第百話:助けに来ました、誰なのか分かられてないけど。
そりゃ面接時と顔も形も違うもんなあ。
「もうやめてください!」
三階の奥の部屋からエレンの声が聞こえた。どうやら何人かと言い争いになっている様だ。
「へへっ、旦那。こいつ、あの小娘が手に入ったら俺たちの好きにして良いので?」
「構わん。そこまで育ってしまったら興味もわかれないだろう。いつも通り処分しろ」
「へいへい。まあこの女は子供産んでるから具合は良いだろうぜ」
「我慢出来ねえ。今すぐ犯していいか?」
「バカ、お前のイチモツなんか誰も見たくねえよ。それにあのガキを連れて来なきゃならんだろうが。あのフニャチン亭主め」
「主人はフニャチンではありません!」
なんか頭が痛くなるような感じのやり取りだ。そうか、トーマスはフニャチン仲間じゃないのか。あ、いや、ぼくもフニャチンじゃないよ! 比べた事はないけど。
「主様、あいつらバラバラにしてもいい?」
「さすがにバラバラ死体は気分が悪くなりそうだからなるべく無しで」
「ちぇっ、女の敵なのに」
「短小早漏包茎フニャチンのご主人様も女の敵だと思います」
「おい、アイン!」
「あ、主様が女の敵になるのは都合がいいかなあ。独り占め出来るもんね」
「姉様」
フォローになってないよ! とはいえこのまま行くのもなあ。よし、ここは耐久力だけ優れてて運動神経が繋がってないぼくが囮になろう。
「主様、そんな危ない事しなくてもちょちょっと暴れてくれば問題ないよ?」
「エレンが居るからなあ」
「え? それこそ問題ないよ?」
「アリスはここに何しに来たのかもう一度確認してみようか」
「主様の奴隷を奪ったバカを殴りに来た」
そこにエレンに対する配慮とかないのかな? 助け出せたら結果オーライとかいう乱暴な手は取りたくない。
「アインはここで待機。そんでスナイパーライフルの方を出して適宜狙って撃って。アリスはぼくと一緒に行くよ」
そしてドカンとドアを蹴り開けて、部屋の中に入った。
「フリーズ! 観念しろ。後はお前たちだけだ!」
いきなり飛び込んで銃を突きつけるとか下手に動けないに違いない。
「くっ、バカどもが! やれ、やってしまえ!」
一番偉そうなメガネ執事が号令をかけると周りにいた奴らが向かって来た。向こうの方にはエレンが黒ずくめに捕らえられている。更に奥には扉が。もしかしてアーニャさんはあそこか?
「死ねおりゃ!」
先頭の男がぼくに殴りかかってくる。普通に受けると痛いので華麗に避けようとする。足がもつれて転んだ。結果的に攻撃は避けられたんだけど。一応セ○ールは丈夫だからそんじょそこらの武器だと傷すらつかないんだよね。
「なんだこいつは。得体の知れねえ動きをしやがっ」
そこまで言いかけたところで銃弾が飛んできて、男を撃ち抜く。他の奴らも二人三人と倒されていく。足が止まったところにアリスが暴風の様になぎ倒していく。これで残るはメガネ執事だけだ。
「な、なんなんだ貴様ら! ここがどこだか分かってるのか?」
「誘拐犯の家だろう? そこのエレンとアーニャさんを返してもらおう」
「くっ!」
メガネ執事はエレンに駆け寄ってナイフを取り出した。
「近付くな! 近付くなよ。俺のナイフがこの女の顔を切り刻むぞ」
「それだとお前が助からなくないか?」
「バカめ。死なば諸共だ。貴様らに消えない傷を残してやる。特にそこの男はこの女の亭主だろう?」
「なっ!?」
「はい、そうです」
震えながらエレンが乗っかった。アリスが今にも噴火しそうに……あ、なるほど、そういう事か。
「誰がエレンの亭主だ! 主様は主様だ!」
アリスの怒りの導火線に火がついた感じだ。そこまで二メートルくらいあったのに、あっという間に間合いを詰めてメガネ執事を殴り飛ばした。
「へぶぅ!?」
「さあ、エレン? 覚悟は出来てるよね?」
「ストップ、ストーップ。アリス、ステイ!」
「なんで止めるの、主様! はっ、もしかしてもう既にそんな関係?」
「違うわ! あれは相手の油断を誘うための嘘だ。そうだよね、エレン」
「はい。あの、ところでハンサムなあなたはどなたでしょうか?」
あー、ぼくって認識してなかったのね。通りすがりのセ○ールです。
「え? エレンさん、この人が主様って分かってなかったの?」
「ええ? ご主人様なのですか? あの、面接していただいた時とは随分面変りをなさいましたね」
違うからね。まあ、あれだ。説明はアーニャさん
助け出してからだよ。それとエレンは向こうにアインがいるから一緒に居て。アリスはぼくと一緒に奥の部屋。
「分かりました、主様!」
奥の扉を開くとそこはなんか香の様なものが炊かれているのか少し煙い。いや、セ○ールには通じないんだけど。
少し薄暗い部屋に目が慣れてくる(ぼくは画面越しに見てるからね)と、部屋の真ん中にはベッドが置いてあり、裸で横たわるアーニャさんと好色そうな老人がそこに居た。




