスがびっくりしているようだが当然じゃないか。クラウザーさんはこの世に必要なお方なんだから。少しくらい悪いことをしても許されるんだよ。
「聞こえなかったのか、戦闘をやめなさい」
「そ、そんな、なんで、なんでよ、主様!?」
なんか騒いでるな。それならこんなガラクタは要らない。廃棄処分にする事にしよう。そうだな。それがいい。そしてクラウザーさんに使って貰えるようなパペットを作って……
「旦那はん、ゴメンな!」
口の中に何かが突っ込まれた。ええと、何を飲まされているんだ? なんかこれ、苦いぞ?
「ぶえっ、何するんだよ、アミタ!」
「旦那はん、気分はどないや?」
「気分? ううん、不味いもの飲まされて最悪な感じ」
「向こうはどうなってるん?」
「え? アリスがラスボスのクラウザーとかいう奴をボコってる頃じゃないの?」
アミタに言われるまでもなく、ローレンスとアクセルは倒したからあとはクラウザーだけのはず。それも肉体系の能力は持ってなさそうだったし、時間の問題だろう。
「アリス姉さん、アスカ姉様、旦那はん戻ったで!」
「よし、大儀」
「えっ、えっ? アスカちゃん、アミタちゃん、どういう事?」
「姉様、ご主人様は操られてた」
「ええっ!?」
「あいつ、あのクソ野郎に惑わされてた」
! なるほど。つまり、アカネを介して奴の声を聞いたからぼくはあいつに害意を抱けず、むしろ護ろうとしたって事か! ううん、これは精神的なジャミングをちゃんとアカネに入れとかなきゃな。
いや、分身体には入ってるし、アカネはパペットだからそういうの効かないから入れてなかっただけなんだよ。そうか、こんな弊害もあるのか。




