第百三十五話:女性がお風呂から上がったらぐへへへ
あ、ご主人様ラブ勢はアリスだけです。他はちゃんと敬愛してるけど恋愛感情は無いみたいな。
お風呂から上がったレナさんとラナさんを見て、アリスがまた騒ぎ出した。
「お風呂まで!? 主様、何をするつもりだったの!?」
バカ、今ぼくは生身なんだぞ? 分身体はアミタにメンテナンスしてもらってるんだよ。
「わざわざ生身だなんて、きっと生身じゃないと出来ないことをするつもりなんだ!」
いやだから生身とかそういうのをバラすのはやめろ! いや、二人はポカンとしてるから聞こえてないのかもしれない。
「遮音結界してるから大丈夫」
「ありがとう、アスカ」
「私がマヨネーズ分を補給に来たのが原因。責任はとる」
こいつ、マヨネーズ食べたくて帰ってきたのかよ。孤児院はどうすんだよ!
「それは大丈夫。ちゃんと結界は張ってあるから余程の魔術師でないと崩せない」
「相手が貴族なら可能なんじゃ?」
「解呪に長けてるか、大陸を吹っ飛ばせるくらいの魔術をぶつけないと壊れない」
解呪に長けてる、というのがどれくらいのレベルか分からないが少なくとも力技で突破されることはなさそうだ。
「責任は取るって……身体で!? ダメダメダメダメ! お姉ちゃんは許しません!」
「アリス姉様、私はご主人様とマヨネーズなら迷わずマヨネーズを選ぶ女。姉様の心配は杞憂」
もう勝手にやってて欲しい。しかし困ったな。今から分身体を起動させる訳にもいかないし。なるべく話さないようにしよう。会話はアインに任せた。
「お風呂ありがとうございました」
「さっぱりした。ありがと」
「う、うん」
風呂上がりの女性が相手なら少しくらい緊張してる風でも疑われないはず! いや、実際は少しくらいどころの騒ぎじゃないんですけど。
(アイン、頼む)
(分かりました)
念話でアインに状況を説明してくれる様に頼む。やれやれこれで大丈夫だろう。
「では、今夜の夜伽の順番ですが」
「ええっ、そ、そんな。でも、そうね。タダで助けてもらおうなんて虫のいい話なんて無いわよね」
「レナ姉さんがそう言うなら覚悟を決めるぜ、そうだよな。孤児院のチビどもの為だもんな」
「そんな! アインちゃん! 一番は私、私なんだから! 他の子に主様の童貞は渡さない!」
お前らは何を言ってるんだ? というか、アイン! お前にそんなことをやれと言った覚えはないぞ!?
(この子たちの今後の処遇を話すのでしょう? でしたら慰みものか肉〇〇になるしかないのでは?)
(アホ! そんな事望んどらんわ。しばらくこの家で避難生活送って貰うだけだってーの!)
(それならご主人様がご自分で言えば良いじゃないですか)
(出来るか!)
ぼくがまともに喋れないからアインに喋らせようとしてるのに、自分でなんて出来るわけが……いや、まあ、分身体で大分対人会話にも慣れてきたと思うし、大丈夫なのでは?
「か、か、隠れてろ。な、何もするな」
少しどもったけどちゃんと伝えられたと思う。孤児院の件が片付くまでここに避難してもらえれば良いんだよ。ほら、危険が危ないからね。
そんなこんなでアインに客間を用意させる。レナさんとラナさんで一つの部屋だけど、まあ問題ないだろう。むしろ二人一緒の方が安心して寝られるだろう。
「ご主人様、こちらを」
「アイン、なんだこれは? ぼくには鍵のように見えるぞ?」
「もちろんです。あの二人がいる部屋の鍵です。内側から閉める閂の様なものはありませんので普通に鍵穴に鍵を差し込めば開きます」
「要らんわ!」
アインを叱り飛ばしてると、後ろからアリスがモジモジしながら鍵を渡してきた。
「主様、部屋の鍵です。その、鍵は特にかけてませんので何時でもお待ちしてます」
いや、鍵かけてないなら合鍵いらないよな? というかそれ以前にアリスはアスカと孤児院に戻れ。
「そんな!? そんなにあの二人が良いんですか?」
「違うわ! お前の仕事はなんだったか?」
「孤児院の子どもたちを守る事、です」
「分かったら仕事しろ!」
「ふえーん」
アスカはマヨネーズ分をしっかり補給出来たのか満足気にしている。アスカも結界貼ってても持ち場離れるのはなしだからな。
「アイン、なんであんなことを?」
「ご主人様はもっと人間になれるべきだと思いました。ショック療法です」
「誰に言われた?」
「フォルテ様に」
とりあえず縊り殺すかな。あれでも女神の化身だし、殺せないんだろうなあ。ぼくが降りる時もマンガ読みながらジュース飲んでたし。
「旦那はん、仕上がったで。戦闘能力は無くて良かったんよな?」
そうこうしてるとアミタが分身体のメンテを終えて上がってきた。あの二人が居るかもだから一緒には持ってこなかったんだと。こうでなくちゃ。部屋に戻ってチェックしてみると異常は特になかったようだ。心做しか関節の動きがスムーズになった気がする。




