芸の道はイバラ道
いきなり、芸人の代役を買って出たメグミ。
俺とツムギは唖然とする。
「……は?????」
と、ツムギ。
「ちょっ……ちょっと失礼!」
俺はメグミの手を取りカウンターから離れる。ツムギもメグミの背中をぐいぐいと押している。
「いきなり何を言うんですか!メグミさん!」
「そうだぞ!宿の人は本気で困ってるのに……。いい加減な事を言うんじゃないよ。」
「お世話になった宿の人が困ってる。だったら、私たちが助けなきゃ。」
「助けられるならな。でも、メグミは何か見せられる芸を持ってるのか?」
「ううん。ない。」
「ダメじゃないですか!」
「それは……今から考えよう。」
「無理だ。時間がない。断ってくる。」
俺はそう言ってカウンターへ向き直る。
メグミが、後ろから俺とツムギの手を取って言った。
「……二人とも、大事なことを忘れてない?」
「大事なこと?」
ツムギが言った。
「カヒト、残りのお金って、いくらある?」
「ん?まあ、5000弱ってところだな。」
「私は1万ゴールド位。」
メグミが言う。まあ、俺と似たような懐具合だ。ツムギの装備に支払った金額が多い分、俺の残金の方が少ない。
「……お金はまあ、必要ですね……。」
と、ツムギ。
「それでも今すぐ稼ぐ必要はないだろう。スラ子のおかげで、食べるだけなら金はかからない。」
「でも、こんなに食べ物の美味しい街にいて、それが食べられないなんて……。」
「まだ少しは大丈夫だろう。この宿には泊まれないけど。」
正確に言うと、あと1泊は出来る。それで使い切る感じだが。
「それだよ!もう、この宿に泊まれるお金はない。でも、お礼してくれるって言うんだよ?」
「……つまり、お礼に何泊かさせてもらおうって事か?」
「それは……私からは言わないけどね。でも、向こうが是非って事なら……。」
「人助けはどうしたんですか。」
ツムギがジト目になって言う。
「お礼が目当てなのは良いとしても、できる芸が無いなら話にならない。絵に描いた餅ですらないだろ。」
「マスター。芸というのは、人の目を楽しませる事でしょうか?」
スラ子が聞いてきた。
「……そうだな。見て楽しくなったり、驚いたりする事だ。」
「それでしたら、マスターの得意分野ではないでしょうか?」
「……俺の?」
「はい。私はマスターと出会ってから、毎日が驚きの連続です。マスターの発想力なら、人を楽しませることなど簡単でしょう。」
「うんうん!カヒトは凄いよね!スラ子ちゃんも、芸のお手伝いしてくれるよね?」
「もちろんです!マスターの手となり足となって、見る者を楽しませましょう。」
「いや、ちょっと待てって……。」
なんだか妙な雲行きになってきた。
「……私も、手伝えると思う。」
ツムギまでそんなことを言う。
「うん!ツムギちゃんも、頑張ろう!」
「私の装備にお金を使ってもらったんだから、私が頑張らないと!」
「そうじゃなくて、無理だろって話で……。」
「私、言ってくる!」
メグミは、俺が止める間もなく宿のカウンター係の所へ行ってしまった。
「お客さん!お願いできますかっ!支配人!この方たちが今夜の演芸大会に出演してくれるとっ!」
「おおっ、これはありがたい!これで私たちの面子が保てますぅっ!」
支配人と呼ばれた、丸々と太った男が俺の手を取って言う。
「いや、あの……。」
「何か必要な事がありましたらウチの者を使ってください。私は早速町長の所へ行ってきますので!」
支配人はそう言ってバタバタと出て行った。
「お客様。まずは昼食をご用意致します。そのあとはお部屋の方でご準備を……。もちろんお代は結構ですので。」
カウンター係は、俺たちを今朝まで泊まっていた部屋へ押し込んだ。
バタン!
部屋のドアが閉まる。
俺はメグミとツムギを睨む。
「……。」
「……カヒト、怒らないで……?」
と、メグミ。
「……そう。まるで、罠にハメたみたいだけど……カヒトさんの意見をまるっきり無視してたけど……怒らないで。」
ツムギも言う。
「……。」
ジロッ……。
「こ、こうなったらやるしかないよ!ねっ?頑張ろう!」
「うん!私、何でもするから!」
二人が言う。
「……今、何でもするって言ったな?」
「え?う、うん……。」
「じゃあ、二人とも……脱げ!」




