第一話:ぼくの人生
新連載始めました。どれくらい続くか書いてみたいと思います。
ぼくは生まれてこのかた、真面目だけが取り柄で生きてきた。運動は苦手だったので小学生の頃からモテる事はなかった。足も遅かったしね。でも物心つく頃から勉強はしていた。本を読むのは好きだったので教科書を先に読み進めていた。当然ながら勉強は良くできた。クラスメイトはぼくのことをガリ勉と呼んでいた。
小学生も高学年になってくると好きな女の子とか出来たりする。ぼくも例に漏れず好きな子は居た。でも、その子はクラスで一番足の速い奴が好きだったから片思いで終わった。
それでもその子が忘れられずに私立じゃなくて公立の中学に進学した。そこはとんでもない不良学校になっていて、同級生は不良になるか、小判鮫の様に便乗するか、搾取される側にまわるかの三択だった。ぼくは何もせず勉強ばかりしてたので搾取される側だったよ。
毎日の様に殴られてお金を取られたりした。親の財布から抜いてこいと言われたり万引きしろって言われたりしたけど、そういうのはしたくないとつっぱねたら骨折するぐらいにボコボコにされた。そして、そのボコボコになったぼくを見て片思いしてた女の子はみっともないと笑ったのだった。そしてぼくは意識を手放した。
この事が元で学校でのいじめという名の暴力犯罪行為が緩和されたのは不幸中の幸いだったと言えよう。ぼくは先生から監視されていたのだ。何しろ勉強だけは出来る。学区内の公立高校のトップに合格確実になるくらいに。この高校にどれだけ生徒を排出したかで学校の評価も決まるのだ。
そして受験当日。ぼくは三十九度の熱を出した。それでも受験はしたが熱で頭が朦朧として何を書いたのかも分からず、高校には落ちた。ぼくはすべり止めに受かっていた私立高校に行く事になった。まあ、家からは近かったのでそっちの方が都合良かったんだけど。
高校に入ってひたすら勉強した。今度の大学受験は失敗する訳にはいかない。そう思って高校の三年間を勉強に費やした。その結果あって地元の国立大学に合格。下手な都会の私立よりも喜ばれるし、就職も選り取りみどり。両親も喜んでくれていた。
大学では単位を一生懸命とって遊んだりすることもそんなにしなかった。唯一遊んだのはネトゲ。と言ってもVRMMOみたいなコミュニケーションが必要なものでは無い。勉強しかして来なかったのでそういうのは苦手だった。主に育成系のゲーム。
大学を卒業してそれなりの企業に就職は決まったが、回されたのは営業。ぼくには営業は向いてなかった。そんな中で心を病み、会社を辞めざるを得ず、ぼくは引きこもりになった。両親はそれなりに資産を持っていたので問題はなかった。
少しずつ社会復帰しようと頑張っていたところに、両親が事故で死んだという訃報がもたらされた。ぼくは全てに絶望して更に引きこもりになった。両親からの遺産はある。買い物はネットスーパーで十分。そんな感じで家から一歩も出なくなって十年以上が過ぎていた。ぼくは突然の発作で倒れ短い生涯を終えた……はずだった。
「目覚めましたか?」
「ひっ、不法侵入!? あの、どどど、どなたですか?」
その時のぼくのテンパり方はかなり面白かったと女神様は後に語ってくれた。そう、この人は女神様だったのです。
「私はフォルトゥーナ。いわゆる幸運の女神です」
「女神様……幸運の?」
「はい、そうです」
「間に合ってます」
「え? ちょ、ちょっと待ってください!」
勝手に家の中に入って来て自分を女神だと名乗るトーガを身につけた頭のおかしい女性だなんてさっさと家から追い出すに限る。家から追い出す……あれ? ここはどこなんだ? なんか周りが白いんだけど。
「ようやく気付きましたか? ここは生と死の狭間の世界、いわゆる神界の私の部屋です」
「えーと、つまり、ぼくは誘拐されたんですか? お巡りさん、こっちです!」
「お願いですから話を聞いてください! あなたはもう死んだんです!」
叫ぶ様なフォルトゥーナさんの言葉にぼくはガンと頭を殴られた気がした。そうか、ぼくは死んだのか。まあ正直、父さんも母さんも死んでしまったし、生きていても何のいい事もなかったからなあ。
「わかったよ。それで死後の世界とやらがあるんじゃないのか?」
「あ、はい、それはその、ですね……あの、実はあなたに使うはずだった幸運の量が大量に余ってましてこれをどうしたものかと」
は? 幸運の量? いや、ぼくはそんなに生涯幸運には無縁で……ん? 「使うはずだった」って言いました?
「すいません! あなたに付与する幸運の量を二桁ほど間違えていました!」
幸運の量を二桁間違えた……つまり、ぼくの人生がついてなかったのはこの女神の仕業って事ですか?
目の前に土下座してるフォルトゥーナを見て、ああ、神界にも土下座ってあるんだなって取り留めもないことをかんがえたよ。