表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコ耳エルフのなえとこぴより  作者: 上村朱璃
第1章. 地上界はスローライフでね♥ Ⅰ
2/8

第002話.ただ今快眠中なの♡





 現在、神樹イグドラシルの巨大な花のおしべのベッドで。べりんはスヤスヤ……zzz とお昼寝中です。


 ピンクの羽根のモンピンチョウも、寝てるトコごめんね……とフワフワっとべりんを避けて花粉を集めに他のおしべに向かいます。


 行き掛けのお駄賃は、モチロンめしべのトロピカルな花の蜜ジュース!


「休憩もバッチリ取って、受粉のお仕事ヨロシクなのじゃ!」


 ベレンもその光景を見て、微笑みながらモンピンチョウ達の労を(ねぎら)います。




 神樹イグドラシルにとって、受粉の媒体はモンピンチョウを始めとする蝶々さん達。おしべで花粉をこねこねし、そのままめしべの所に行きます。


 めしべにしがみつきながら蝶々達がトロピカルな花の蜜ジュースに舌鼓を打っている間に、受粉が完了するって具合です。


 そんなにしがみついて大丈夫なのか、ですって? 大丈夫です、神樹イグドラシルの花なのでおしべが巨大ならめしべだって引けを取りませんから!


 でも、この場合の受粉は日本を始めとするこちらの世界の“受粉”とは少し話が違います。実は神樹イグドラシル、受粉しても種は付かないんです。


 イグドラシルは「神の樹」なので、神気を保有してます。神気とは大天使や女神、魔神、云わゆる“3大神族”と呼ばれる『神に限りなく近い者』のみが持つ事を許されている気です。


 ただし、この3種族は膨大な神気を常に放出しているが故に「存在している」だけで地上界に深刻なダメージを与えかねません。


 なのでこの3種族のみ、“天界”と呼ぶ別の世界で隔離され生活します。こちらの世界で云う「天国」と同義だと思って頂いて差し支えありません。


 しかし、神樹イグドラシルは自身では神気を生み出す事が出来ません。おしべとめしべが受粉する事によって、初めてめしべの花の蜜が『神気』を帯びるんです!


 そして、ベレンを始めとする花樹族の民はその“神気を帯びた花の蜜”を体内に摂取する事により神気を活動エネルギーとして使わせて頂いて生活しているんです。


 なので、花樹族にとって神樹イグドラシルは「手厚い信仰の象徴」そのものでもあるんです。


 この様に神樹イグドラシルは実をつけないので、この地上界で存在するのはこのたったひと株のみです。


 しかし過去に一度だけ、この神樹が日光を阻害された事により痩せ細って。受粉する事が出来なくなった為に神気の供給が滞り、花樹族が絶滅しそうになる憂き目を味わった事があるんです。


 あの時花樹族の民を絶滅から救ってくれた、とある少女の後ろ姿のシルエットのみ今でもベレンの目蓋の裏に焼き付いて離れません。今では名前どころか、存在さえ思い出せない少女……


「あれは幻だったのか……な」






 べりんは、スヤスヤとお眠りしながら鼻だけクンクンと匂いを嗅いでいます。


「あ……これはモンピンチョウの匂いなのらぁ~。甘くてイイ匂いれすぅ~」


 しかし、そこに闖入者が現れます。ファサッ、ファサッと飛んで来たのは……何とリリス達! 寝ている者の夢をイジりイタズラする、狡猾な夢魔です。


 どちらかというと精気を吸い取る厄介者のイメージがあるのはインプやサキュバスの方なので、ただイタズラをしに来ただけみたいですね。でも、コイツらがイタズラをしに来たって事は……


「あぁ~、クサイ匂いがぁ……」


 べりんは夢を見ながら、鼻をカキカキ悶絶しています! そして目が醒めたらしく、重い目蓋を人差し指でゴシゴシ擦りながら……


「り~り~しゅ~(怒)!」


 快眠の邪魔をされたべりんは、目をバッテンにしながら尻尾をふりふりと振り回してリリス達を追い払おうとします。


 しかし、リリス達は巧みにべりんの尻尾を避けながらキキキッと意地悪く笑っています。


 するとべりんはほっぺをぷうっと膨らませ、ネコ耳を立てて可愛く猛抗議! リリス達は、そんなべりんの頭の周りをスキップして飛びながら大喜び!


 しかしその時、べりんはニッと笑います。えくぼが浮かぶ、可愛い笑顔です。



……ぷちゅ!



 何と、スキップして大喜びしていたリリス達の1匹の背中にべりんの尻尾の先の狙い澄ました一撃!


しゅキ( スキ )有り、でしゅ。……苗床!( ナーしゅリー )


「キキ!!!」


 尻尾が刺さったままポテッと落ちたリリスは、そのまま苗床にされて栄養を吸い取られて……


 そのまま、幼体へと逆戻りしてしまったんです!


「キ、キ……キ」


 ヨチヨチと仲間の許へと歩み寄った1匹を小脇に抱え、リリス達はフラフラフラ……と退散して行ったのでした。



















 しばらくするとまた、モンピンチョウの甘いイイ匂いが……リリスがいなくなり、また蝶々達が集まって来たんです。


「ぱーぱ、べりんも受粉のお手伝いしてくりゅね~!」


 先ほどのおしべのベッドに寝ていた時についた花粉を身体いっぱいに纏ったまま、べりんはベレンに手を振ってストロー片手にトロピカルな花の蜜ジュースを飲みにめしべの所に行ったのでした。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ