第十話:作ろう家庭菜園(畑)
野菜も摂らなきゃね。
なんということでしょう! ハリガネフレームは何処へやら。目の前に居るのは銀髪ロングのメイドさん。時は止められないと思います、多分。
アインはぼくに改めてカーテシーで挨拶してきた。メイド服でカーテシーされるとスカートの中から手榴弾とかが出てきそうで怖かったりするんですが。
「アインです。改めてよろしくお願いします、ご主人様」
「え? あ、ああ、よろしく頼むよ」
「家事から夜伽までなんでもどうぞ。あ、夜伽の時は準備とかありますんで早めに言っていただけると。あと、動くのだるいんでご主人様が頑張ってくださると」
ええい、やらん、やらんわ! そういやパペットってそういう機能ついてんの?
「あー、まあ愛玩用の特化タイプなら。TEN○Aみたいなもんですよ」
まああの縞模様なら愛用してたやつもあるから抵抗はないけど。いや、そういうこっちゃない。という事はアインにもそしてもちろんアリスにもそういうのはついてないんだな。あ、フォルテはサイズ的に無理って分かってるから。
「これで二体目かあ」
「遅いか?」
「え? いや、早いと思うよ? だって一体一千万だもん。普通は直ぐには貯まらないからね」
まあぼくの場合は獲物の方から運良く来てくれたんだけど。今ではアリスが頑張って狩りをしてくれるからなあ。ん? 今度はぼくの身体が光ってる?
「おお、護さんもレベルアップですね」
「いや待って? ぼくもレベルアップするの? 何にもしてないよ?」
「家のテリトリーから出ないで一定期間過ごしたんでレベルが上がったんですよ」
なんじゃそれ。まあ、よく考えてみたら引きこもりとしてのレベルが上がるのは引きこもり期間に寄るのは当たり前なのかもしれない。
「レベルが上がるとどうなるんだ?」
「家が色々便利になります」
「ほほう? いや、何が変わったんだ?」
「何が変わったのかは見てみないと」
各部屋を見て回るが何も無い。何が一体変わった……あれ? ○ンバ一台しか買ってないのになんで部屋にもう一台あるんだ?
「もしかして、レベルアップ特典って○ンバ?」
「なんだよ畜生!」
分かってたら○ンバ買わなかったのに。そのお金でフィギュアをだな……
「まあまあ、一階と二階を○ンバが移動するのも面倒でしたし、各階にあるのは問題無いですよ」
「ううっ、まあ良いだろう。最近はアリスのお陰で大分余裕も出てきたしな」
連日肉を取ってきてくれているアリス。捌くのはアインがやってくれる。なかなかいい分業だ。しかし、ぼくはここに新たな試みを投入する。それは……
「今日はアリスに開墾してもらう」
「開墾ですか?」
「そうだ。野菜とか育てる。通販の野菜は高いから」
というかアインが野菜を使って料理をしたいと言ってきたのだ。それなりに野菜は使わせてきたと思ったんだけどよく見たらキャベツを千切りしてただけだった。あとはもやし。
通販で色んな植物の苗やら種やら買ったからすぐにでも育てられるぞ。まあ収穫まで時間は掛かるだろうけど。
ぼくは外に出たくないので家の周りを窓から見る。そしたらフォルテがまた変な踊りを踊ってくれてパソコンで家の周りが確認出来るようになっていた。いや、これ、衛星カメラみたいな? 原理はわからん。フォルトゥーナさんにでも持ってもらってんの?
そこで見たら裏庭にちょうどいい感じの原っぱが。よし、まずは草を抜こう。アリス一人にやらせるのはどうかと思うんで建設機械を導入……え? 必要ないの?
アリスはどこからか拾ってきた鉄の板を地面に突き刺すとそのまま草をなぎ倒していった。ブルドーザーかな?あらかた片付いた時、アリスに耕すから道具をくれと言われた。よし、今度こそトラクターで……やっぱり必要ない?
アリスは鍬だけ欲しいと言うので買ってやった。そうするとものすごい勢いで農地が出来上がっていく。耕した端から堆肥を投入。そして畝を作って植えていこう。……アリスが。
アリスは細かい事は苦手だと言うのでアインにも出張って貰った。さすがメイドさん。細かいところにも手が届く。あっという間に植え終わった。
植えたのは人参、じゃがいも、玉ねぎ、ネギ、大根、そしてぶどう。まあ急場しのぎにはじゃがいもだよね。まあ三、四ヶ月はかかるだろうけど。まあそれまではアインには我慢してもらおう。
翌々日。全部が生ってた。何言ってんだとか思われたかもしれないが、人参もじゃがいもも玉ねぎもネギも大根もそしてぶどうも全部生っていたんだ。
「これも引きこもりの能力ですね」
ぼくがびっくりしてるとフォルテが教えてくれた。どうやら家の周りで育てた植物は引きこもりを支援するために早く育つらしい。引きこもりだと八百屋に買い物にも行けないだろうって? いや、その通りですけど!




