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第百十四話:作れないと話にならないよね!

餡子自作すると熱いし蒸れるんですよね。

 王都の一等地はやめてもらいました。何故って従業員が通えないから。え? 面接会場? 商業ギルドに貸してもらってたよ。


 そこまで人通りが多くなくても買いに来る人がそこそこ居る様な店にしたいなと。そこまで稼ぎたい気持ちが高い訳じゃないからね。いや、稼げたらそれに越したことはないけど、帝国ばっかりだったから王国にも何かあった方がいいよねってレベルだから。


 という訳で商業地区の外れの辺りに。目立たない店構えが良いと思うんですよ。そこまで店舗も広くはしないし。で、売るものを作ってもらわないといけないから男性職員も含めて味見をしてもらう事に。ちなみにドットさんと言うらしい。


「ふむ、これは……甘いな」

「甘いのは苦手ですか?」

「そんな事はない」


 次々に手が伸びる事からきっとスイーツ男子なんだろう。というか甘いもの好きな男性も一定数居るよね。ぼく? ぼくは甘味よりもポテチの方がいいかなあ。


「ふぉおおお、なんでしょうか、これは! こんな、こんな、甘くて幸せなもの、食べた事がありません!」


 チヨちゃんが歓喜の声を漏らしていた。そりゃ孤児院だと大して甘いものなんか食べられないだろう。あって果物だ。それも自分で栽培してたり森に採りに行ってたりするやつ。


「すごい! これは売れますよ!」

「御屋敷でもこんなの食べた事ありません!」


 まあ貴族屋敷でも単なるメイドには食べさせないよね。他の人に比べたら果物とか口にする機会は多いのかもしれないけど。


「ああ、あの人にも食べさせてあげたかった」


 未亡人のハンナさんは重いからそういうのはやめて欲しい。旦那様は甘いものが好きだったのかな? あ、お酒飲み? それだとあまり……あ、いや、甘党でも酒飲みは居ないこともないな。


「では、皆さんには今からこれを作ってもらいます」

 

 ちなみに場所は王城である。店が完成するまでどこかで作る練習したいと言ったら快く城の厨房を貸し出してくれた。その代わり、作ったものの味見をしたいんだと。いやまあ、上手く出来るかわかんないですよ?


 と言ってもキモは餡子だ。餡子の作り方は小豆煮て砂糖と練って混ぜ込むだけだからなあ。まあその辺の具合もあるんだろうけど。そもそも小豆も砂糖も満足にないんだよね。うちは自家栽培だから何とかなるけど。今もゴーレムが畑で作業してくれる。ゴーレムの数も増やしたし、畑も拡げた。


「できました!」


 一番に完成したのは町娘のポーリー。宿屋の自宅で料理の手伝いをしていたんだとか。道理で手際がいいと。


「じゃあまずは試食を」

「いただきます! この餡子、甘い!」


 餡子だけ食べるのはどうかと思うけど、味見だからね。これから作ってもらうよ。じゃあ薄皮まんじゅうかな。小麦粉で皮作って餡子転がして蒸すだけだもんね。


「私、あんぱんに挑戦したいです!」


 精力的な十歳のチヨちゃん。パン生地は捏ねたことがあるんだって。孤児院だと自分たちでパンを焼いてるみたい。窯とかあるのかと思ったらそういうのじゃないんだって。まあ、イーストも使ってないみたいだしなあ。


 という事でパン生地をこねこねこねこね。酵母も入れてこねこねこねこね。ドライイースト買っても良かったけど、なるべく現地品でやろうということで、リンゴを使って酵母は作ったよ。というかアインが作ってた。まだまだあるから分ける分には問題ないんだと。


 そして餡子を入れてオーブンにイン。じっくり発酵を待って点火。強火で十五分くらい。あ、天板にくっついてる。しまった油ひいてなかったか。まあでも今食べる分には問題ないな。


「ほら、チヨちゃん、食べてみて」

「いただきます!」


 ワクワクしながらかぶりつくとほわんと幸せそうな表情になった。これは大丈夫そうだな。ええと、そこで今にもヨダレを零しそうなラケシス様と王妃様、それからアヤさんも食べますか?


「是非!」

「そ、そんな、王族の方に食べていただくなんて恐れ多い……」

「構いません、いえ、構うものですか! 私に甘味を、ハリー、ハリー、ハリー!」


 いや、アヤさんは王族でも貴族でもないですよね? いや、貴族なのかな? 帝国宰相と仲良いんだし。


 甘味に飢えた女性たちはたちまちテーブル上を蹂躙していった。アヤさんはわかるんだが、ラケシス様まで。王妃様も王様に見せられない姿をしていると思います。ぼくとしてはそっと見なかったふりをするべきなんでしょう。


 そんなこんなで試食会兼職業実習は成功を迎えたと言ってもいい結果に。あとは本格的に店が出来てからですかね。その前に晩餐会があるんだけど。


「晩餐会にこれらの品を出すことが出来ますか?」


 皇太后陛下からお声が掛かった。あ、いや、別に構いませんけど、なんなら別のお菓子でも。


「まだ別のお菓子があるというのですか!?」


 びっくりされちった。

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