第百二十六話:ソース作りは千里の道
作り方調べて主人公には理解出来ないと分かりました。
「むほー! たまらん! うめー!」
女性にあるまじき声を上げてるのはアヤさん。いや、往来じゃないんで別に構いませんけど。あなた、初めてじゃないですよね? うちでも食べましたよね?
「少し味は濃いですがこれはフォークが止まりませんね。ついつい食べ進めてしまいます」
あ、ラケシス様もお気に召した様だ。ええ、味が濃いのでたくさん食べると飽きるんですよね。だからだいたいワンカップでお終いに
「おかわり!」
アヤさん、あなたは遠慮というものを知らないのですか? おかわりはありません。というか作る時に余分がないのは見ていたでしょうに。
「私は……いえ、もういいですわね。確かに濃い味ですけどこれはどちらかと言うとこのソースのお陰でしょうね」
おお、その通りですね。カップ焼きそばはソースを食べてると言っても過言じゃないです(偏見)
「あの、このソースを他の料理に使うことは出来ませんか?」
え? まあ出来ないことはないと言うか……ええと、ソースってどうやって作るんだ? 確か野菜とか果実とかだよな。あと食塩とか香辛料も入ってた気がする。もしかしたら他にも色々入ってるのかもしれない。どうしよう、ぼくでは答えられない。とりあえずアインに聞かないと。
「すいません。料理の事は分かりかねますので」
「そうですか。ですが、試してみたいのでソースをくださいませんか?」
どうやらやる気らしい。でも試す為に大量の廃棄を出すのはどうかと思う。となると代用品を渡すべきなのかもしれない。
「アイン、聞こえるか?」
「なんでしょうか、ご主人様」
「その、カップ焼きそばのソースを渡したいんだがあるかな?」
「まとまった量、という事でしたらウスターソースをベースに少量のケチャップとマヨネーズで整えれば良いかと」
「その比率は?」
「企業秘密なので自分で考えてくださいとでも仰ればいいです。というか小数点以下の数なんてこの世界にはないですから正確な数値は伝えても分からないでしょうし」
まあアインはパペットだから出来るところもあるんだよな。という事でウスターソース一瓶と、ケチャップとマヨネーズの小さいやつを出してやる。
「あの、これは?」
「ソースの元になるものです。この黒い液体がウスターソースと言ってこれだけでもいいと思います。あとはこのトマトから作ったケチャップと卵から作ったマヨネーズを少量加えてください」
「随分と面倒なのね」
「味の道は一日してならず、と言ってました」
ラケシス様は少し考えたあと、「分かりました」と言ってソースを受け取り、料理人に渡した。そりゃそうか。仮にも公爵家のお嬢様が自ら台所に立ったりはしないよなあ。
まあせっかくウスターソース出したことだし、ウスターソース使った料理でも。え? ああ、普通の野菜炒めですよ? ドバドバかけて野菜炒めるだけ。……まあぼくがやると焦がす自信しかないのでアインに頼もう。
「分かりました。では作ってアスカと一緒に持って行きます」
ちょうどぼくのご飯を作っていたらしい。一品増えるだけなので大した手間ではないと。そして大した手間では無いけど食べて欲しいから二階に運んでおきますだと。まあぼくは二階にいるから一向に構わないんだけど。……カップ焼きそばの口だったんだけどなあ。でもウスターソースの野菜炒めあるならいいか。
とりあえず完成品をアインに持って来てもらって、実食。メンバーはラケシス様、料理人の人。料理長とかそんなランクの人だろう。そしてメイドのトップみたいなおばさん、あと執事の人。セバスチャンって顔してる。執事見たら全員セバスチャンって思えって感じだけど。いや、ウォルターとかギャリソンとか居るけどさ。
「ふむ。このソースというのは随分と濃い味になるのですな」
「そうですね。今までの野菜炒めよりもパンが恋しくなります」
「確かにさっぱりした味のものが欲しくなりますな」
本当はご飯の方が合うとは思うけど、今のところ米は主食としては卸してないからなあ。そのうち王国とか帝国でも生産し始めれば分からんけど。そもそもぼくらだけなら家の畑で十分だからそんなに要らないんだよね。あ、でもそのうち日本酒とか仕込んでみたいかも。いや、ぼくは飲まないけどね。
「それよりもこのマヨネーズと言いましたか? これは素晴らしい調味料ですな。普通にこのままでも使えますぞ」
そういえば異世界転生ものでのマヨネーズは世界を席巻する勢いのものだったな。あまりに凄すぎてマヨネーズを手から出すキャラもちらほらいた気がする。いや、手から出たマヨネーズなんて怖くて食べれないよ。
「このマヨネーズとはどうやって作るのですか?」
「ああ、ええと、作らない方がいいのではないかと」
「何故ですか!?」
料理人さん、興奮しないで。今説明しますから。




