第百三十一話:孤児院を守るのだ!
若草はファンタジーっぽくないので出ません。
孤児院の子どもたちに金網を編むのを頑張ってもらおう。うん、下手でもいいと思うよ。針金が多いところは大工さんがやるだろうし。みんなは針金を曲げて六角形を作ってくださいな。
おっと、孤児院の子たちだと針金が上手く曲がらない? それは仕方ないな。アリス頼んだよ。ねじってくるくる、ねじってくるくる。下手にやるとねじ切りそうだから慎重にね。アリスだとそのままねじ切りそうと思ったけど杞憂でした。ちゃんと力加減出来るんだな。
金網はかなりの量があるから大変そう。そうだ、この金網作りに日当出そう。そしたらもうお仕事って感じになるよね。
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
いやいや、お礼はあなたの身体でいいですからね。あ、身体って言っても十八禁展開じゃなくて金網作りのお手伝いね。つまり労働力。
そんな感じで頑張って編んでいるとまたバカどもが来た。今度は貴族を連れてきた様だ。本当に面倒くさい。
「何か用ですか?」
「何か用、じゃない。大人しく子どもを渡せ」
「えー、なんで子どもを渡さないといけないんですか?」
「何を言う。貴様らは孤児院だろう。という事はこの帝国の穀潰しだ。そしてワシは貴族。言ってる意味が分かるな?」
わかるわけが無い。いや、言わんとしてることは理解するんだけど、納得する訳にはいかないんだよ。
「そんな貴族の横暴というか横紙破りが通用するとでも?」
「なんだと? ワシは貴族だぞ? 偉いんだぞ?」
「偉い貴族なら何をやっても許されるんですか?」
「当たり前ではないか! 庶民など所詮我々の道具だ。ワシらが有効に使ってなんの不都合があるというんだ?」
あー、ヤダヤダ。選民思想の塊だ。帝国の膿はあらかた出し切ったんでは? あ、中立に甘んじてたんですか。つまりは日和見主義だと。
「さあ、こっちに来い!」
「いやあ!」
ちっちゃい女の子が腕を掴まれた。アリスがその男の腕を掴む。
「ん? 何しやがる!」
「その手を離しなさい。さもなければ痛い目にあいますよ」
「そんな訳ねえだろ! へっ、お前も一緒でも構わんぞ?」
「お断りします。私に触っていいのは主様だけです!」
アリスが思いっきり手を左右に開いた。ぶちぃって音がして片腕を引きちぎられた男がそこに転がっていた。
「あ、ああ、ぐあああああああああああ!?」
「あ、取れちゃった」
当たり前だ。くれぐれも子どもたちの腕は取るなよ?
「貴様! 貴族に楯突いてタダで済むと思うなよ? ボンド家を舐めるな! やれ、コラーボ!」
出て来たのは怒りに燃える貴族の私兵団。それと、それを指揮するこないだのバカ。
「うわっはっはっ。あの時大人しくしなかった事を後悔させてやる。やれ!」
兵たちが散らばっていく。この人数だと守りきれない。どうするかって思ってたら、孤児院全体に結界が張られた。
「間に合った、ご主人様」
ちょうどいいところでアスカが来た。一対一ならアリスの方が強いけど、集団戦の、しかも護りならアスカの結界が役に立つ。万一の負傷を考えてアンヌが居ればもう完璧だろう。
「な、なんだ? 壁? 見えない壁があるぞ!」
「ぶい」
さて、護りに意識を向けなくても良くなったので存分に叩きのめせる。まあ死なない程度にもんでやって。
三十分もしないうちに孤児院の庭には死屍累々の如き有様が。いや、誰も死んでないし、一番の重傷だったのは最初に腕を引きちぎられたやつだけどね。アンヌがちゃんと繋げました。
「き、貴様ら、こんな事をしてタダで済むと思っているのか?!」
さっきも同じことを聞いた気がする。いやまあぼくら帝国国民では無いですから別に帝国貴族だから敬うとかないですしねえ。
「とりあえずこいつら連れて行くか」
引き摺って着いたのは衛兵詰所。バカどもを引き渡しに来ました。
「何の騒ぎだ……あっ!」
「お、おい、早くワシらの拘束を解け!」
「はっ、ただいま!」
衛兵がボンドとか言う貴族の縄を解こうとする。いやいや、ちゃんと暴力振るったバカなんだから逮捕して取り調べてよ!
「貴族の方に対する不敬罪で逮捕する!」
あれ? 逮捕されるのぼくら? というかぼく? あっという間にぼくが取り押さえられた。アリスとアスカが助けようとしたけど、ぼくはそれを制止する。
「ちょっと捕まってくるから後はよろしく」
牢屋というものを見たかったからちょうどいい。どの道本体のぼくは家にいるんだし。何事も経験だよね。
「アカネ、聞いてるか?」
「ココニ」
念話でアカネに連絡を取る。こうなる前に肉付けしてやりたかったけど仕方ない。皇帝陛下のところ、いや、ヒルダさんのところがいいかな? そこにぼくが牢屋に入った事と、このままだと不可侵条約違反で宣戦布告するよって伝えといて。




