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カヒトの装備 ツムギの装備

 ブロートコーブで、道中出会った商隊と再会した所、ザンギエフも現れた。


「それで、お前たちは今日到着したのか?」

 ザンギエフがクレイに尋ねる。

「今日というか、今着いたところだ。」

「そうすると、俺たちの方が丸1日早かったわけだ。」

 と、ザンギエフ。

「ここの北の、危険地帯を抜けてきたんだ。迂回(うかい)しなかった分、こっちのほうが早く着いたんだろう。」

 俺が言う。

「なんだ、危険地帯って?」

 ザンギエフが言った。


 俺は昨日ギルドマスターのマリーに聞いた話をした。

「ほう。立ち入り禁止だったのか。道理でな。」

「禁止ではないだろうけど。」

「危険地帯の事は知っている。だから、ザンギエフに行くなと言ったのに。」

 クレイが言った。

「済んだことだ。」

「クレイ達の商隊は、この街が目的?」

 俺は聞いた。

「ああ、バクバクの街は食料をほとんど生産してないからな。ここで買い付けるんだ。」

「代わりに何か売るのか?」

「もちろん。武器防具に鉄製品だな。」

「なるほど。」

「そうだ。君らは冒険者だろう。もし何か必要なものがあったら安く売るぞ。ザンギエフが世話になった礼だ。」

「何で俺が世話になった礼をお前たちがするのだ。」

 と、ザンギエフが言う。

 ザンギエフはクレイの商隊に臨時(りんじ)で入っていたようだが、クレイにとってはパーティーの一員という事なんだろう。

「ありがたい。見せてもらえるか?」


 本当はバクバクの街で装備を買うべきだったのだが、すっかり忘れていた。

 ルイにも冒険者らしい格好じゃないと言われたし、今さらだが体裁(ていさい)を整えたい。


 クレイの商隊の運んできた商品は、当然だがすべて鉄製品だ。

 剣やナイフはもちろん、防具は兜から(すね)当てまで一式そろっている。

 武器に関しては、俺は使えもしない剣を買ってもしょうがない。防具を試着させてもらう。


 鎧はブレストアーマーというやつだろう。胸と肩を覆う形。

 着てみるが、メグミとツムギが微妙な顔をする。自分でも全く似合っていないのが分かる。

 俺の全身を覆っているスラ子もざわざわとうごめいている。


「スラ子。どうだ?これ。」

 スラ子に小声で聞いた。

「……僭越(せんえつ)ながら、マスターには似合っていないかと。」

「だよな。」

「……そもそも、鉄の鎧が必要でしたら、一言、私に命じていただければいいのです。『鉄鎧になれ』と。」

「……スラ子。怒ってる?」

「そういう訳では……。ただ、その無機質な鉄の塊に、果たしてマスターのお体を守る事ができるのかと危惧(きぐ)しているのです。」

「……」

「マスターをお守りするのは冬の寒さを寄せ付けず、強靭にして柔軟。パワーアシストの能力を持ち、時に色を変えて迷彩を施せるような、そんな万能なる素材であるべきかと。」

「……そんな万能素材……あるのかなー(棒)。」

「それが……あるのです!マスターにお仕えし、その御身(おんみ)を守ることにすべてをささげる存在が!」

「うん。もちろん分かってる。俺もスラ子以外のものを身に着けるつもりはないよ。」

 というわけで、防具類も俺には必要ないようだ。

 スラ子の機嫌(きげん)を損ねてまで買うべきものではない。


 メグミは皮鎧を持っている。鉄の防具は重すぎるので要らないそうだ。剣も新しくするつもりはないらしい。


「そうすると、ツムギの装備を整えるのが良いな。」

「私?その……ありがとうございます。」

 ツムギはごく普通の布の服とフード付きの短いマントを着ている。

 出会った時は服は穴が開いてボロボロだったが、スラ子が糸や布になり、穴をふさぎ(つくろ)ってくれた。汚れもすっかり落ちているので普通の町娘の格好と言える。

 しかし、防具らしい防具は無いのが気になっていた。


 鎧はサイズが合わない。さすがに子供向けのものは無いらしい。

 そこで手甲と脛当てを装備させてもらう。それらも見た感じ大きすぎると思うが、本人は気に入ったようだ。重さも気にならないらしい。


「ツムギ。これはどうだ。」

 ザンギエフがそう言って馬車の荷台を(あさ)っている。

 よろよろしながら持ってきたのはハンマーだ。それも相当でかい。

「ウォーハンマーだな。これは大男が使うような武器だぞ。この小さいお嬢ちゃんには無理だろう。」

 クレイが言う。

「クレイさん。持たせていただいてもいいですか?」

 ツムギが言った。

「構わないが、怪我しないようにな。」


 ツムギはウォーハンマーをザンギエフから受け取り、両手で構える。

 軽々、とはいかないようだが、なかなか(さま)になっている。

「少し重いですけど、何とかなるかもしれません。」

 ツムギがハンマーを軽く素振りしながら言う。

 クレイたち商隊のメンバーは目を丸くしている。


「気に入ったか、ツムギ。俺が買ってやろう。」

 と、ザンギエフが言いだした。

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