第百三十四話:お家にご招待。とりあえずお風呂どうぞ。
なんか不倫相手を連れ込んだみたいに言われてますが(笑)
その後も「もしかして、レナ姉さんのカレシだったりする?」とか聞いてきたりしてきた。いや、レナさんは美人だと思うよ、客観的には。
トペ、いや、ラナはそういうのが好きな様だ。しかし、ラナにレナか。リナとかルナとかロナとか出てくるのかね? いや、本当の姉妹じゃないんだろうけど。
「こちらですか?」
ガチャッと扉が開いて女性が入ってきた。噂をすれば影が立つ。レナさんだ。
「レナ姉さん!」
「えっ、本当にラナだわ! あなた、仕事は?」
「何言ってんだよ、姉さん。あの仕事はやべえやつだったから逃げてきたんだよ!」
「そんな!? で、で、でも、ほら、真面目そうな方だったし」
どうやら見掛けは真面目そうな好青年っぽいな。いやいや、詐欺を働こうとするやつほど身なりを気にするんですよ。
「あの人は雇われた迎えに来るだけの人。店に着いたら首輪つけられて奴隷の様に働かされたんだから」
「えっ? でも、あなた今首輪つけてないわよね?」
「……伽をするのに首輪は邪魔だと裸にされた時に取られたんだ」
「そんな!?」
「まあ、そんなバカやってくれたお陰で逃げ出せたんだけど」
どうやらフードを盗んでそのまま逃げ出したらしい。で、衛兵に捕まった、と。どうやら刺したのは刺したけど、捕まったのは窃盗と無銭飲食らしい。
まあ普通に考えたら貴族の息のかかってる商人刺したら貴族の力で処刑されちゃうよねえ。いや、商人が刺された事を失態と思って報告していなければ処刑はされないか。
「レナさん、ラナさんを連れて孤児院に逃げられるとまずいことになると思います。ここは一時的に安全な場所に避難してもらいたいんですけど」
「そんな、避難する場所なんてどこにも」
ぼくは扉をそこに出した。突然出てきた扉にポカンとしている二人。
「さあ、行きますよ」
ぼく(分身体)は扉を開いて移動を……あ、ダメだ。そうだよ、一時的にでも認証しとかなきゃ使えないじゃん! レナさんとラナさんを認証! では改めて。ぼくのお家にようこそ!
「ええええええええええええええええええ!?」
二人の語彙力が消失した。ちなみに出口はリビングだ。部屋の中は適度な温度でアインとアミタがお茶をしている。いや、お前らお茶する必要ないだろ?
「おや、お客様ですか、ご主人様?」
「ああ、二人を頼む」
「かしこまりました。では先ずお風呂へ。ええと、そっちのフードの方は傷が全身にあるみたいですね」
きっとバカ商人に酷い目にあわされた傷なんだろう。よし、アンヌ、治してやって。
「まあこの位の傷ならオペするまでもないですね。はぁ」
ため息を吐きながら回復魔法を唱える。オペしたかったのか? そのうちにきりきざませてやるよ。
「では、傷も治った事ですし、お風呂へと参りましょう。入り方はこちらで教えさせていただきます」
アインが二人を伴ってお風呂場へ。ぼくは分身体をその辺に転がして生身で階下に降りる。
「おや、チーフ。珍しいですね。何か手術りますか?」
「なんだよ、その日本語は。ええとだな、この後、多分孤児院にバカが来るかもしれないからその時の衛生兵を頼む」
「私一人ですか?」
「出来るだろう?」
「もちろんです」
アリスが居たら多分普通に片付くとは思うけど、念には念を入れて。孤児院を守らなくちゃ。
「主様!」
何かがワープアウトしてきたと思ったら重めの質量がぼくにのしかかってきた。
「おい、退いてくれ、アリス」
「やです! アンヌちゃんやアインちゃんだけずるい! 私も主様とイチャイチャしたい!」
いや、別にイチャイチャはしてないんだが……ん? なんでアンヌが笑いこらえてんだ?
「だってアンヌちゃんが主様とイチャイチャしてるって自慢してくるんだもん!」
どうやらアンヌがアリスにあることないこと吹き込んだらしい。あの二人がお風呂から上がる前にアリスを孤児院に帰さないと大変な事になりそうだ。
「アリス、お前の任務は?」
「はい、孤児院の子どもたちを守ることです!」
「いや、分かってんなら離れてくるなよ」
「だって、誰も来ないし、そしたらアンヌちゃんが」
「確かにアンヌも悪いが持ち場を離れるのはやめてくれ」
アンヌは真顔に戻って「私は悪くないです」みたいにおすまししている。いや、どう考えてもお前が一番悪いからな?
一応念の為アスカをバックアップに置いてるからあんまり問題は……ん? そういやアリス、ワープアウトしてきたよね?
「アスカちゃん? アスカちゃんだったら台所でポテトサラダ食べてるよ」
なんでポテトサラダ? あ、マヨネーズか。ってそうじゃなくて、これじゃあ孤児院の守りがスカスカじゃないか! レナさんもここに居るのにどうするんだよ!
「え? 主様、レナさんをこっちに連れ込んだの? いつの間に……あのメス犬がっ!」
落ち着けアリス。




