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第百二話:王国との和解

皇帝「私自らが出る」

 さて、グランプル公だが、あの時部屋で炊いていたのが違法薬物だったらしく、いくら公爵でも情状酌量の余地なくお縄に。クスリ、ダメ、ゼッタイ。


 アーニャさんは意識を取り戻して起きるなり、近くにいた人をホールド。たまたまそれがアヤさんだったから事なきを得た。その位置にはぼくが立っていたんだけどなんか後ろから引っ張られた気がする。


 トーマスとサラはエレンと再会して大声で泣いていた。うん、トーマスは頑張ったよ。エレンはトーマスが刺されるところも見ていたらしく、ぼくらから無事は聞いていたものの、実際に会って感極まったようでボロボロ涙を流していた。サラはすごく嬉しそうに二人の間に挟まれていた。


「まあそんな訳だからグランプルのやつを処分出来て助かった。ありがとう」

「皇帝陛下に例を言われるなんて気味が悪いですね」

「まあそう言うな。ところで、現場に居たという謎の男は誰なんだ?」


 どうやら分身体セ○ールバージョンが謎の男になってるらしい。誰だも何も通りすがりのセ○ールだよ! って言っても多分通じないんだろうなあ。


「うちのエージェントです」

「派手に転倒していたと聞いたが?」

「……エージェントです」


 誰も見ていなかったはずだろ!? グランプル公か? やつが言ったのか? いや、やつも転んだところは見てなかったはず! あ、エレンの証言ですか。そうですか。まあ帝国民としての証言義務なのかな? まあ、ぼくの分身体っていうのを秘密にしてくれただけ良しとしよう。


「それでこの度の功績を称えてマモォールに爵位をだな」

「いやだから要らないですって」

「そう言うな。伯爵までならノータイムで授爵してやるぞ?」


 どんだけだよ! と思ったら、今回の件でグランプル公についた貴族が多くて、その際に調査したら少なくない貴族がおくすりやってたんだって。だから今貴族街は粛清の嵐らしい。


「身内の恥を晒しているようで非常にいたたまれんのだが」

「陛下がもう少し真面目に書類に目を通していただけてたら防げたものもあったかもしれませんね」

「ぐっ!?」


 辛辣なヒルダさんの言葉の刃が皇帝陛下を抉る。確かに皇帝陛下、奔放すぎだろって思ったけどさ。暇さえあればビール飲みに来てるんだもん。


「ま、まあ、これからは真面目に政務をするとしよう。そう言えばこれで後宮もかなり空きが出来たな」


 貴族の粛清の嵐は後宮にも及んでいた。実家が加担したものは後宮から追い出されたのだ。もちろんそれに伴うある程度の支度金は渡してるらしいが。


「さすがにあんまりでは?」

「いや、これはやらねばならん事だ。父親や祖父の仇に嫁として、子どもとして侍るというのは辛いことだろう。我らの方もピリピリせんといかんからな」

「そうです。むしろ族滅した方が良かったと思うのですが、女子どもに罪はないと陛下が」


 割と暴君かと思ったんだけどそうでもなかったみたいだ。


「なので暫くは外部侵攻できん。そこでだな、マモォールよ、お主に頼みがある」

「ぼくに?」

「そうだ。お主は王国に伝手を持っておると聞く。それで我を王国に連れて行ってくれんか?」


 王国にって……おいおい。いやまあ入るくらいはこっそりやればいいんだろうけど、その辺の潜入とかやれる気しないよねえ。


「まあ万一見つかっても余程の過激派でなければ命を狙ったりはせんと思うが」

「それでも十分命の危険はあると思いますよ」

「頼む。どうしても王国との和議をなさねばならん。だが、堂々と乗り込むと戦支度と捉えられかねん。平和裏に成し遂げたいのだ」


 皇帝陛下が深々と頭を下げた。まあ帝国の疲弊は多分思った以上に深刻なんだろう。


「分かりました。ええと、とりあえず王国に行ってみてそこから考えましょう」

「おお、助かる」

「ビールは禁止でお願いします」

「うぉい! それはいくらなんでも殺生ではないか?」

「酒飲みながら和平交渉やるバカがどこにいるんですか」

「酔えば酔うほど舌が回るのだ!」

「舌は回っても呂律が回らんでしょうが!」


 ヒルダさんと皇帝陛下の漫才が始まってしまった。いや、ぼくとしては酒でも酌み交わして和平交渉ってのもありだと思うんだけどね。まあそんな段階でもないか。


「それから王国には私とアヤも行きますから」

「いや、お前らに抜けられたら国が回らんではないか」

「私の部下は優秀なので一年二年私らが居なくても何とかなります」

「それなら我が書類仕事頑張らなくても良くない?」

「決裁は陛下のお仕事でしょうが!」


 とりあえず皇帝陛下を王国に連れて行くか。どこで○ドアはちょっとオーバーテクノロジーだからやめとこう。転移も今更だけど無しだ。下手すると小間使いにされるから危険もある。


 という事で馬車である。おしりが痛くなる馬車である。道が凸凹だから尻に衝撃が直結してる馬車である。いや、ネットスーパーで頼もうとしたのよ? 二百万とか五百万とかで馬までは売ってなかったんだよね。自動車はオーバーテクノロジーだからパス。

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