第百六話:再会、嵐の運び手
彼らも成長しました。
という訳で再びの王都。色々思い出があるけどまずは冒険者ギルドに。嵐の運び手のみんながいるといいなあ。
「こんにちは」
「はい、冒険者ギルドへようこそ。ご登録ですか?」
「あ、いえ、ちょっと冒険者の方々を探していまして。嵐の運び手というパーティなんですが」
「あなたがたも指名依頼ですか? 今あのパーティは人気が高いんですよ」
どうやら躍進してるらしい。まあうちに来た時に時々アミタの作った武器とか防具とか実験台になってくれてたからなあ。そのまま持って帰ったりとかしてたし。あと、アリスとかアスカと戦闘訓練とかしてたなあ。
「で、今は連絡取れないんですか?」
「そうですね、そろそろ依頼から戻ってくるかと」
「ただいま戻りました!」
その時バタンと冒険者ギルドの扉が開いてリックが姿を現した。おお、帰ってきたんだ。ちょうど良かった。
「嵐の運び手の皆さん、おかえりなさい。ちょうどお客さんが来てますよ」
「俺たちパーティに? 困ったなあ。一見さんにはちょっと遠慮してもらわない……と……」
「お久しぶりですね、リックさん」
「あ、あ、あ、あ、あ、アインさん!?」
「お忙しそうで何よりです」
「なんや兄ちゃんらも成長したんやなあ」
「うーん、それにしてはあまり強くなってないような」
「姉様、そんなことをはっきり言ってはいけません」
次々とみんなが口を出し始める。まあこの子達にとってもそこまで気を使わなくてもいい相手なんだろう。いや、ぼく以外に気を使う相手が居るのかと言われたら多分居ないんだろうけど。そこはぼくの気持ちを斟酌してくれて居るのです、きっと。
「アリスさんに、アスカさん、アミタさんまで……あの、もしかしてまた焼き鳥を売りに?」
そういえば前の時は焼き鳥販売だったな。全然違います。
「今日は別件ですね。こちらへ」
「うむ」
「こっ!?」
リックさんが叫ぼうとしたので慌てて口を塞がせる。アリスありがとう。背を高く作ってて良かったよ。低かったら口封じするのに首の骨をやっちゃうところだった。
「それでは我々は旧交を温めることにしますので失礼します」
そのまま冒険者ギルドを出た。外に出ると他の人たちが待っていた。口を塞がれているリックさんを見て戦闘態勢に入ろうとしていた。
「ちょっと、リックを放しなさい!」
「エルさん、落ち着いて」
「え? なんで私の名前……あっ、アリスさん!?」
「はい」
どうやらちゃんと誤解は解けた様だ。そのまま移動しようとしたけど叫ばないからと口を塞ぐのをやめてと懇願されてしまった。いや、叫ばないなら口は塞がなくていいよ。
「ここだとなんだから個室の取れる店に行こう」
リックさんの案内で一軒の店屋に入る。割と高級そうなレストランだ。
「依頼の時とかに使ってるんだ。秘密の依頼とか受けるからな。料金はお高いが」
「大丈夫ですよ。こっちで持ちますから」
こっちの事情なんだからこっちが持つのがスジだろう。まあパペットほど高くないだろうから問題は無いだろう。
「それで、なんで帝国の皇帝陛下がここにいらっしゃるんですか?」
なるほど、リックにはバレていたらしい。まあ叫ぼうとしたもんな。
「帝国での政変があったということに関係してますか?」
「うむ、まあ関係あると言えばあるな」
という事で秘密裏に条約を結ぶ計画がある事を話す。まあその前段階の偵察なんだけど。実際に皇帝陛下が来てるんだからそのまま条約結んでも構わないよね。
「なるほど。帝国のとの条約が結ばれれば行き来も簡単になるでしょうしね」
「うむ、さすがに帝国もうかうかしておれん。それゆえ王国の様子を見に来たという訳だ」
それでも皇帝が直接来ちゃうのはどうかと思うけど。それもお忍びで。
「皆さんには皇帝陛下……ここではライルと名乗ってますが、彼とパーティを組んでもらいたい。飽くまでフリですけど」
「護衛、という事ですか? それはまた」
「それで、ぼくたちの護衛として王宮について来て欲しいんです」
「ああ、なるほど、潜り込む訳ですな」
「その通りです」
ぼくらは王宮にもフリーパスになるような許可を貰っている。その護衛だからみんなも大丈夫だろう。これでノーチェックで王宮に入れる。
「皇帝陛下だけが護衛というのはダメだったのですか?」
「皆さんなら前にラケシス嬢にも会ってますからね。また護衛に冒険者雇ったなら不自然ではないでしょう」
「なるほど」
「それに実績もない冒険者が護衛では説得力がありません」
「まあその点、俺たちはメキメキと力つけてますからね!」
「装備が好調で何よりや」
「そうだね、鍛えた甲斐があったよね」
「……はい、感謝してます」
リックさんが少し小さくなった。他の人も同じく。そんなに恐縮しなくても。




