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メグミの食欲バクハツ

 ブロートコーブの街を歩くと、食べ物のお店がとにかく目立つ。

 食堂はもちろんの事、食材を扱う店もその種類ごとに細分化されている。

 お菓子を売っている店も多く、いたるところから甘いにおいが漂ってきた。


 メグミはそんなにおいに(あらが)いきれず、行く先々で何かこまごまと買っている。

「メグミ、さすがに買いすぎだろ。」

 俺は見かねて言った。

 メグミが自分のお金で買っているものに文句を言うのもアレだが。

「い、今食べるわけじゃないから。あとで食べる用に。ね?」

「まあ、ほどほどにな。」


 その日は街を巡って一日が終わった。

 俺たちは冒険者ギルドの近くまで戻り、宿をとる。

『木漏れ日亭』という宿には3人部屋というのはなく、4人部屋にした。


 宿代もかなり割高だ。

 もっと安い宿もあるはずだが、メグミはどうしてもここが良いらしい。

「ここの食事は凄いんだって。それに、宿泊しないと食べられないの。今日だけでいいから。」

 という事らしい。


 メグミの食欲が爆発している。

 少し心配ではあるがお金には余裕があるし、大丈夫だろうと思い、特に反対はしない。

 食事は夕食と朝食が付く。しかも部屋まで食事を運んできてくれる。

 それを思えばそんなに高くないのか?……いや、そんなことはないか。


 と言っても宿の夕食は本当においしかった。品数が多く、そのどれもが手間がかかっている。

 確かにこれは一度は食べておく価値がある。


 メグミは夕食の後も昼間に買っていたお菓子をつまんでいる。

 ツムギも甘いものを楽しみにしていたはずだ。しかし、メグミの食欲を目の当たりにして少し冷静になったのか、やや引き気味だ。

「メグミさ……お姉ちゃん。ちょっと食べすぎだよ。」

「う、うん。もう食べないから。ほらっ。しまっておくから。」

 メグミはそう言って、食べているお菓子をバックパックに仕舞う。しかし目がずっとバックパックから離れない。

「どうしよう、カヒトさん。メグミさんが……。」

「うーん。まあ、一時的なものだろう。この街にいる間だけだから。」

「ゴ、ゴメンね、二人とも。もう寝ようか。」


 お休みの挨拶をしてベッドに入る。

「うーん……。食べすぎた……。」

 メグミのつぶやきを(かす)かに聞きながら眠りについた。


 ー15日目ー


 次の日、朝食を食べて宿を出る。

 連泊する予定は無いが、宿で荷物を預かってくれるというので手ぶらで街へ出た。

 荷物と言ってもメグミの私物と、俺の持っている魔法薬くらいなものだけだが。


 この街は魅力的で、長居してしまいそうだ。しかしその間何も働かないわけにはいかない。

 冒険者ギルドのクエストが無い場合はどうやって稼げばいいのだろうか。

「そうだねー。モンスターを狩って、素材を売るとかはできるね。クエストとは関係なく、買い取ってくれると思うよ。」

 メグミが言う。

「なるほど。ただ、街の周りには危ないモンスターはいないらしいからなぁ。」

「遠出する事になるね……。」

 と、ツムギ。

「行列のできる食堂とか、人手がいるんじゃないかな。働かせてもらえないかな。」

「どうだか。」

「ほらっあのお店とか。聞いてみようか。ついでにお昼たべない?」

「メグミ。いくらなんでもまだだろう。」


 話しながら歩いていると、後ろからガラガラギシギシと、賑やかな音が聞こえてきた。

 振り返ると馬車が通っている。

 馬車自体はこの街では盛んに行き来している。珍しくない。

 しかしその馬車は見覚えがある。バクバクを出発した日の夕方に会った商隊だ。

 ザンギエフともその時に初めて会ったのだ。


 商隊のメンバーも俺たち、というかメグミにすぐに気が付いたらしい。声をかけられる。

「やあ、また会ったな。……あれ?なんで先に到着してるんだ?」

 商隊のリーダーが言う。

 俺が返事をしようとした時、横から

「クレイか。やっと来たのか。」

 そちらを向くと、ザンギエフだ。

「ザンギエフ!無事だったか!」

 クレイと呼ばれた商隊のリーダーがザンギエフを見て言う。

「ふんっ。俺の無事などどうでもよかろう。」

「そんな訳ないだろう。いきなり道を外れて行くから、心配したんだぞ。」

「あの後、彼らと合流したのだ。……まあ、確かに俺だけだったら危なかったかもな。」

 ザンギエフが俺たちの方を見て言う。

「よくわからんが……君たちがザンギエフを助けてくれたのか。ありがとう。」

「いや、俺たちこそ、ザンギエフに助けてもらったが。」

「ふーん……。なんにしても無事でよかった。俺はクレイという者だ。よろしく。」

「よろしく、俺はカヒトだ。こっちはメグミとツムギ。」

「こんにちは。」

「……こんにちは。」

 メグミとツムギが挨拶を返す。

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